#585 「みよし広域連合事件」徳島地裁
2023年4月5日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第585号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【みよし広域連合(以下、M広域連合)事件・徳島地裁判決】(2021年9月15日)
▽ <主な争点>
管理監督義務の懈怠を理由として行われた戒告処分など
1.事件の概要は?
本件は、M広域連合が設置・運営するみよし広域連合消防本部(消防本部)および甲消防署の職員が飲酒運転によるひき逃げ死亡事故を起こした自動車に同乗していたことに関し、消防本部の長として監督不行届があったとしてM広域連合長から戒告処分(本件処分)を受けたXがM広域連合に対し、本件処分の取消しを求めるとともに、本件処分のため、本来行われるべき定期昇給がされず、定期昇給分の給与の支払が受けられていないとして、2019年1月分から3月分までの給与のうち未払となっている合計3600円およびこれらに対する遅延損害金の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<M広域連合およびXについて>
★ M広域連合は、地方自治法284条(組合の種類及び設置)1項に基づき設置された三好市・東みよし町によって構成される広域連合であり、徳島県の事務処理の特例に関する条例により、広域連合の区域における広域行政の推進に関する事務、消防本部および消防署の設置、管理および運営に関する事務ならびに救急業務に関する事務等の事務を担っている。
★ Xは、2015年4月1日から2019年3月31日にM広域連合を定年退職するまで、同連合が設置・運営するM広域連合消防本部の消防長の職にあった者である。
<Xの病気休暇取得、M広域連合の組織等について>
▼ Xは2018年4月、うつ病の診断を受け、療養のため同年5月1日から6月30日まで2ヵ月間の病気休暇を取得した。
★ その間、A次長が職務代理として消防長の職務に当たっており、同期間、Xに月額6万円の管理職手当は支給されていなかった。
★ 2018年4月当時のM広域連合の組織において、同消防本部の消防長は職員83名を擁する消防長部局の長であった。消防長部局においては、各消防署に所属する職員の直接の指揮監督を所属長である各消防署の署長が行っており、消防長が管理職以外の部下職員と接する機会は、巡視や朝礼の機会などに限られていた。
<本件事件、本件処分、本件訴訟に至った経緯等について>
▼ 消防本部および甲消防署を兼務する職員であるBは2018年6月10日、飲酒運転の普通乗用自動車に同乗していたところ、運転者がひき逃げ死亡事故(以下「本件事件」という)を起こした。
★ Bは本件事件を起こした運転者とは幼馴染の関係にあり、過去に何回も同人が飲酒運転する車両に同乗したことがあったが、Xを含むBの上司らは本件事件発生までそのことを把握していなかった。
▼ M広域連合の代表者である連合長Cは同月12日、Xを除く関係者であるB、A次長、消防総務課長に対して懲戒処分を行った(それぞれ懲戒免職、戒告、戒告)。
▼ M広域連合の懲罰委員会は、同年9月、Xを戒告の懲戒処分とする旨決定し、C連合長は同年9月14日付で、Xに対し、地方公務員法29条(懲戒)1項1号等に基づき、戒告の懲戒処分(以下「本件処分」という)をした。
▼ Xは同年11月、徳島県人事委員会に対し、本件処分について審査請求を行ったところ、同委員会は2019年11月、同審査請求を棄却する旨の裁決をしたことから、Xは2020年3月、本件訴訟を提起した。
<M広域連合における定額昇給とXの昇給幅等について>
★ M広域連合の職員のうち、55歳を超える者については、毎年1月1日の定額昇給における昇給幅となる号給数は、2号給となるのが原則であるところ、Xは2013年5月26日をもって55歳となっており、2014年1月1日以降、毎年2号給ずつ定期昇給していた。
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