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#333 「F社事件」東京地裁(再々掲)

2013年4月3日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第333号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【F社事件・東京地裁判決】(2012年8月21日)

▽ <主な争点>
精神疾患により休職した者の退職扱いなど

1.事件の概要は?

本件は、F社に正社員として勤務していたXが休職は業務上の傷病によるものであるにもかかわらず、同社はこれを業務上の疾病によるものでないとして扱った結果、平成21年12月31日をもって休職期間満了による自然退職扱いとしたものであり、当該退職は無効である旨を主張して、F社に対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、平成17年から22年までの間にXがF社から受けるべき給与の額と現実に支給を受けた給与・傷病手当金等の額との差額2085万円の支払いを求めたもの。

また、Xは自分が精神疾患により休職を余儀なくされたのは、(1)F社の従業員であるAからパワーハラスメントを受けたこと、(2)F社の産業医であるBが産業医として不当ないし不適切な行為をしたこと、(3)F社健康保険組合がXの傷病を「私傷病」として取り扱ったこと等が原因であると主張して、F社らに対し、不法行為ないし使用者責任に基づき、慰謝料の支払いをも求めている。

2.前提事実および事件の経過は?

<F社、X、A、Bについて>

★ F社は、コンピュータのソフトウェアの作成および販売等を目的とする会社である。

★ Xは、平成10年8月、システムエンジニアとしてF社に採用されて以来、同社の従業員(正社員)であった者である。

★ Aは、F社の従業員であり、Xの上司または同僚の地位にあった時期がある。

★ Bは、平成13年1月から21年4月までの間、F社の産業医であった者である。

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<XのF社における経歴、本件退職扱いについて>

▼ Xの平成13年から15年における年間残業時間はそれぞれ1200時間、980時間、1070時間であった。また、15年9月から16年2月までの間、100時間を超える残業のあった月は5ヵ月あった。

▼ 16年2月、Xはクリニックで診断を受けた結果、「うつ状態」との診断を受けた。

▼ 17年11月、Xは病院で診察を受けた結果、「強迫性障害」との診断を受けた。また、同月、Xはクリニックの診察を受けた結果、「うつ状態」との診断を受けた。

▼ 同年12月から18年5月までの間、XはF社を病気欠勤した。その後、同年6月から19年8月12日までの間、Xは同社を休職した。

▼ 同月13日、XはF社に復職したが、20年3月から同年8月までの間、同社を病気欠勤した。その後、同年9月から21年12月までの間、XはF社を休職した。

▼ F社は21年12月31日の経過をもって、Xを休職期間満了による退職の扱いとした(以下「本件退職扱い」という)。

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<F社の就業規則の定めについて>

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