見出し画像

ラン/森絵都


森絵都さんの物語は学生時代によく読んでいた。たしか「カラフル」が私にとって初めての森絵都さんの作品だった。

物語は大体のあらすじしか覚えていないけれども、感想だけは今も覚えている。もっと早くこの本に出合っていれば...中学時代に出会いたかったと。

「ラン」も学生時代に読んだ後ずっと自宅の本棚にあったのを、久々に手に取ってみた。再読すると学生時代とはまた違う感覚になった。

画像1

昔から死に対して不安があった私にとって、死後の世界がこんな感じだったらいいなと思えた。溶けてなくなってしまう。見守る側はつらいけれども、溶けていく側は色んなものがなくなっていき、死への恐怖さえも溶けてしまうのであれば、死後の世界も悪くない。西の魔女が死んだを読んだ時と同じような感覚でした。

溶けていく家族を見守る環ちゃん。思い出は美化されるというけれども、美化をしないありのままの家族が好きだったことに気づく。小さな喧嘩や親からの小言、しつけ。嫌なことはたくさんあったけれども、そのままの家族が好きだったと。ありきたりな言葉だけれども、身近にあると気が付けない日常の大切さが身に染みた。

死後の世界も悪くないけど、生の世界もこんなにも煌めいている。

物語が進むにつれて環ちゃんが生きることへの活力を見出していく姿、不器用で、素直じゃなくて、仲間とぶつかって。すべてが嫌になって。生きることに執着のない環ちゃんの人間らしさを愛おしく感じる。

環ちゃん以外の登場人物もみんな等身大で、ちょっとひねくれてて、人間臭くて愛おしい。表面上でうまく「こなす」或いは「流す」ことに慣れ、自分を殺すことも板についてしまった自分にちょっぴりと勇気をくれるそんな作品でした。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?