#92 「東日本電信電話事件」東京地裁
2005年6月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第92号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【東日本電信電話(以下、H社)事件・東京地裁判決】(2004年2月23日)
▽ <主な争点>
損害賠償等(会社がなした「D評価」には査定義務違反があるか)
1.事件の概要は?
本件は、H社から人事評価で「D評価」を受けた元従業員Xが、自分には「C評価」を受ける権利があり、H社には査定義務違反があると主張して、正当な査定評価をした場合との差額等の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<H社およびXについて>
★ H社は、地域電気通信事業等を含むこと等を業とする会社である。
★ XはH社に雇用され、平成11年7月から14年4月まで短時間制特別社員(注:勤務時間は10時00分~15時40分)の営業推進担当として、勤務していた。
★ Xはグループの構造改革のため、14年4月をもってH社を退職し、同年5月、NTTサービス東京(以下「N社」という)に採用され、15年3月、N社を定年退職した。なお、Xは定年後、N社に再雇用された。
--------------------------------------------------------------------------
<H社の人事評価制度>
★ 13年4月に導入されたH社の人事評価制度の概要は以下の通りであった。
(a)従業員を資格グループに分け、資格グループごとの等級格付けを行い、格付けられた社員資格基準に基づき、職務遂行行動および業績に着目して評価を行う。
(b)評価者は複数とし、一次、二次、調整者の三段階で評価調整を行うのを原則とする。
(c)総合評価は、行動評価と業績評価を総合し、「A」(期待し要求する程度を著しく上回る)、「B」(期待し要求する程度を上回る)、「C」(期待し要求する程度であった)、「D」(期待し要求する程度を下回る)の四段階に評価する。なお、業績評価がDのときは、行動評価にかかわらず、総合評価もDとする。
(d)業績の評価、能力開発等の参考とするため、担当業務にかかわる目標等を設定する。目標の設定は毎年度ごととし、その具体的内容は「チャレンジ・シート」に記載する。
--------------------------------------------------------------------------
<Xが「D評価」を受けた経緯等>
▼ Xは13年12月に支給された年末特別手当(以下「本件手当」という)において、業績評価で「D評価」を受け、その結果、定率部分のみの支給を受けた。
★ 本件手当の評価対象期間は、13年4月から同年9月(以下「13年度下期」という)であり、短時間制特別社員が業績評価で「C評価」とされた場合には、定率部分に約12万円が加算されて支給される。
▼ XがN社を定年退職した15年当時、N社からの退職金支給においては、月単位で、勤続要素、資格要素、成果要素を累積させることとされていた。「成果要素」は、A~Dの4区分で評価され、Xが位置づけられていた等級におけるD評価の累積額は0円、C評価の累積額は一年当たり5万2,800円とされていた。
★ 上記の「成果要素」において、XのN社における在籍期間のうち、14年5月~15年1月までの9ヵ月間について反映される、H社における13年度総合評価(対象期間:12年10月~13年9月)は「D評価」であった。
★ 仮に13年度総合評価が「C評価」であった場合には、XがN社から支給される15年退職の際の退職金には3万9,600円(5万2,800円の12分の9)が成果要素として、累積加算される。
★ 13年度下期業務評価および総合評価において、Xがデータの打ち出し作業等の比較的簡易な業務に意欲的に取り組んだことを考慮しても、「D評価」とされたのは、以下のような理由による。
(a)Xが「カスタム」(注:H社の顧客管理システム)の操作方法を覚えられなかったこと。そのため、Xに他の簡易な作業を割り振ることとなったこと。
(b)作業の速度や正確性、時間に空きがあるときの他業務の支援および帰宅前の引継ぎについて上司からの指導が必要であったこと。
(c)「マイライン」(注:電話会社事前選択サービス。あらかじめ電話会社を市内・県外等の区分ごとに登録しておくことにより、電話料金を節約することができる)の契約獲得の目標20件に対し、評価対象期間中には1件の受注もなかったこと。
--------------------------------------------------------------------------
<Xによる不服申立て>
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?