デザイン会社 LEFTE は、なぜスタートアップに強いのか (代表インタビュー:後編)
こんにちは。LEFTE inc.の志水です。
前回の記事では、LEFTEがテック企業に強い理由を伺いました。
( 前編はこちら )
今回もLEFTE設立までの経歴を振り返りながら、LEFTEがスタートアップやベンチャー企業に強い理由 を聞いていきたいと思います。
志水:
スタートアップやベンチャー企業に強い理由 はズバリなんでしょう?
田中:
新規事業に合った「スタンス」と「デザインマネジメント」ですかね。
志水:
新規事業に合ったスタンスとはなんでしょう?
新規事業に求められるスタンス
田中:
語弊を恐れずに言うと、美しいものを生み出すことを目的とするか、事業を成功させることを目的とするかです。
志水:
詳しくお聞きできますか。
田中:
デザイナーである以上、視覚や聴覚などの感覚的なクオリティを上げることにプロフェッショナルを発揮しないといけませんが、その結果事業が破綻してしまっては本末転倒です。
成熟事業においては、経営者側もデザインにどれくらい時間やお金を投じれば良いかを大体把握しているので、デザイナー側は感覚的なクオリティを上げるための主張をすれば良いです。
しかし新規事業においては、今までの常識が通じなかったり、そもそも経営者がその業態への理解が浅かったりするので、誰にも適切なバランスが分からないということが多々あります。
なのでデザイナー側もその視点に立ってクオリティの上げ方を考えなくてはいけません。
志水:
なるほど。
田中:
もちろん事業によっては最初にデザインクオリティを一気に上げた方が効果的な場合もありますし、事業拡大に合わせて徐々にクオリティを高めていくことが適切な場合もあります。
志水:
どのようにそのスタンスに至ったのでしょうか。
田中:
トヨタ時代の後半、北米や東京での業務と業務外活動での経験が大きいですね。
志水:
北米や東京では何をしていたのでしょうか?
田中:
北米時代は業務自体はレクサス時代と変わらず車両開発でしたが、シリコンバレーの有名企業やCES等の世界的なテックイベントを訪問し、テクノロジーの最先端を実際に見ることができました。
その後、新規事業を担当する東京拠点に異動し「スリープテック」「スマートシティ」「月面車両」などの企画やデザインを担当していました。
志水:
業務外活動とはなんでしょう?
田中:
トヨタの有志団体による活動で、簡単に言うとトヨタから新しいビジネスを生み出すための事業創造活動です。
これらの業務や活動を通して、新規事業におけるデザインの重要性や求められるスタンスの違いを体感することができました。
新規事業に求められるデザインマネジメント
志水:
では、デザインマネジメントとはなんでしょうか?
田中:
前提として新規事業では、限られた予算や期間で事業の魅力を高めて資金や協力者を集めていく必要があります。また、デザイナーと関わったことがない人、デザインの重要性を理解していない人が事業を立ち上げることもあります。
志水:
なるほど。
そんな中で求められることはデザインをマネジメントしていくこと。
具体的には2つあります。
1つ目は、
「プロダクトデザインやコミュニケーションデザインをバランスよく進めること」です。
製品を魅力的にすることももちろん大事ですが、誰も体験したことのない価値に共感や期待してもらうためには「どう伝えるか」も同じくらい重要です。また会社自体の知名度や信用が低い場合、企業ブランディングに注力する必要も出てきます。
デザイナー側と事業推進者が、価値を届けたい相手の目線に立って、今何に注力すると最大効果を得られるか判断していく必要があります。
志水:
どのデザインに注力するかマネジメントするということですね。
田中:
はい。前回も言いましたが、プロダクト開発の視点があってコミュニケーションデザインや企業ブランディングに取り組めることがLEFTEの強みだと思います。
志水:
2つ目はなんでしょう。
田中:
2つ目は「デザインの重要性や意図を論理的に説明すること」です。
「いつデザインにお金や時間を割くべきか」「なぜこのデザインにすべきなのか」などを、事業推進者が合理的な判断をできるように説明しなくてはなりません。
志水:
デザインを進めるためのマネジメントという感じですね。
田中:
はい。
カリスマデザイナーに任せっきり、というやり方はLEFTEはむしろ否定しています。( 参照:「デザインをデザイナーに任せるな」 )
事業推進者とLEFTEで共にデザインの進め方や内容を判断していくことが新規事業にとっては大事だと考えています。
もちろん説明できないことや非論理的な感覚が大事になることもありますが、それはまた今度話します。
事業フェーズに伴走する (事例紹介)
志水:
北米拠点と東京拠点を経て、退職することになるわけですね。
LEFTEを起業後に意識していることはありますか?
田中:
新規事業では世の中に製品やサービスが出て定着するまでに様々な道のりがあり、事業フェーズや事業タイプによっても関わり方が変わります。
志水:
関わり方とは?
田中:
先程の「徐々にクオリティを高めていく」や「今は何に注力するか」といった話です。
アイデアと夢だけで人々を巻き込んだり、信頼感を高めていったり、誰も見たことがない物の機能や造形を検証したり。。。事業タイミングに応じてやるべきことは変わります。
お金も期間もあれば全て100点満点にすれば良いですし、LEFTEとしてもその方が実績として華やかになりますが、当然そういうわけには行かない。
どこにどれくらい力を入れるべきかクライアントと相談しながら進めています。
志水:
起業当初から関わられている、インターステラテクノロジズ 株式会社や
株式会社 BIOTAも同様でしょうか?
田中:
そうですね、インターステラテクノロジズ 株式会社(宇宙インフラ事業者)には半内部としてデザインマネジメントしているのですが、まさにロケットや衛星が確立するまでには様々なフェーズがあります。「ロケットや衛星によって素敵な未来が来る」「自分たちこそがその未来を実現できる」と伝えていくために、事業フェーズに合わせた関わり方を提案しています。
また、株式会社 BIOTA(微生物研究事業者)にも内部からデザインマネジメントをしています。簡単に言うとディープテックという基礎研究を軸としている業態ため、一般的にデザイナーが本領発揮するフェーズより手前になりますが、その難解な科学的価値を「適切な形で社会に届けられるか」を事業企画も含めて一緒に模索しています。
志水:
かなり親身に伴走しているんですね。
田中:
上記2社は特にという感じではありますが、今後も日本のテック企業が世界で勝つためのパートナーになりたいと考えています。
クライアントが効果的に「製品の魅力を高めて」「製品や会社の魅力を正しく伝えて」いけるよう努めますし、弊社も若い会社なので一緒に成長していきたいですね。
志水:
前編後編を通じて、LFETEがテック企業やスタートアップと相性の良い理由を伺いました。ありがとうございました。
( 前編はこちら )