響け、希望のメロディ
「これが私たちのできること」と蓮は呟いたその言葉には、揺るぎない決意と希望が滲んでいる。
能登半島地震――その衝撃的なニュースが駆け巡った日、蓮の胸は締め付けられた。これまでステージで観客に希望を届けてきた自負があった彼女も、テレビに映る崩れた街並みや泣き崩れる人々を前に、無力感を抑えきれなかった。「私たちができることってなんだろう?」。蓮はずっと自分の中でそう問い続けていた。
その夜、蓮はバンドメンバーの葵と志保を呼び出した。カフェの片隅で、彼女は静かに切りだす。「私たちの使ってた道具や衣装を売って、その売上を寄付しない?」。葵は驚いたように目を丸くし、志保は考え込むようにコーヒーカップを見つめた後、小さく頷いた。「それ、いいかもね。私たちにできること、やってみようよ。」
こうして、彼女たちは「チャリティーフリーマーケット」を企画することに。ツアーで着用したステージ衣装、サイン入りのCD、メンバーが愛用の私物、あらゆるものを出品リストに加えた。
チャリティーフリーマーケット当日、会場は熱気に包まれていた。蓮たちはそれぞれブースを担当し、訪れるファン一人ひとりに感謝の言葉を伝えた。
リーダーである蓮のブースには長蛇の列ができており、過去に使用していたギターが展示されている。蓮はギターに触れながら、「今は使ってないギターだけどこうやって誰かのためになるんだな」と思った。
「これは売らないほうが…」と葵が心配そうに言ったが、蓮は首を振った。「できることは全部やろうって決めたんだ。」
フリーマーケットの終盤、ステージではミニライブが行われた。蓮がギターを手に取り、静かにステージ中央に立った。指先が弦を優しく弾き始めると、繊細なアルペジオが会場を包みこむ。息を呑むような静けさの中、蓮の歌声がゆっくりと響き始める。その声は柔らかくも芯があり、言葉一つひとつに深い感情が込められていた。
志保はドラムセットの前で目を閉じ、一拍ごとに丁寧にスティックを振り下ろす。バスドラムの響きは心臓の鼓動のように温かく、優しいスネアのリズムが蓮の歌声にそっと寄り添っていく。
葵のベースは低音を柔らかく奏で、まるで大地のように演奏全体をしっかりと支えていた。時折、ゆったりとしたフレーズを織り交ぜ、楽曲に深みを与えている。彼女の指が弦を滑るたびに、温かな余韻が会場全体に広がっていった。
歌詞には、痛みの中から立ち上がる強さと未来への願いが込められている。『どんな暗闇の中でも、きっと光は見つかるから』というフレーズが響くたび、観客の中には涙を拭う人の姿も見られた。彼女らの音楽が心に深く響いている証と言っていいだろう。
曲の終盤、蓮のギターソロが始まる。音の一つひとつが情感たっぷりに響き渡り、まるで被災地の人々や、大切なものを失ったすべての人々に語りかけるようだった。
「この音が、少しでも誰かの希望になりますように」と蓮。
志保のドラムが次第に静まり、最後に葵のベースの余韻だけが残る。
最後の一音が響き終わった瞬間、会場はしばし静寂に包まれた。しかし次の瞬間、誰からともなく拍手が湧き起こり、それは次第に大きな歓声となってステージを包み込んだ。
イベントは大成功を収め、集まった寄付金は想像を超える額に達した。蓮はファンやメンバー、スタッフに深く感謝を述べた。
「今回の企画を立ち上げて本当に良かった。チャリティって、ただ助けるだけじゃなく、心を繋ぐことなんだな。」
過去僕もスタッフをしていた、京都で23年続けて開催しているボロフェスタという音楽フェスがあるんですけど、そのボロフェスタが実際に出演アーティストさんのアイテムを音楽フェス内のチャリティイベントの景品に出して、その売上の一部を能登大地震の際に寄付したところから着想を得て今回のお話を書かせていただきました。
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次のバトンをどうかお受け取りください
青空ちくわさんの作品がたくさんの方々へ
届きますように🍀🕊️
✧₊⁎PJさんの企画に参加しています⁎⁺˳✧༚
PJさん、パラレルジャンクションさん
どうぞよろしくお願いいたします