脂肪を落としに落とした半年間
23歳の頃、私は体重100キロもある巨体であった。
身長は158cm、BMIは40、超高度肥満体。
若いとはいえ、膝痛や運動時の高血圧など健康に障害があった。
小学校3年生ごろから太り始め、1年間に5キロのペースで体重が増加した。
朝からカツ丼を食べ、おやつにハンバーガーを3つ、主食はどんぶり飯。
毎日、毎日、高カロリーの食事を摂取。
小学生で妊娠線ができた。
中学、高校の制服は特注サイズ。
自然な成長曲線を、上回るハイスピードで、私の体重は増加した。
私の通った学校では、夏休み前に肥満児が呼び出され、
簡単な食事指導があった。
しかし休み明けには、1キロも痩せずに、ますます大きくなった私。
新学期が憂鬱でたまらなかった。
いつかは痩せよう、ダイエットしようと心に誓っていたが。
それを果たしたのは13年もあとになってからだ。
23歳、育つに育った百貫デブは一念発起しダイエットを始めた。
すると半年で32キロの減量を果たした。
半年後の検診で見事58キロになっていた。
医者も看護師もビビッていた。
私は嬉しかった。ダイエットの成功であるといえよう。
ただ、今振り返ると、当時の私の頭はおかしくなっていたんだと思う。
正直、再現性はないダイエット法だし、誰にもおススメしないが
ここに書き残してみようと思う。
私の減量を支えた3冊の本
1冊目は「あなたは永久に肥満から解放される」
私が一番最初に買ったダイエット本。
当時、コミック雑誌の広告に良く出ていた書籍である。
当時は1万円ほどして、小学5年生の私は何とか費用を捻出して密かに通販で購入した。
内容は主食を抜いて、野菜や果物、肉類を中心に摂るという食事制限法。
しかし11歳の私のご飯の用意をしていたのは、シングルの父親。
父親にダイエットを相談するのが恥ずかしく、また仕事に忙しい彼を見ていて、自分だけ特別メニューを出してもらうのは、気が引けて断念した。
衣食住を親に依存している状態では、食事や生活を変えることは無理だと思い、学生時代は結局ダイエットには取り組まなかった。
ただ、この本でダイエットには、炭水化物を制限すればいいんだなと、おぼろげに学ぶことができた。
私が本気でダイエットをしようと決めたのが23歳の時。
そのころのには社会人となり一人暮らしを始めていたので、誰にも制限されない生活をし始めることができていた。
私が決めたダイエット法の2箇条。
1.毎日1時間歩く。
2.食事は1日500カロリー内にする
(うち主食は白米80gを朝昼に食べてもいい、夕はおかずのみ)
というものにした。
この運動と食事で毎月5㎏は落ちた。膝痛と高血圧が解消した。
ダイエットを実践中に毎日読んできた本が2冊ある。
1冊目は「食品交換表」
高校時代に家政科の先生に頂いたものだ。
当時の年度版は忘れたが、内容はそんなに大きくは変わっていないだろう。
この本には日本のスーパーで売っているすべての食材のカロリーと栄養価(たんぱく、脂肪、炭水化物など)が詳しく載っている。
毎日、食品交換表をみていたので、当時は本の内容を暗記していた。
どの食材に脂質が多いのか、糖質が多いのかを覚え、献立を考えていた。
食事療法の基本はここにある。そんな本だ。
2冊目は当時のメンタルを支えてくれた本だ。
井上きみどりさんの「子供なんか大キライ!」
この漫画に井上さん自身が20キロ以上やせたダイエットのエピソードがあり
私はその回を何度も何度も読みふけった。
減量期間の半年は毎日毎日、いつでもどこでも、お腹が空いていた。
ただ、空腹を感じるのが辛いでなく、幸せだと思うようになっていた。
空腹≒痩せる≒ハッピー
このように頭の思考の回路を変換できていた。
空腹が幸せなら、そりゃ自然に痩せるというもの。
私は本を読み耽ることで、ダイエットに成功した井上さんになっていこうとしたのだと思う。
漫画の中の、井上さんの食への強い欲求が、自分のように響いたし、
辛い思いを乗り越えて、減量していくストーリーも自分にはまった。
私は空腹が幸福であると、書物を刷り込むくらい読んで、自分を洗脳したのだと思う。
洗脳ダイエット。もしくは憑依型ダイエット。
ダイエットするなら、基礎的な知識と、自分が真似できそうな成功モデルを見つけるので充分だと思う。
肝心なのは、過食の原因はひとそれぞれにあること。
私の過食症の原因は、小さい頃の環境不安によるものが大きい。
大人になり自立することで自分をコントロールしやすくなったことで
体重管理もできるようになったのだと思う。
BMI40以上ある肥満の方は、なにかしらの心理的なトラブルがあると思う。
自分を操縦不能にするくらいのストレスがかかっている。
食べることでストレスを忘れることがきるが、根本的な解消には至らない。
太っていることの罪悪感や、食べることへの罪悪感が上乗せされる。
罪悪感があると、無意識に自分を罰し続ける行為をやめられなくなる。
私はこの負のループを回り続け、食べ続けることで自分を罰していた気がする。
食べることは人として自然な行為で、人の体形は個性である。
食事を楽しむことは喜んでいいことである。
それを奪われると生きてるのが辛くなる。
自分のことを責めるな、そう伝えたい。