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月の光が揺らめく間だけ空を泳ぎたい゜。゜。💫
第一章 細胞分裂初期編 〜闇に向かうゴリラ〜
わたしはうお座の星に生まれた水クラゲだった。12年のときを水クラゲとして過ごした。水に浮かぶこと泳ぐことが好きで水泳教室に12歳まで通っていた。水クラゲだけに手足は長い子だった。無色透明で色を持たず捕食器官や生殖器官はあれど脳細胞などはなかった。プカプカと毎日浮かんでは沈んでを繰り返した。食事は好きでチマチマと食し好物を最後まで残すのが癖だった。雨の日は喜んで外に出た。四つ目の丸い傘に水がいっぱい降り注げばいきいきとした。丸い傘は月に似ている。水中に漂えば水面に映る月のようでそんな自分がすぎだった。好きとは好ましい心地いいそういう感情は持ち合わせている、ただそれだけ。そんなだからか地上では常に浮いており、しかしそれすら気が付かない。しばらくして成長期にはいり突如として陸の生き物に変化した。あまりに突然の自身の変化に着いていけない。毛むくじゃらのゴリラになったのである。四本脚でしっかり歩き体力もつき、思うがまま陸地を走ることが可能であった。走ることが課せられた使命なのであった。水クラゲだったときにはなかった本能が芽生えていた。思うがままに自分はこの大地を駆け巡れるだろうという希望や期待も漠然と抱いていたように思う。が、ゴリラという習性だけでどうしたら上手く、はやく、いかに希望を叶えられるかという知恵はゴリラには無かった。本能だけでひた走るのである。水クラゲのときの名残か水浴びが好きで、そして自然と引き寄せられるようにクラゲの輪の中に馴染んでゆくゴリラ。学生のうちのゴリラは森にバナナばかりとりに行きまともに学校にいかなかった。はたまた水クラゲの親友と水浴びに興じてはバナナの皮をそのへんに落として滑るマリオやルイージ、ピノキオをみて楽しんだ。夜になれば月明かりの下木登りをしたり、木の樽から樽まで爆速で飛んではバナナを拾ったり洞窟で鉱石を探しにコースターに乗ったり本能の赴くままに遊んだ。夜深くになればぐっすりとなんの迷いもなく眠りに落ちる。ゴリラの知能は限りなくゼロだったが豊かであった。身も心も豊かであったのだ。そんなゴリラは初めて異性を意識しはじめた。友達ゴリラに誘発されただけだったかもしれない。そこに意思など無かったかもしれない。四足歩行の狐だった。ゴリラにしたらその狐は頭が少しだけ良く感じられた。そして少し馬鹿にされてるとも感じた。お互いの行動が理解出来なかった。違う生き物だから。でもゴリラは狐の目が好きという理由だけで惹かれたのでした。狐がなぜゴリラに好意を寄せたかは分からないまま、そういうことには全く疎く、疎いがゆえ駆け引きもなくごく些細な始まりはごく些細な事で簡単に終わりを迎える。狐は異性ならどの動物でも良かったのではとも思った。もしくはたまたまちょっと気があったのがわたしだった。だんだん卑屈になり闇に向かうゴリラ。狐が学生じゃなくなるときにゴリラと狐は距離を置くようになったが特に傷つかなかった。といえば強がりだ。狐との記憶の最後の夜は星1つなく今まで感じたことがない寂しい灰色の空に心のなかで希望の名を叫んでいた。ゴリラは悲しんだのだ。だから希望を呼んだ。投げられた憂えの叫び、それは遠く彼方の星に届いていたかもしれないなどと思う。それはまだ水クラゲの時からうまれ、その時から繋がっている光のようなもの、夜の水辺に浮かぶかつての自身と森の木から眺める月の光のようにそして遥か未来の私とあなたにもきっと繋がっている光だ。私達はおなじ夢を魅る事になるって予感。それを思うと刹那的で透明で綺麗な気持になれる。それは19歳の冬、心臓の細胞核の中心に深く刻まれたものだ。第二章に続く…