役に立たない先端でもない「知」の効用ーー『哲学と宗教全史』を読んで
哲学や神学は、誤解を恐れずに言えば、今の社会でもっとも役に立たない学問だと思われている。明らかに実学ではないし、経済活動の知恵とは程遠い。そんな領域の「全史」を紹介する本書『哲学と宗教全史』は、「巨人の肩に乗る」という言葉が使われる、人間の知が積み上がってきた系譜を紹介する本とも言える。
ユニークなのが、著者が学者でも宗教家でもなく、出口治明さんであることだ。
立命館アジア太平洋大学学長の出口さんは、もともと実業の人だ。大学卒業後に日本生命に入社。同社のみならず生命保険業界