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大豆田とわ子と三人の元夫 6話 感想

前半の騒々しさから一転、衝撃的な展開となりました。

自分的にはとわ子の元夫たちに貰い事故のようにつきまとってくる三人の女たちにあまり興味は無く、一番の興味はかごめ(市川実日子)のことでした。
とわ子(松たか子)の一番目の夫のはっさく(松田龍平)が密かに想い続けていた女性がかごめだと、とわ子が知ったのが前回です。
かごめは恋はしないと決めている人で、自由そうに見えて不自由な生き方が淋しそうに見えました。

そんなかごめが突然、死んだのです。
とわ子の娘の唄ちゃん(豊嶋花)が病院の自動販売機の前に呆然と立ち尽くし、「温かいお茶が買いたいんだけど」と言います。
もうお金が入ってランプがついて、あとボタンを押すだけなのに押せない。そんな演出が心に響きました。
お父さんであるはっさくがボタンを押してあげ、お茶を貰って握った唄ちゃんの手が震えていました。

はっさくが唄ちゃんを抱き締めた後、病院の廊下を歩いていきます。
すると医師が看護師らしき人の後ろ姿に話しているのが聞こえます。
「午前1時17分死亡。直接死因は心筋梗塞」
はっさくはちらっと医師を見ますが、そのまま歩いて行きます。
視聴者はまさかとわ子が死んだの? と心配になったと思いますが、はっさくが歩いて行った先にとわ子がいたのです。
霊安室の前でかごめのヒモの取れたパーカーを抱えて。

恐らくほとんどの視聴者はかごめの死因は心筋梗塞だと思ったでしょう。

私はあれはミスリードだと思います。
とわ子が死んだの?と思わせるために医師のセリフがあったのであり、他の誰かの死について言ったのだと思います。

なぜそんなふうに思うのかと言うと、4話でかごめをとわ子が追いかけるシーンがありました。
ふたりとも全力で走ります。
かごめは振り切って逃げ、とわ子がハアハア息があがりながら角を曲がると、横断歩道を渡れずまごまごしているかごめがいます。
かごめは全く息があがっていません。
海でドッジボールをするシーンもありました。

かごめのそんな躍動感溢れるシーンをわざわざ入れたことと、心臓の病死が結びつかないのです。

病死でなければ自死か事故死で、どっちもありそうだなと思います。
事故死は不安定な精神状態の時、起こりやすいからです。

泣く暇もなくお葬式の慌ただしさを取り仕切ったとわ子が主を失ったかごめの部屋に行き、冷蔵庫の残り物で料理をしてかごめの描きあげた漫画原稿を潤んだ瞳で読み終え、応募封筒に入れたのをもう一回取り出して読みます。

過去のふたりのことを思い出すとわ子の哀しみと、哀しみだけではない心情が伝わりました。

かごめは漫画を描き終えたらりぼん編集部に持って行くと言っていました。
とわ子に最初の読者にしてあげるとも言いました。
じゃんけんのルールもわからず転職を繰り返したかごめが、この漫画で大きなマンションに住めると思う、と自信満々でエネルギーの全てを注ぎ込み書いたのです。

かごめが死ぬ前、とわ子にかごめから電話が入り、すぐ切れます。自分でかけてすぐ切るのは変な感じがします。

とわ子はその時、はっさくが密かに好きな人はかごめだったと知り、会社に行ってからもかごめに電話を折り返すことができません。
そして仕事のトラブルに巻き込まれるのです。

かごめは描き終えた漫画と、かかってこない電話とで、どんな気持ちになったのかはわかりません。
その間の時間にりぼん編集部に持って行き、絶望した可能性もあります。
とわ子に天才と言われ、かごめのテンションがすごくあがっていました。
自己評価の低いかごめが、今回の漫画執筆については自己評価を最大に高めていたのです。


4話でかごめが自分のことをとわ子に語るシーンがあります。
かごめ「(家のこと)いろいろ聞いた? 私のこととか親の、なんかそういうこととか」
とわ子「そうだねぇ」
かごめ「忘れてね! そのことで私のこと見てほしくないんだよね。そこをもって私を語られるのが嫌なんだよね。私はそれを越えるアイディンティティをつくってきたはずだし、あるから!」
とわ子「ありすぎるくらいね」
かごめ「私、また漫画描くことにしたよ」
とわ子に漫画を見せるのです。

かごめは1話で唄ちゃんと囲碁を打つシーンがあります。
はっさくも囲碁好きですね。
囲碁好きな人は気持ちを隠すのが上手いと前に感想に書きました。

かごめはとわ子を唯一無二の家族だと言いましたが、とわ子にさえ自分の全部を見せていないのです。
とても苦しい生き方だと思います。
とわ子はそんなかごめを包容力で許容しています。

はっさくはとわ子より先にかごめと知り合ったと言っていましたが、ふたりは囲碁を打ったことがあるんだと思います。
本の間に挟まった虫にはっさくが似ているとかごめが言うのも、囲碁の古い本に虫が挟まっていたのかもしれません。
「(あなたより)あの虫の方が元気か」とかごめに言われ、
「あの虫は意外と元気だね」とはっさくは返します。
あの虫、とふたりは言うのです。

人生最後に食べるのはコロッケとかごめは言い、はっさくにコロッケをおごってあげます。

はっさくの部屋にはすぐ手に届くところに囲碁盤があります。
はっさくはかごめならどんな手を打つだろう?と、かごめの癖の記憶を思い返しながら、一人でかごめと向き合って囲碁を打つのかもしれません。

白石は自分。黒石はかごめ(空想)。交互に打ち合って。

それも恋です♥

とても切ない恋。

とわ子はかごめが死んだ後から、かごめのことをもっと理解していくのかもしれません。

このドラマの脚本家、坂元裕二さんの「カルテット」でからあげにレモンをかけていいか聞く前にレモンをかけたら、不可逆で2度と元には戻れないと語るシーンがありました。

とわ子がこれからかごめのことを理解しても不可逆なので、生きていたかごめと向き合うことはできません。

このドラマは純文学的で、脚本家が明確に答えを提示していないことに関して、視聴者それぞれの感じ方や受けとめ方があって良いのだと思います。

かごめの描き終えた漫画を、とわ子は集文社のふりる新人まんがグランプリの宛名を書きポストに入れます。
かごめは4話でとわ子に漫画を見せて「言いたかないけど天才!」と言われた後、「書き上がったらりぼん編集部に持って行く」と言いましたが、とわ子はそうしませんでした。
それはもしかしたら、かごめが既にりぼん編集部に持って行ったことを知ったからかもしれませんね。

そんなふうに空白を想像できるドラマだと思います。

全て完結した一方通行のドラマより面白いです♥

とわ子の元夫たちにつきまとってきた三人の女たち。

今回で三人そろって退場ですね。

もしそうならセンスが良い脚本だと思います。😉

勝手にどんどん押しかけてきて相手に気持ちが無いとわかったら相手を悪者にする女たち。
一番信じられないのはホテルの従業員である自分の顔を覚えてくれなかったと、しんしん(岡田将生)に不満をぶつけてくる小谷翼(石橋菜津美)
リラックスを求めている客の立場で従業員に気を使って対応しなければいけないなんて、びっくりします。
清掃係の人と親しくなったら部屋を見られているだけに恥ずかしい気持ちになるので、距離を保つのは普通です。


しんしんがカッコ良くて好きになったから翼は不満を持つのであり、もし、しんしんがブサイクなおじさんで「君なんて名前? つばさちゃんて言うの? どこに住んでるの?年はいくつ? 彼氏いるの? 髪型変えた? 」なんて距離を縮めてきたら引くはずです。
従業員は客に対して仕事と割り切れば良いのです。

翼の話を聞いた残りの2人の女も客の男を酷い男と口をそろえて言い、しんしんは傷つきます。
女たちは自分の話を肯定してほしいから、必要以上に仲間意識を持って結束したんだと思います。

三人の元夫たちは彼女たちの言い分を聞いて、こんなだめな自分たちでも大豆田とわ子は文句を言わずに受けとめてくれたと思い知り、とわ子の精神性に近づこうと三人の女たちに向き合うのです。

けれど、さら(石橋静河)が名言を言います。
「もう遅いよ。どこを好きだったか教える時はもうその恋を片付けるって決めた時だよ」

色っぽいと言われたかたろう(東京03角田)は映画のワンシーンのようなセリフを言い合って女優の古木美玲(瀧内公美)と別れます。

小谷翼は浜名湖の温泉旅館を継ぐ、グリーン車乗って帰って社長になりますと嘘っぽい話をしんしんに告げ、
「一番いい笑顔で行ってらっしゃいって言ってください。私、無視するんで」
しんしんの笑顔を引き出した後、約束通り無視して行き過ぎ、くるりと振り返って笑顔で「行ってきます!」と去って行きます。
翼は最後にお手本のように、好きな相手に後悔の種をぶちこむやり方でさよならできました。
しんしんも心が柔らかく成長したと思います♥

どこを好きだったか教えて恋を片付けたはずのさら(石橋静河)ははっさくへの未練から、痛々しくて見ていられないほどの「私とつきあったら絶対楽しいと思うよ」と矢継ぎ早に自分を売り込みます。
さっきの翼のやり方とは真逆の正攻法で、死にものぐるいで自分を選んでもらおうとします。
「何年かして街ですれ違ったらあの子、俺のこと好きだったんだな。失敗したなって思うよ。できる? 悔しい顔」
はっさくが「できない」と答えれば、さわと付き合うことになります。
でも、はっさくは「できる」と答えます。

三人の女たちにあまり興味は無かったけれど、三者三様の別れのシーンは秀逸で心に残りました。

一年後、とわ子はオダギリジョー演じる男とラジオ体操で知り合いました🙂

彼はどんな役回りなんでしょうか?
かごめのことは語られるんでしょうか?

1話から5話も感想を書いています。

また来週も楽しみに見て感想を書きます。


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