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FAX受信係

Twitterのトレンドに上がっていたので思い出した仕事。

“便器を100個描いた”写植屋で働いていた頃、FAXは「まだ現役」どころか、わりと画期的なマシン扱いでした。

原稿や修正指示が取りにいかなくても届くので、効率化の花形的存在。

ただし、その職場にあったFAXは後続機のような一体型ではなくて、黒電話に接続する四角っぽい機械機械した機械で自動受信はしてくれません。手動です。

かかってくると普通に受話器を取って、独特のピーーーヒョロロロロ〜ピーという音が鳴っている間の、然るべきタイミングでボタンを押すと受信が始まります。

ちょっと面倒くさいだけでなんということもなかったのですが、これがどうもおじさんたちには苦手な人が多かったようで、一番若手の(入った時はまだ専門学校生)私が受信係に任命されました。

電話が鳴ると近くにいても誰も取ってくれず、皆私の顔を見るので、次の若手が入るまで、どんなに忙しくても仕事の手を止めてボタンを押し続けることに。なんだかなーと思いながらも、失敗する人もいる(!)ので担当していました。

念のためおじさんたちの名誉のために言うと、彼らはほとんどが写植のオペレーター。もっとすごい機械を扱っていたので、機械音痴というわけでもなかったんですが、私が唯一、100%FAX受信を成功させる人だったのでした。

因みにFAXでもらった原稿や指示で仕事は進められるし、できたものもFAXで送れるのですが、「FAXだけでは失礼」という理由でそのあと営業の人が原紙を取りに行ったり届けたりしていました。

わざわざ行かなくてもいいんじゃないですか?と言ったのですが、いやそういうわけにはいかん…と、いかにも日本的な謎ルールでした。

昔の話なのに、なんだか今に通じるものがあるような。

あんなに画期的だったものもすっかり前時代の遺物扱い(まだ使っているところは多いけど)。そう考えるといま画期的なものもすぐに古いものになっていくんですよね。

私がそこに入社したのも、ひとまず版下(そこでの仕事)を覚えておけば一生食いっぱぐれない(←私はこの言葉にめっぽう弱い)と言われたからなんですが、今となっては説明してもよくわかってもらえない幻の仕事になってしまいました。

いまだに常にスキルアップや新しいことを模索したりチャレンジしているのはこういう経験が影響しているのかも。今の自分のスキルがこの先も通用するとは限らない。

FAXを受信するにもコツがいる頃があった、というお話でした。

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藤原ユカ| L'escargot Design
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