[リーガル翻訳]特殊性
いわゆる「実務翻訳」(ビジネス系文書の翻訳)にもさまざまな「専門分野」があります。
メジャーなところでは、「特許明細書」(特許系)「株主総会議事録」「商業登記簿」(リーガル・法務系)「治験同意書」(医療系)「機械マニュアル」「仕様書」(工学・IT系)などがあります。
私は主に「リーガル・法務系」と「IT系」の二本柱で翻訳業を営んでいるのですが、「IT系」をやっていると「リーガル・法務系」の「特殊性」を痛感します。そして、スキルの使い分けで結構苦労します。
一番の要因は何と言っても「リーガル・法務文書」の「日本語ライティングスタイル」の「特殊性」だと思います。「並びに」「及び」の使い方が厳格に決まっていたり、「あるいは」を使うことがなかったり、とにかく正確性(係り受けを含め)が求められたりしつつ読みやすさが求められる文書(たとえば就業規則や行動規範のようにnonリーガルパーソンが主たる読者であるもの)があったり。
逆にIT系はこれほどの厳密さがなく、ごく一般的な日本語ライティングスタイルを意識すれば良いことが多いです。
ここで問題になってくるのが「スタイルガイド」の存在。徐々に「リーガル文書のスタイルガイド」が増えている感じはしますが、まだまだ揃っておらず、Generalなスタイルガイドに従う必要がある場合が多いです。
なお、「スタイルガイド」には「漢字・ひらがな」の使い分けや、「全角・半角」の使い分けなど多岐にわたるルールが記載されています。これは翻訳会社ごとに存在したり、ソースクライアントごとに存在したりする場合が多いです。なので、取引先を増やすと結構頭がパニックになりがちです。これはどの分野の実務翻訳でも同じかもしれません。
余談として、話は代わり、「英語のライティングスタイル」も「リーガル・法務系」は「特殊」です。「Plain English for Legal Writing」的な運動(?)もありますが、まだまだ「herein」「thereto」「Whereas」「however provided that」など、いわゆる「legal jargon」を原稿内で見かけることが多いです。これらは通常の「英語のライティングスタイル」では登場しないので、やはり「特殊」だなと思うのと同時に、「リーガル・法務系」の「専門性の高さ」「参入障壁の高さ」を感じ、「リーガル・法務系」を極めれば極めるほど、他の分野の実務翻訳が苦手になってくるという気がしています。(実体験として、私はリーガル・IT系以外の翻訳は本当に苦手です。)
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