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雨の日に飴に敗れて
夫は人差し指を火傷し、私は利き手の親指を切った。
とんだ連休であった。
うちには1歳と4歳の子どもがいる。連休、雨予報が出ていたのでこの4歳児が室内でも楽しく過ごせるようにクッキーでも一緒に作ろうか、と検索などしていると「ステンドグラスクッキー」なるものが目に留まった。
「中をくり抜いたクッキーに砕いた飴を流し」作るものらしい。
というわけで、当日までに材料を揃えその日を向かえた。
さぁ、作ろかというときに娘が
「おかあさんとはいや。おとうさんとがいい」
などと言い出したので夫に任せラッキー残念な気持ちで気ままに夕食用の買い物に出ることにした。
途中、夫から
「飴がどうしても割れない。ハンマーでも無理なのでグミを買ってきて欲しい」
と不穏な連絡がきたのでグミを抱きかかえ急ぎで帰る羽目になった。
帰宅すると《30分生地を休ませる》時間らしく温かく迎えられた私はヒーロー然としてグミを与え
「連休の思い出写真を撮ったげるわ」
とクッキング組を1歳児と見守り激写した。
うちには伸ばし棒などないので昨晩、私が急ぎ飲み干したワインボトルでラップで挟んだ生地を伸ばしてもらう。
何らかのSDGsな気がする。
そんな流行りにも乗れたところで型が出来上がる。
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食べてみるとグミ部分がねっとり歯に絡みつき、食べにくいことこの上ない。
でもまぁいい休日だったね、と三時のおやつにみんなでクッキーをつまんでいると
「飴の方が透明度が高い気がする」
「明日は飴でやってみる」
「明日、午前中は割りやすそうな棒付きの平たい飴を探してくる」
と何かに火がついたらしい夫がスマホを操作しながら宣言をし、私と娘は曖昧に頷いた。
翌日、宣言通り朝からスーパーを回ったが目的のものを見つけられなかった夫は私が用意していた丸い飴を見つめ
「これをレンジで少しずつ溶かし薄く成形し
そして割る」
と計画を語った。
何が彼を駆り立てるのか。
そうして4歳児を従え2回目の挑戦が始まった。
生地をつくり寝かせるところで1歳児もお昼寝タイムになったので見守っているといつの間にか私も共に寝てしまい40分が経っていた。
ゴソゴソ布団を抜け出しキッチンの様子を見に行くと夫が一人黙々とクッキーの型抜きをしていた。
4歳児もソファーですやすや寝ていた。
「ごめん、寝てたわ」
と孤独な夫に近づくと型抜きされたクッキーの横にお弁当の紙カップに平たく溶かされた飴が鎮座していた。
やったんやな。
そういう気持ちでブツを眺めていると
「冷めたかどうか触ったら火傷した」
と型抜きの手を止め人差し指を見せてきた。
予想以上の熱さと粘度にやられたようだ。
水膨れした完全なる火傷をした指がそこにはあった。
冷やせば良いものを。
なぜ型抜きなどしているのか。
何が彼を駆り立てるのか。
と紙から飴を取り出してやろうかと手を出したその時、鋭い痛みが私の親指に走った。
見ると第一関節あたりがスッパリ切れている。
やられた。
飴の前に次々倒れる夫婦。
もし「バトルロワイヤル」や「悪の教典」の世界に転生して武器が必要なときはあなたに飴という選択肢があることをここでお伝えしておきたい。
溶かし熱々に、固め鋭利な形に、なんとでも利用できますよ。
もちろんそのまま糖分補給をしても良い。
このポテンシャル、存分に利用してほしい。
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結局、これは紙に飴がくっつき取れず既に少し焦げてる疑惑も出てきたので
「もう丸ままの飴を乗せよう」
という私の提案に夫も素直に頷いた。
普段ならこだわっていたところにポッと出の私の雑な提案など決して受け入れることはないのだが酷すぎる火傷に心が折れたのだろう。
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実食。
まず単純にクッキーの質がグンと上がっていた。しっとり美味しい。
そして飴部分は完全なる飴なので舐めるしか、舐め続けるしかなかった。
飴を砕いて入れるのは量の調整の為なんだな、ということを身をもって理解しクッキー作りはフィナーレを迎えた。
はずだった。
「平たい飴は探し続ける」
「次の週末はひとまずチョコチップクッキーを作ろうと思う」
夫が、そう宣言するまでは。
新たな趣味が出来たようでよかった。
とりあえず4歳児はもう飽きているであろうことと、チョコチップクッキーにはナッツも入れて欲しいことを伝えた。
夫は執念深いのでいつの日か美しいステンドグラスクッキーを完成させることだろう。
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