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SaaSエンタープライズセールスの「本音」に迫る会|SaaS転職のリアル Vol.3

2023年2月に、毎回申込者100名を超える好評ウェビナーSaaS転職のリアルvol.3が開催されました!スピーカーとしてLeaner FSの高橋が登壇し、エンタープライズセールスの刺激的な世界について語り合いました。
このnoteでは、当日のトークを余すことなくお届けします。

▽vol.2はこちら

梅田:今回も「転職のリアル」ということで、具体的でリアルな話を聞いていきます。SaaS業界の概要については、ぜひvol.1を読んでいただければと思います。

今回の登壇者

高橋健太 @KentaTakahash20
|株式会社Leaner Technologies 営業責任者


高橋優斗 @yuto_1933
|株式会社ログラス フィールドセールスリーダー


川並拓樹 @nami1i16490
|ラクスル株式会社 ラクスル事業本部 グロース事業統括エンタープライズ事業部
 セールス&マーケティングリーダー


梅田 翔五 @job_and_life(モデレーター)
|株式会社セレブリックス 新規事業開発室 ゼネラルマネージャー

本日のテーマはこちら!

エンタープライズセールスの楽しさ・面白さ

「楽しい」と「大変」は紙一重

健太:エンプラセールスの一番の楽しさは、誰もが知っている大企業に営業できる!ということです。我々は調達購買に関するプロダクトを提供しているので、導入が実現した時の社会的なインパクトも期待できます。例えば自動車業界だと、Tier1→Tier2→Tier3という構造が明確で、上位にあたるTier1が変わらなければその下にあるTier2やTier3も変わりません。

先日、Tier1である有名自動車メーカーの部品製作会社に訪問して来たのですが、そちらの副社長が「私たちは、Tier2やTier3で働く人たちの給料を上げるために働いている」という視座の高いコメントを仰っていました。そういったスケールの大きいことを考えている大企業の役員にあたる方たちと、サプライチェーンをどうしていくか?といったディスカッションができるのは「日本を変えていく」一端を担えていると実感できて、楽しいですね。

あとは、BtoBの営業になるので、恥ずかしながら企業名を見ただけでは知らない会社が多くあります。でも商談に備えて調べていくと、社員が数千〜数万人もいて、世界でトップシェアを誇る貴重な部品を作っていたりするんです。そして、その部品が車のどこを支えているだとか、日本のモノづくりについてなど、知る人ぞ知る業界の細部を知ることができるのは面白いポイントかもしれません。

優斗:ログラスは、経営管理クラウド『Loglass(ログラス)』という会社の心臓を支えるSaaSを作っているのですが、誰もが知っている企業に、ログラスというペースメーカーを埋め込んで名を轟かす。ということ自体にロマンがあって楽しいと感じています。バンダイナムコエンターテインメント様や、眼鏡のJINS様などをはじめとした、日本を代表して世界進出している会社様に使っていただけていることは、何とも言い難い感動があります。

エンプラにSaaSをご利用いただくにあたっては、現状ではプロダクト機能が足りていない側面もあるのですが、目指す世界観を共有することで価値を感じていただいて一緒に成長していくことができるのは、とても楽しい仕事だと思います。

前職との比較で言うと、私はキーエンスという大企業にいたので、アポをいただくのにも会社の名前を出せば非常に進めやすかったんです。スタートアップで営業をするためには、まず会社名を伝えたときの不信感を解くところから始まるので、大変なことも多いですが、その分返ってくるものに嬉しさを感じますよね。

健太:私も前職では三井住友銀行とパーソルで働いていたので、それぞれ三菱とリクルートという1位の企業に対して戦いを挑んで「シェアを取りに行く」という営業をやってきました。
それでも、2位とはいえ有名企業だったので、お客様から不信がられることは無かったんです。それに比べるとLeanerはまだまだ小さい企業で、エンプラのお客様と取引するにあたって様々な証明が必要になります。創業2年目に契約を結ぼうとしたときも「5期分の財務書を出して下さい」と言われて「まだ2期目なんですけど…。」ということもありました。(笑)その代わりにどんな説明ができるかを考えて、Leanerの投資家や事業計画を紹介して、それで決裁を取っていただくよう頼んだりとか、そんなエピソードもあります。こうやって話していると、「大変」と「楽しい」は一緒だと思いますね。

優斗:純粋に、お客様にプロダクトを褒められるのも嬉しいと感じますね!言葉をそのままエンジニアに伝えよう!って思います。

健太:それ、ありますね!特に初期のプロダクトなんて「こんなの使えない!」ってボロクソに言われてしまったこともあったんですけど、その会社に「半年間でプロダクトが進化したので、見て下さい!」と言ってもう1度アポを取って紹介したら、再受注できたということもありました。すごく嬉しかったですよね。

梅田:それはアツいですね!大企業はステークホルダーも多く、決裁の壁が厚くて高いと思うのですが、それを突破した時の面白さ・嬉しさは格別なのかなと思いました。

川並:ラクスルは名前こそ知っていただけるようになり、先ほど優斗さんが言っていた「不信を解く」という大変さは少ないかもしれません。ただ、大企業においては既に他の印刷会社とがっちり手を取り合っていることがほとんどです。その関係性に斬り込んで、ラクスルを使っていただく機会を頂戴するというのは、難しくも面白いところだと思います。

梅田:ラクスルさんが法人営業するにあたって、最初に話すお客様ってどういう担当者の方なんですか?

川並:販促担当の方が多いですね!大企業だと、販促やマーケティング部門の中でも紙やデジタルなどで担当者が分かれていることがほとんどなので、その中でも紙が担当という方とお話しをします。BtoCの会社も多いですが、BtoBの会社でもカタログ製作などをしていらっしゃるので、関わる会社は非常に幅広いです。

エンプラセールスの難しさ・厳しさ

川並:よくある大変なこととしては、大企業は「今までやってきたことを踏襲する」という大きな流れがある中で、ネット印刷という新しいツールを使っていただくとなると、どうしてもお客様のフォーカスはデメリットに当たりやすくなります。それに対して、「でもこういう所がいいですよ」と切り返して、メリットに目を向けていただくところが難しいなと思います。

印刷に関しては、担当者やその部署のマネージャークラスで決裁が下りることも多いので、実際にツールを使っていただく方にメリットを感じてもらいつつ、誰に納得していただき決裁を取るかという組織の見極めも大事だと思います。

優斗:価値を感じていただけるお客様が誰かを見極めるのって難しいですよね。今って、企業に訪問して内線電話をかけるとか、いきなり現地で「ちょっと10分お話いいですか?」って声かけるとか、そういうことは出来ないじゃないですか。そういう意味でもチャンピオンを探す難しさはありますよね。

エンプラあるあるから学んだこと

梅田:エンプラセールスあるあるだと思うんですが、こちらが1人なのにお客様が大人数というシーンもかなり緊張しますよね。私は最大でお客様が25人参加だったことがあります。

健太:それは多い!!!(笑)

川並:会議室にカメラ一つで全員を映すタイプのオンライン会議も多いですよね。表情が全く見えないので、ちょっとやりづらいなと思います。そういう意味でもオフラインでお話しする機会も大事だなと感じます。

健太:確かに行ってみないと分からない事もあります。オンラインだと全然お話しないので存在感をあまり感じなかった方が、訪問してみると「すごい力を持ってそう」と空気感で分かることもあります。やっぱりエンタープライズは行ってみたほうがいいですね。訪問することで話が進むことも多いので、Leanerも社内で一定の出張ルールは設けつつ、機会を作るようにしています。 

他にも、歴史がある企業には文化がしっかりあると感じます。その分、その文化に沿っていないと検討以前に弾かれてしまうことも多いです。自動車業界をはじめとしてそれぞれの系列文化があるので、「あの企業がやっている事はやらない」「あの会社のカルチャーは好かん!」と、事例紹介のロゴを見ただけで検討を進めていただけないこともあります。なので、サービスの話を聞いてもらうために、その会社のカルチャーや背景を勉強して準備することが大事だと痛感しています。

川並:BtoCの企業でもそういう文化はあって、「ここのやり方は好かん」とか、「この会社がやっているならやらない」というような縄張り意識みたいなものはあるんですよね。

梅田:SaaSを売るにあたって、事例紹介はすごく有効でどんどん出せば良いものだと思っていたんですが、想像以上に複雑で奥が深いんですね…!似たような会社がやってるから導入する。ということではないんですね。

エンタープライズセールスに求められる能力・素養

川並:良い意味で、社内営業が上手な人は活躍できると思います。社内でパワーバランスや人の関係性をしっかり見られる人は、顧客に対してもそれが出来ると思うんですよね。

優斗:確かに、全員の人に対してその人の立場になって、気配りをもって接することができるというのは大事だと思いますね。豊臣秀吉みたいな。

健太:わかります。良い意味で「人たらしであること」は重要ですよね。

梅田:エンタープライズはステークホルダーが多いからこそ、かもしれませんね。顧客が1~2名の場合、特定の相性の良いタイプの人に刺さり続けて、売上が伸びていく人がいると思うんです。エンタープライズは顧客が10名とか、場合によってはそれ以上の登場人物がいることもあって、その全員と上手くやれるかが求められるんですよね。

優斗:特定のチャンピオンには加点方式で積み上がったとしても、それ以外の人に減点されてしまうと、導入を足踏みしてしまうということもあり得るので、全員と関係性を構築していくのは大事なことですよね。

健太:今となっては本当にその通りだと思うのですが、過去の自分は「チャンピオンさえ握れていれば絶対契約できる!」と信じて疑わなかった時期もあって、その頃の自分を殴りたいです。(笑)役員クラスの人としっかり関係性を構築できていたのに、現場の方に価値を感じていただけず契約に至らなかったという経験もあるので、全員と良い関係を築くことは本当に大事です。

そういった経験から、自分は自社の採用面接をするときにも、全体を俯瞰して見ることができるかは確認するようにしています。面接を受けている方がエンプラセールス経験者とは限らないですが、その人のキャリアでどういう立ち振る舞いをしてきたか、その中でファクトをとらえて、事象を整理できて、アカウントプランを立てられそうか、というのは見るようにしています。必ず聞く質問は「人生で死ぬほど辛かった経験はありますか?」です!

優斗:どういった人が活躍できるか?という視点で振り返ると、キーエンスでもログラスでも、成長しているのは、素直で色んなインプットを厭わない人だと思います。
ただし、キーエンスであれば一気通貫なので、アポを大量に取るという行動量の多さで成約数を増やし結果が出ている人もいますが、ログラスではそれだけだと難しいなと思います。ログラスはThe Model型の組織なので、ISが取ってくれたアポを成約につなげるのがフィールドセールス(FS)のミッションであり、営業としての質が求められると思います。行動量だけでは賄えないですね。
もっとリアルなことを言うと、IS担当者も成約してくれないFSにアポを回したくないと思うんです。ISが取ってきてくれたアポに対してしっかり準備をして、高い確率で成約していくFSが求められると思います。

川並:エンプラのアポは取るのが大変ということもあり、一つひとつの商談に重みがありますよね。私自身もアポを取る経験をしてきたので、そう思います。

優斗:そう考えると、責任感が強い人、出来なかったらちゃんと悔しがる人、そういう人がFSに向いているかもしれないです。私も採用面接でよく聞く質問があるのですが、それは「今まで死ぬほど頑張ったけど失敗した経験はありますか?」です。失敗したシーンにおいて、時間や周囲の解決に頼るのではなく、どういった行動をとったかとか、どんな感情だったかとか、そういう所から責任感が読み取れることはありますね。

前職のキャリア・経験が活きたこと
川並:私は前職で小さな求人広告企業にいたのですが、小さい媒体がゆえにぶち当たることも多くありました。だからこそ、何処が勝っていて、どういう伝え方をしたらお客様に価値を感じてもらえるのか?を多く考えて差別化を図りました。この経験は新しい事業に取り組む際に役立ったと感じています。今、ラクスルの媒体は既に強いですが、使っていただきたい会社にどういう伝え方をすれば導入していただけるか?と考えるにあたって、経験が活きていると思います。

健太:自分の場合は、前職だと競合が多く、正直どこのサービスも提供できるものが似ている状況でした。なので、お客さんのどこに課題設定するか?で勝負がほぼ決まってしまう環境です。その、「お客さんの課題設定」という経験が非常に今に活きていますね。
Leanerはこれまで日本社会に無かった価値を提供しようとしているので、そもそも「課題」として捉えられていないことを課題として顧客に認識してもらう必要があります。課題を認識していただき、その解決のための予算を取っていただくためにも、お客様にas isとto beを見せて、課題を設定していかなければ、何も始まりません。新しい事業をする中でも、前職が非常に活きている経験です。
また、役員の方に提案するというのはハードな環境なので、それも前職で経験していてよかったと感じますね。

梅田:課題設定というのは、具体的にどういうことなんでしょうか?どうやったらできますか?

健太:まず、現状を正しく理解することです。自分自身のことを正しく理解するって難しいことで、お客様自身も自社の現状を詳しく把握できていなかったりします。例えば、役員クラスの方は現場のことをあまり知らないこともあるので、ファクトをもとに「今、こういう状態です」を定義してあげる必要があります。そして、本来目指したい所に向けて、「こういうことやるべきですよね。」という話をしてあげると、そこにたどり着くための課題が分かってきます。なので、現状を正しく理解してお伝えすることと、あるべき姿を見せて、その姿とのギャップや、やるべき事を言える。そんな感じでしょうか。

こちらの想像以上に、お客様は自社の現状把握や言語化ができていないことが多いので、コーチングに近いイメージもあります。お客様の事を深堀して話していただいて、お客様自身に課題に気付いていただくことで、こちらが「こうするべきだ」「これをやるべきだ」というよりも納得感をもって課題解決に取り組んでいただけると思います。
実際に、最近もお客様自ら「購買業務を棚卸ししました」と連絡をくださったのですが、そういう風になっていただけると良いですね。

優斗:マインドの部分ですが、キーエンスは「コンサルティング営業」というテーマを掲げていて、お客様に頼られるために、息を吸うように競合情報や業界情報をインプットする環境だったんです。お客様の質問に対してちゃんと答えるとか、お客様に関係する情報を当たり前のように持っているとか、そういう基本姿勢がセールスとして当たり前になったというのはとても良かったと思っています。

すると、例えばお客様から「こういうの作りたいんだけど、なんか良いものない?」とおおまかな質問が飛んで来ても「こうしましょう」と即答できます。即答ができることで、競合に頼られる事もなく、こちらが届けたいものを届けることができるので、その時点で勝ちなんです。
そういう「信頼を得る」ためのインプットを営業全員が持っているのがキーエンスです。毎日のように勉強会や、それについてのテストがあって、60点以下だったらもう一回やる。というような感じでした。それが日常なのでもはやインプットに対する抵抗感も無いんですよね。

梅田:キーエンスといえば、行動量が圧倒的だとか、マイクロマネジメントや時間管理が徹底されているとか、そういうイメージでした。でも実際は、セールスが情報を武器にするということを徹底しているんですね。

優斗:確かに行動量も多いんですが、インプットをしっかりしている人はお客様から連絡が来るので勝手にアポが埋まっていき、売上も大きいという感じですね。営業パーソンの平均点が70点だとすると、150点を取るトップの人は、何十年もそのインプットのサイクルを続けている人だったので、それが大事なんだと見て学びました。
情報が無いと想像ができないので、行動を起こし・情報を取り・その情報をもとに想像する。その一連の流れが大事だと思います。

質問コーナー

質問1.
受注後に、FSがお客様とコミュニケーションを取ることはありますか?CSに引き継いだあと、お客様と連絡を取ることはありますか?

優斗:私は、新たなご縁をいただくために連絡しています。注文書にも「サクセスしたらぜひご紹介ください」という旨を記載しています。さらに言うと、商談に同席してもらうこともあります。実際にプロダクトを使っているお客様が「ログラス良いよ」と伝えてくださるほうがよっぽど説得力があるので、有効だと思います。

健太:Leanerの場合も、主にディスカウントした場合などは「グループ会社を●社紹介してください」という形で約束として記載したりしますし、検討中のお客様が「そんなにLeanerって良いものなの?」と疑問を持っている場合には、他のお客様にお願いして商談に同席していただき、Leanerの良さをお話していただくことがありますね。

川並:ラクスルは窓口を一つにするという意味では、基本的に連絡はせずCSに任せています。でも、お二人の話を聞いて勉強になりました。

梅田:これは組織の考え方にもよるところですね。私は前職のときに、窓口を一本化するために連絡しないようにしていたのですが、エンゲージメントが高いお客様から直接自分に連絡が来てしまって、かえって気を遣うこともありましたね。

健太:確かに、オンボーディングの期間は連絡しないようにする。などはしています。

質問2.
FSがお客様と関係性を築いてからCSに引き継いだものの、例えば新人CSが担当してオンボーディングのときにトラブルが起きてしまった…といった経験はありますか?

健太:Leanerの場合はこれまで起きていないです。初期のプロダクトのときは「プロダクトとしてまだまだである」ということをご理解いただいた上で、世界観に共感して導入してくださったので、ご不便をおかけすることがあっても継続してご利用いただけました!

優斗:全くないとは言いませんが、あまりないです。Loglassは経営管理クラウドなので、CSも経営企画出身者が多いです。そのため、CSがセールスよりドメイン知識が少ないといったことはなく、上手くできていると思います。ただ、セールスが夢を売りすぎていて、ちょっとした齟齬が生まれることはありますね。あとは、お客様が稟議を取るために風呂敷を広げて説得しているというパターンも時折あるので、「それは出来ないですよ」と改めて説明が必要になるシーンもあります。

川並:ラクスルでも無いですが、前職の求人広告企業の時はありましたね。やはり、求人媒体は「これに載せたら応募が来ますよ」と説明して買っていただくプロダクトなので、それで応募が来ないという結果になることは避けられない面があります。

おわりに

梅田:本日はありがとうございました!時間が短くて話しきれないことも多くありましたが、転職を考えている人に少しでもエンプラセールスのリアルや面白さが伝わっていたら嬉しいです。

営業のキャリア相談やスタートアップ転職に興味がある方は、ぜひお気軽に梅田(@job_and_life)までご連絡ください。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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