#579 「三菱重工業事件」名古屋地裁(再掲)
2023年1月11日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第579号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【三菱重工業(以下、M社)事件・名古屋地裁判決】(2021年8月23日)
▽ <主な争点>
リハビリ勤務と就業規則所定の連続欠勤を理由とする解雇など
1.事件の概要は?
本件は、M社に雇用されていたXが、私傷病による連続欠勤日数が就業規則所定の日数を超えたことを理由としてM社が2018年5月23日付で行った解雇(本件解雇)が無効であると主張して、同社に対し、(1)雇用契約上の権利を有する地位の確認、(2)雇用契約に基づき、2018年8月20日から本判決確定の日まで毎月20日かぎり月額45万9800円およびこれらに対する遅延損害金の支払、(3)雇用契約に基づき、M社がXの私傷病休職からの再出勤を不可とした2017年3月28日から2018年7月分までの賃金および一時金合計966万4130円ならびに各月の賃金に対する遅延損害金の支払、(4)違法な再出勤の不許可および本件解雇によりXが精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づき慰謝料300万円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<M社およびXについて>
★ M社は、船舶および艦艇の建造、販売、修理等を目的とする会社である。
★ Xは、1991年4月、事務技術職群としてM社に入社し、ヘリコプターの開発などの専門的知識を要する業務に従事した者である。
<Xの私傷病欠勤の経過、本件解雇に至った経緯等について>
▼ Xは2006年4月、統括基幹職となった後、2007年3月に神経症性うつ病を理由として休職した。その後、比較的負荷の少ない業務に変更するとの条件で再出勤が認められたことにより、工務作業へと業務を変更した上で、同年5月に再出勤し、2008年4月には工務主任となったが、2014年8月から躁うつ病により欠勤を開始した。
▼ Xは2015年6月、同疾患に関する欠勤後にリハビリ勤務を経て、改めて再出勤が認められたものの、同年8月には同種の疾患により再度欠勤するに至った。
▼ Xは2016年12月、2018年1月の2度にわたりM社に再出勤を申し出たが、同社の産業医や保健師、人事労政担当部門長等で組織される再出勤審査会の審査により、M社として安全配慮義務を果たせないとして、Xの再出勤はいずれも不可と判断された。
▼ 2018年4月、M社はXに対し、2015年8月24日の欠勤開始日以降、欠勤日数が33ヵ月を経過する2018年5月23日付で解雇となる旨を通知し、同日をもって解雇した(以下「本件解雇」という)。
<M社の就業規則等(解雇、再出勤審査会)の定めについて>
★ M社の就業規則では、社員が業務によらない傷病(私傷病)のため、連続して欠勤した日数が33ヵ月を超えた場合(再出勤開始後6ヵ月未満で再び欠勤した場合は前後の欠勤期間を通算する)は解雇するとされている(以下、私傷病による連続欠勤で解雇となる期間を「在籍容赦期間」という)。
★ 就業規則細部取扱別紙では、所定要件に該当する私傷病欠勤者が再出勤を申し出た場合には、所定期間において短時間勤務等のリハビリ勤務を行った上で当該期間中の勤務状況等を踏まえ、再出勤の可否を決定することとされている。
★ M社の「長期休業者管理および再出勤審査実施要領」は、再出勤審査会を人事労政部主幹の諮問に応じ、精神健康不調による長期休業者について、医学的見地等から再出勤の可否について総合的に審査判定するものと定義し、各地区担当産業医を委員長、衛生管理課長、心理相談員、保健師、所属長、人事労政担当部門長、その他委員長が必要と認めた者を委員として構成するものとしている。
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