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#STAY HOME の5日間

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浮いたり沈んだりした5日間のことばたち―G.W.2020 STAY HOME
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#詩

ぽつり、ぽとん

誰のために笑うの

ここには過去がありすぎる

誰のために笑うの
かなんて 答えたくない

自分がどんどん肥えて
自分じゃなくなってしまう

それならと

自分を埋葬するように
心のなかに穴を掘った

全部埋めてしまえるほどの
潔さは 持ち合わせていない

ぽつり ぽとん

ぽつり ぽとん

小さく空いた その穴の
ふちをなぞって

小鳥がなくのを 聞いている

好きと、呼べずに好きを

ノートの端に 落書きのように
書きなぐった文字が
また わたしのなかに生まれようとしている

人は何かから回復するときに
物語を必要とすると聞いた

没頭するための物語が必要だ と。

わたしには
回復すべき 問題点
それはすなわち 大なり小なりの
傷ついた過去
があったような気がするが

そんなものは 誰にでもあると
目隠しさせて、

すみっこに追いやった

わたしをもう少し 待っ

もっとみる

いつもなら
頬にあたる髪が
邪魔くさくて
まとめているのに

なぜかこの頃
顔のまわりに
髪がないと
不安になる

守られていたい

ちっとも大人なんかになれないのに
年月だけは過ぎていって
守られるだけでは
いられなくなった

長く伸ばした髪が
今わたしの鎧みたいなもので
当分切る予定もないから
せめて守られていよう

風の強い日は

風の強い日は
かなしいことが多くて

風の強い日は
わたしが透明になっていく

風の強い日は
通りすぎたはずの場所を

風の強い日は
何度も行ったり来たりだ

風の強い日は

風の強い日は

まぶたや くちびるをとじて
じっと待つだけ

何を信じるでもなく
じっと待つだけ

風の強い日は、