#172 「エキソー事件」前橋地裁太田支部(再掲)
2007年2月7日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第172号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【エキソー(以下、E社)事件・前橋地裁太田支部判決】(2006年8月9日)
▽ <主な争点>
定年退職者再雇用の労使慣行の有無
1.事件の概要は?
本件は、E社の就業規則に定められた定年年齢に達した従業員Xが、(1)E社においては、定年に達した従業員が希望した場合には、再雇用するとの労使慣行があること、(2)E社がXの再雇用を拒否したことは、Xが労働組合(以下「本件組合」という)の組合員であることを嫌悪してされたものであることを理由に、労働契約上の地位確認および賃金の支払いをE社に対して求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<E社およびX等について>
★ E社は、昭和61年に一般貨物自動車運送業等を目的として設立された会社であり、M社の従業員がE社に転籍し、その従業員となった。
★ Xは一旦M社に入社した後退社し、58年にM社に再入社した。Xは61年、E社に転籍して、その従業員となり、高圧ガスのタンクローリーの運転業務に従事していた。なお、Xは本件組合の組合員であった。
★ E社の就業規則においては、従業員の定年につき、「定年年齢を満60歳とし、定年に達した誕生日の月末をもって退職するものとするが、定年に達した者のうち、E社が業務上の都合により特に必要と認めた者については、定年後嘱託として1年以内の期間を定めて再雇用することがある」旨の定めがある。
▼ Xは平成17年5月末日をもって就業規則に定められた定年となった。Xは雇用の継続を希望したが、E社はこれを拒否し、Xを退職扱いとした。
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<E社と本件組合との間の交渉経緯等について>
★ E社においては、当初は本件組合が唯一の労働組合であり、20名を超える組合員を擁していたが、平成6年から7年にかけて大量の脱退者があり、組合員が委員長であるA一人となったこともあった。
★ E社と本件組合との間においては、賞与額等についての交渉がもたれ、合意に達したこともあったが、そのような場合においても、労働協約等の形で成文化されたことはなかった。
▼ 厚生年金の支給年齢が繰り下げられるようになったことに関連して、12年以降、E社と本件組合は定年(60歳)の延長や定年退職後の再雇用の制度化を要求したが、E社の当時の代表者であったBは「現状では定年退職者の全員再雇用に関して声を掛けている」などと答えるにとどまった。
▼ 本件組合はこれを「定年退職者の再雇用の制度化について、E社も了解したもの」との理解のもとに合意内容を書面化するよう要求したが、結局E社は応じなかった。
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