#372 「なか卯事件」名古屋地裁半田支部(再掲)
2014年10月29日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第372号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【なか卯(以下、N社)事件・名古屋地裁半田支部判決】(2013年9月10日)
▽ <主な争点>
会社の業務と店舗内での脳幹出血死との関係など
1.事件の概要は?
本件は、N社の従業員であったXが同社の店舗内において脳幹出血により死亡したことについて、亡きXの父母ないし兄らが、同社がXに対する安全配慮義務を怠ったため、Xが過重な労働により脳幹出血を発症して死亡したなどと主張して、N社に対し、債務不履行ないし不法行為に基づき、損害賠償金等の支払いを求めたもの。
B(Xの母)およびC(Xの兄)は国(半田労働基準監督署長)に対し、遺族補償一時金または葬祭料を請求したが、国は各不支給決定をし、さらにBらは愛知労働者災害補償保険審査官に対し審査請求したが、同審査官は各審査請求をいずれも棄却した。
2.前提事実および事件の経過は?
<N社、XおよびAら3名について>
★ N社は、飲食店の経営等を目的とする会社である。
★ X(昭和58年生の男性)は、平成22年1月、N社との間で、「業務内容を丼、うどん類の製造、販売およびこれに付帯する業務、雇用期間を同年12月31日まで」等として雇用契約(以下「本件雇用契約」という)を締結した者である。
★ AおよびBはXの父母であり、CはXの兄である。
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<Xの死亡、労働者災害補償の不支給とこれに対する不服申立て等について>
▼ XはN社の甲店において、当初概ね夕方頃から翌午前2時頃までの時間帯に勤務していたが、22年2月下旬頃から月に10日前後、ナイトロング勤務(通常、午後10時から翌午前8時までの勤務)にも従事するようになった。
▼ Xは22年7月2日、甲店内において、脳幹出血により死亡した。
▼ BおよびCは国(処分行政庁・半田労働基準監督署長)に対し、遺族補償一時金または葬祭料を請求したが、国は24年8月、各不支給決定をした。
▼ BおよびCは上記各処分を不服として、愛知労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をしたが、同審査官は25年3月、各審査請求をいずれも棄却した。
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<労働安全衛生法等関係法令の定めについて>
★ 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない(労働安全衛生法66条、労働安全衛生規則43条本文)。
(1)既往歴および業務歴の調査 (2)自覚症状および他覚症状の有無の検査 (3)身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査 (4)胸部エックス線検査 (5)血圧の測定 (6)貧血検査 (7)肝機能検査 (8)血中脂質検査 (9)血糖検査 (10)尿検査 (11)心電図検査
★ 事業者は、深夜業を含む業務等に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際および6月以内ごとに1回、定期に上記の診断項目に喀痰検査を加えた診断項目について医師による健康診断を行わなければならない(労働安全衛生法66条、労働安全衛生規則13条、45条1項本文)。
3.Xの遺族Aらの主な言い分は?
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