【短歌50首】スーパードンキーコング2
この度SFC「スーパードンキーコング2」を久しぶりにプレイし、あまりに思い入れが強かったため、各ステージにささげる短歌を50首作成しました。
いわゆるゲーム吟行です。
人ひとり 二匹の猿を操ってその重心に照る黄色の香
笑い声そのまま書けば机から手紙は浮かぶ 埃ひからせ
W1 かいぞく船 バッドクルール
背に乗ればどんな敵意も肯うがごとき頭突きで走れよ白犀
クレシェンドデクレシェンドのない雪が虫を鼠を陰惨にして
どこまでも遠くに続く海面は足を滑らせればすぐにある
彼なりに鼻と額の境目があるようでカジキの叫び声
フレームアウトしてから追いつかれるまでに蛇が見てきた景色は鏡?
ハゲタカは傷つけられた回数と同じだけ鳴く 無数のハゲタカ
ローリング 手足はジャギー呼気吸気 ファンカファンカの気配またたき
W2 マグマのどうくつ クロコドーム
ワニを踏む次のページで剥がれても救う神なしただギャグのあり
傷ついた後の落下がことのほか長くて見ている心穏やか
匿名の熱のさなかをゆくための息吐き手を叩きはい奇跡
魂を気体に混ぜてしのいだら上方置換で少し減ってる
陰険な光がめぐる洞穴に明度を下げる気のない鸚鵡
心なら素振りでひとを殺せるし 鉄なら純度がすべて 火なら
ツイスティング 切り捨てライク・ア・バンギング 知らず滑り込むピックスクラッチ
W3 船のはかば クレムクエイ
グルーヴを殺した橋の真ん中に洒落た幽霊だけが笑って
アンコウの白い灯りは削除され昔の中でますます白く
届かないから踏んで踏んで踏んで届いたら蒲の穂のたもとに睡蓮が
後先も考えずあなたになって分かったことの言う先がない
おい おい おい 世界の汚れとみなされてフィッシュにドクターされかける夜
連続と断続の交ざる迷宮を不本意にこぼれてシンフォニー
次を跳ぶためこの時を跳んでおく 鬼に金棒には爆薬を
遠くから近くから鳴る打楽器に回る金貨の軽やかさ足す
W4 はちみつパーク クレムランド
粘り気は体の一部を縛りつけ体の全部を遠くへ運ぶ
パーティーはどこまで暗くてもパーティー ゲームをぎりぎり見捨てるゲーム
たまきはる高橋名人の速さで鳥は突っ切る鳥の猛攻を
+ 開き直りはフラクタル見る前 に飛 べ踏み つけ 生 きろ
その極にどんな破局が待ってるか分からないから踊る、だなんて
無敵の蜂と無敵の犀が激突し急降下するフレームレート
追い追われ果てにふたりは丸腰のささやかな射程距離探すだけ
静かになった後の敵には身長も体重もない 無限遠点
W5 あやしの森 ダークレム
消え失せる予兆は赤いまばたきで幽霊なりのホスピタリティ
死神の美学に生かされているのだ死神は似たような美学だ
追い風を越えて待つのは向かい風 枯葉は頬に諫めるように
退嬰はまだ鋭角にできるはず擦り傷をばっちり見つめれば
朦朧として蜘蛛の巣のやわらかさ空気の代わりに耳が震える
君は死んで生まれる前の君を投げる トポロジカルなひとり遊びよ
星々の鋭き角に触れるとき痛覚はゼロ 丸められゼロ
W6 山頂のとりで クロコブルグ
結氷に乗り上げてなお腹這いで進むうろこの向こうにザナドゥ
関節までもひらいて風のほしいまま吹かれるときはどこでも恥部だ
鉄の床昇れよ昇れ(まだ昇る!)君には五分我には二年
心臓を比べてみればわかるだろう熱の不在と時の不在と
縛られる或いは足をかけるための格子にひそむ千の十字架
塔に毒満ち満ちてこの頂上で思う飛び越えた生き物のこと
最高の一撃をまだ待っているタロットカードのように静かに
W7 空飛ぶせんかん デビルクルール
曖昧さ確実さを振り分けながら君に曖昧な部分で勝つよ
この口は笑うためだと斃れても灼かれても喰われても模倣だと
最高の一撃は運を悪運に友を悪友に塗り替えるよな
忘れられた世界があると思い出す お前のかさぶたを剥がしに行く
▼画像版