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最新トレンドは『晩学』の教え

「学ばない国、ニッポン」

2022年に興味深い調査結果が発表された、それが「グローバル就業実態・成長意識調査」である.

内容は、日本を含め、中国やアメリカ、ヨーロッパなど先進国含み、東安アジアなどの発展途上国も含めた成人対象の調査である.

ここでは就業時間や労働環境の意識調査が行われるのが、その中で注目なのが学習意欲の調査だ.

調査は*10項目に分けて行われているのだが、その内の8項目でワースト3位にランクアップしている.残りの2つの内、一つは「資格取得に向けて何か取り組んでいること」という名目でワースト5位をとっている.

もう一方はトップをとっており、1位の座に輝いている.その名目は「特に何も行っていない」である.なんとも恥ずかしい話である.

*・読書をしている割合
 ・研修・セミナー、勉強会等へ参加している割合
 ・資格取得のための学習をしている割合
 ・通信教育、eラーニングをしている割合
 ・語学学習をしている割合
 ・副業・兼業をしている割合
 ・NPOやボランティア等の社会活動へ参加している割合
 ・勉強会等の主催・運営をしている割合
 ・大学・大学院・専門学校へ通っている割合
 ・特に何も行っていない

*各調査項目抜粋

読書項目に注目すると、

日本→23.2%

となっている.これは中国の27.5%よりも低く、韓国の39.1%よりも15ポイント以上低い.

日本人が謙虚で2ヶ月に一冊の読書をカウントしていない可能性も考えられるが、世界規模で最低評価を喰らっている以上、看過することはできない最重要課題だ.

どうしてここまで日本人は学ばなくなってしまったのか.

かの徳川家が将軍として君臨していた江戸時代では子供も大人も区別なく学習はしていた.江戸時代に寺子屋の庶民化が進むと学習の水準は大きく飛躍していたが大人たちも同時に勉強はしていた.

商人であれば算術を学び、江戸時代には「塵劫記」と呼ばれる算術書が大流行し、本に載せられていない答えのない問題は人々を算術の沼にハマらせていった.結果、答えを解いて回答した自分の書籍を発表すると、次にまた問題を出していくという遺題を継承していく「遺題継承」が大流行した.

人々は学習に対し抵抗を感じていたどころか、楽しさまで感じていた.これが教育の“エドカルチャー“だった.

↓江戸教育を見つめた単作

では江戸時代で勉強していた魂は現代に消滅してしまったのだろうか、

多くの人は「忙しいからだ!」というかもしれない.しかし本当だろうか.

同調査表に掲載されている労働時間に関する調査では週5日、8時間程度の労働割合は世界同水準であり、日本が特別働いているわけでもない.

その他に、「日本の有給日数が少ない!」と反論してくる人もいるが、世界の祝日表を見てほしい

5月にしっかりと三連休があり、毎月祝日がある国は少ない.ちゃんと休んでいる.

ということは、やはり勉強していない国とレッテルを貼られても反論できない.

ではなぜなのだろうか.

その原因の一つに教育の民主化、庶民化が挙げられる.

日本は江戸時代の大政奉還を経て、時代は明治維新に入る.ここでは西洋文化が日本文化と融合し、和洋の世界が始まる.同時に国の統一化が始まり、寺子屋のような学習の差が生まれる文化から現代の座学スタイルに変化した.

寺子屋の風景を描いた絵があるが、皆が自由で本当に楽しそうである.(『寺子屋から見る教育の姿』written by LeoSugimoto参照)

教育の水準が一律になり、学習レベルが同化してくると教養レベルは中値が大きくなっていく.

さらに、大学入試という門を設けている日本スタイルでは大学に入るまでの勉強が忙しく、入った後は「人生の夏休み」と揶揄される.

つまり高校受験、大学受験までが勉強期間であり、その後は応用だけということだ.

春秋時代の思想家、孔子の言葉に「孔子晩而喜易読易韋編三絶」という言葉がある.これは本を読みすぎて綴じていた紐が千切れてしまった状態を指しているが、「内容を貪るように読め」という暗喩的な意も含まれている.

孔子は「晩学」という概念で有名だが、これは晩年まで本を読み続け学びに明け暮れていたからである.そして知識は自分の世界を広げる方法として重宝していた人物だった.

今、日本政府が1兆円規模の予算を組んで労働者のリスキリング強化を強めようとしているが、常に世界情勢が大きく変わり、昨日の今日は新世界の時代である.学習しない者は次々と時代孤児として置いていかれる.

例えば、半導体やAIのトピックはビジネス界では当たり前のように議論される特大トピックの一つだ.炊飯器の制御にはマイコン(半導体)が用いられ、ECサイトで出てくる「オススメ」はAIによって最適化されている.だが、学校でこれらを学ぶことは少ないだろうし、AI分野は深く、ネオコグニトロンといった概念がAI研究に大きな影響を及ぼしているが、注目されることはない.

そして、日本の労働者保護カルチャーは強く、簡単にレイオフすることは許されない.なので、会社には時代孤児の疎開場所(窓際部署)が作られ、会社としても労働者としても意欲の湧かない重たい空気が張り詰めているのである.

現実に、日本の「管理職希望者割合」と「仕事に対する幸福度」では共にワーストを記録している.

ここまで労働者個人にやる気がない社会が不景気脱出を唱えようとも無理なはずである.

ここは少し孔子の晩学を習って一週間に1冊、来週は2冊とやっていくべきではないだろうか.

よく人は「忙しい」と言うが、実際には1日に2時間程度は平均して無駄な行動をしていると言われている.電車移動中のスマホゲーム、一般人の踊っている動画鑑賞、スマホが身近にありすぎることで距離感を掴めなくなっているが、客観的に考えると思っている以上に無駄にしていることが感じられるのではないだろうか.

勿論僕は無駄も重要だと思っている.無駄があることで、時間に余裕が生まれ、より高いパフォーマンスを発揮できることもある.

しかし、無駄の時間を少しでも読書に費やせる余裕もあるはずである.

自分の未来像を考えてみて浮かび上がらなかったら読書をしてみるのはどうだろうか、

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