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#296 「京都下労働基準監督署長事件」大阪地裁(再掲)

2011年10月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第296号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【京都下労働基準監督署長(以下、K労基署長)事件・大阪地裁判決】(2010年6月23日)

▽ <主な争点>
同僚からのいじめと精神障害発症の業務起因性等

1.事件の概要は?

本件は、F社に勤務していたXが精神障害に罹患したところ、その発症が同僚等の職務に伴ういじめとそれに対する適切な措置が会社においてとられなかったという業務に起因するものであるとして、労働者災害補償保険法に基づいてK労基署長に対し、療養補償給付を請求したところ、同労基署長が同請求について不支給とする旨の処分をしたため、国に対し、同処分の取消しを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xについて>

★ X(昭和40年生)は、昭和62年4月、F社に入社し、主にパソコン操作の講師等を行う業務に従事していたところ、平成14年11月から休職し、17年6月には「休職期間満了により、解雇する」旨の辞令を受けている。なお、Xはおとなしく、周囲の者からまじめで責任感が強く、周りに配慮ができ、比較的明るい性格と思われていた。

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<Xの診療歴、本訴に先立つ不服申立て等について>

▼ Xは平成14年11月、体調不良となり、診察した医師から「自律神経失調症」との診断を受けた。

▼ Xは同年12月、精神科の専門医院を受診したところ、「不安障害、うつ状態」との診断を受け、その後通院して治療を継続している(同時期当時発症していたXの精神障害を以下「本件疾病」という)。

▼ Xは17年9月および11月、K労基署長に対し、本件疾病にかかる療養補償給付の請求をしたところ、同労基署長は18年5月、「本件疾病は業務に起因して発症したものとは認められない」旨の処分(以下「本件処分」という)を行った。

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