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#623 「日本レストランシステム事件」東京地裁

2024年10月16日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第623号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【日本レストランシステム(以下、N社)事件・東京地裁判決】(2023年3月3日)

▽ <主な争点>
プレイングマネージャーの管理監督者性など

1.事件の概要は?

本件は、N社との間で労働契約を締結していたXが管理監督者に該当せず、時間外労働、深夜労働および休日労働を行ったとして、同社に対し、(1)労働契約に基づく割増賃金請求として、2018年9月から2020年7月分の計1182万0751円および遅延損害金、(2)労働基準法114条に基づく付加金請求として730万2680円および遅延損害金の各支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<N社およびXについて>

★ N社は、飲食店の経営や菓子類の製造販売等を目的とする会社である。同社の主要な業務内容は多業態型レストランチェーンの経営等であり、2020年2月現在、資本金は35億0565万円、正社員数1351名、アルバイト数9044名、直営店舗数626店舗、年間売上高は429億6200万円である。

★ Xは、2008年にN社との間で期間の定めのない雇用契約を締結し、2020年8月日まで勤務していた者である。なお、本件の未払残業代請求期間である2018年9月から2020年7月までの期間においては、「基本給18万円、職務手当19万円、役職手当5万円の合計42万円という月額賃金」で勤務していた。


<Xの入社以来の経歴・地位、退職に至った経緯等について>

▼ Xは2011年に新業態・新メニューの開発等を業務とする戦略本部の配属となり、2017年4月には同本部所属の課長B職に昇進した。

★ 戦略本部の長は実質的にはN社の会長であり、形式的には担当役員である常務であった。同常務は直属の上長として課長職であるXを指揮命令する立場にあった。なお、Xが人事考課等を行う対象となる社員はいなかった。

▼ Xは戦略本部において、黒毛和牛を用いたブランド「C」を担当していたところ、2011年頃同本部内にXが責任者を務める戦略営業部が立ち上げられ、同ブランドの全13店舗(当時)の運営を行うこととなった。

★ N社は多数のブランドを全国展開しているところ、そのブランドの1つが「C」である。

▼ Xは2016年頃までの期間は新たなビジネスモデルを構築するとともに、主に新業態・新メニューの開発を行う業務(以下「経営企画業務」という)に従事し、課長職となった2017年頃からは経営企画業務に加え、「C」の全店舗の業務シフト表を作成したり、社員・アルバイトを教育したり、開店作業、キッチン業務、ホール業務、開店作業等の実作業(以下「店舗業務」という)に多く従事するようになった。

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