見出し画像

餃子と唐揚げ

前回『私はまたもや私が作ったドツボにハマった』と書いたがその理由がここでわかるかと思う。

 19歳の頃アプリで出会った男の子に騙され二丁目のゲイバーでバイトをしたことがあった。実はそれにとどまらず風俗までやらされるハメになったがその話はまた今度。
ところで、そのゲイバーだが某有名アニメのタイトルをもじった店名でそこで彼と出会った。その後劇的なストーリーを経てプロポーズされたりなんやかんやがあって5年同棲する事になるのだがその時の話をしようと思う。

 大阪に引っ越してからアパレルやら飲食店やらの仕事の後しばらく専業主夫をしていた時のことだ。当時彼は観光バスの会社を経営する傍ら二胡の先生もしていた。その上中国人の団体旅行者を引率する仕事もしてたためその業界の後輩も多かった。元来寂しがり屋の性格のため常日頃から人に囲まれている人で毎週末には後輩や生徒さん方を呼んではホームパーティーを開くのが習慣になっており、もちろん全て準備してもてなすのは私。みんなものすごい食べるし飲むので座る暇など無い。おまけに酔い潰れて雑魚寝をしだす人のいるので布団を敷いたり寝巻きを貸し出す始末。ふと私は寮母さんかしら?とか相撲部屋の女将はもっと大変なんだろうなとも思った。
その時によくリクエストをもらって作っていたのが餃子と唐揚げ。
唐揚げは大したことはないが餃子については中国人をもてなすということもあり皮から手作りするこだわりようだった。それが大変好評でパスポートを見せてくれ(本当に君は日本人なのか)、なんて言われる程だった。
だが、もうそれはそれは手間がかかり大変な労力を費やすことになる。
やはり一度“おいしい“という印象を持たれてしまうとどうしてもその印象を崩さない様にクオリティを下げられなくなる。お陰で自分の首を絞めることになるのだ。全く人間の業ってものが嫌になる。

 等々と主婦の愚痴のようになってしまうが人を呼んでいる当の本人はこんなことを私が考えているなんて知る由もない。おまけにうちに来たことがある人は皆来たことの無い知り合いなどに彼の目の前で褒めちぎるのだ。大人たちは人が喜ぶことをよく知っている。案の定彼は上機嫌になり調子に乗る。
そして回数や人数が増える。恐ろしいことに家に到着する1時間前に10人でいくから、などというのだ。もちろんうちは居酒屋ではない笑
そんな日々を繰り返していた。

 唐揚げのレシピは簡単だ。青森県民は誰でも知っている焼肉のタレ『源タレ』に一晩漬け込みそこに片栗粉を入れて揉み込んだ後自作でブレンドした粉をまぶして2度揚げする。
餃子は粉をふるってこねて寝かして伸ばして切って広げて笑
餡に関してはうちは豚挽肉に細切れをたたいたものとラードを混ぜて寝かした後に味付けをして、あらかじめ刻んでおいた野菜を包む直前に混ぜ合わせる。ちなみに野菜は白菜の時と長ネギの時がある。
とまあこのように工程をざっと文字に起こすだけでこれだけの長さになる。
餃子も唐揚げも焼いたり揚げたりすることは大して難しくない。
要はなんでも下準備が大事だということ。

人間関係にも同様のことが言えると思う。私は人に頼まれる前からその人が何を求めるているかを察知してやってしまう。するとどこまでできるか試されるのだ。ある程度できるな、と思われた後はできて当たり前。ここまで出来るんだからもっと出来るはずと期待されてしまう。期待されている、信頼されている証拠なのだが自分で自分の首を絞めているようにも思える。だが乗り越えて後から振り返ってみるとなんか自分すごいじゃん!思える日が来るのも確かだ。

女友達に愚痴るとそうやって男を甘やかすからいけないんだ、上げ膳据え膳頼まれもしないのにやってあげているからつけあがるんだよ、と言われる。
確かに一理あるのだが、その中には私のエゴも含まれているために手放しに彼を責めることができない。

 私はまだまだ人生という意味では下準備段階なので揉んだり揉まれたりして最期に“おいしい”と思える人生にしたい。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集