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空想エッセイ 昨夜の話

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作者・ナルが昨夜体験したかもしれない、妖怪たちとの交流のお話。事実か空想かは、ご想像にお任せします。
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【空想エッセイ】番外編・キャラ紹介

今日の空想エッセイは番外編である。これまで作品に登場してくれた、4人の妖怪(と一人)について、実際の伝承を(うっすら)織り交ぜながら紹介する。 ぬらりひょん伝承 江戸時代の妖怪絵巻などにその姿が確認できる。はげ頭の老人の姿で描かれることが多い。 岡山県の伝承では「海坊主」の一種とされる。この伝承については、大型のクラゲやタコを妖怪視したものと考えられる。このぬらりひょんと、妖怪絵巻のぬらりひょんが同一のものかは不明。 妖怪の総大将とされるが、後代における俗説であるとも。

【空想エッセイ】昨夜の話(1)

何も書けない。 今日は何をやったってだめだった。 行こうと思ったお気に入りの店は臨時休業。通行人によくわからない理由で舌打ちされて、睨まれた。書こうと思ったテーマの小説で、ものすごくいいものを見つけてしまって自信喪失…。 なんだって、こんなにうまくいかないんだろう。 ノンアルビールを流し込んで、窓越しの夜空を見た。 空を、妖怪たちが駆けていく。 ああ、そうだ。今日は百鬼夜行だった。すっかり忘れていた。窓を開け、おぅいと呼んでみた。一つ目小僧がこちらに気付いて寄ってきた。

【空想エッセイ】昨夜の話(2)

「はあ…。」 僕はため息をついた。缶チューハイを飲む。またため息。 やっぱりだめだったかあ…。 こんこん、と窓を叩く音。東北にはうっすらと秋が来た。夜はもう、ちょっとだけ寒い。窓を開けた。 「やあ、一つ目小僧と………誰?」 「今日は新しい友達を連れてきた!イッポンダタラだよ。」 「こんばんはー。イッポンダタラっす。よろしくー。」 大きな身体。隻眼で、一本足。なのに、ノリが軽い。 「よろしく、イッポンダタラくん。なんて呼べばいい?」 お菓子を支度しながら、僕は尋ねた。今日はと

【空想エッセイ】昨夜の話(3)

「ナ…ルぅ…」 聞き覚えのある声に窓を開けると、ずぶ濡れの夜行が立っていた。 「夜行さん!…なんでずぶ濡れ?」 僕はタオルを渡しながら尋ねる。ビール、ビールと…。 「…今日は、酒はいい。」 驚いて振り返ると、夜行は泣いていた。大きな一つ目から、ぼろぼろと涙があふれている。 「…なんかあったの、夜行さん?」 「うう…。」 夜行は答えてくれない。どうしたものかと悩んでいると、窓をノックする音がした。 「ぬらりひょん、イッポくん!」 「夜行について、わしが説明してやろう。」 そう

【空想エッセイ】昨夜の話(4)

「ナルさん、『うたすと2』って何すか?」 そう言いながら、イッポくんは窓を勝手に開けて入ってきた。 「うおう、イッポくんか!」 僕は夜の間に執筆し、朝投稿するスタイルである。今も、ネタが思い浮かばず、頭を抱えていた。 ※この記事は、ナル作『空想エッセイ』の中で、音楽と小説のイベント『うたすと2』を紹介するものとなっている。 『空想エッセイ』とは、作者・ナルと妖怪たちが友達という設定の創作である。過去作も読んでいただければ嬉しい。 以上、注釈終わり! 「『うたすと2』という

【空想エッセイ】昨夜の話(5)

「ナルさん、うたすと2に新曲が追加されたって本当?」 ベッドの下から突然現れた一つ目小僧に驚き、僕はお茶を噴き出した。 「…いつからいたの?」 「昨日からずっと。寝てた!」 「…怖いよ、一つ目小僧」 僕は執筆をやめ、一つ目小僧に向き直る。 「だって、妖怪だし。怖くて当然なんだよ。それより、新曲ってどんなの?」 「ああ、『風雷』っていうんだよ。かっこいいよ、聴いてみる?」 「うん!」 というわけで。 「わああ!かっこいいね!」 「でしょ?」 一つ目小僧はぴょんぴょん跳ねて喜

【空想エッセイ】昨夜の話(6)

僕は窓を開けた。すっかり冷え切った空気が、もうすぐ秋が去ろうとしていることを告げる。大好きな岩手山にも、雪が降ったという。 「雪かき、面倒だなあ…」 ため息をついて、空を見上げる。百鬼夜行だ。 心なしか、参加者の数が少ないような…。 「わっ!」窓の下から一つ目小僧が現れ、僕は飛びのいた。 「びっくりしたあ!」 「大成功~!」 一つ目小僧は上機嫌だ。僕は気になったことを尋ねた。 「百鬼夜行、数が少なくない?」 「あー、大丈夫!寒いからみんなnoteを読んでて、百鬼夜行サボっ

【空想エッセイ】昨夜の話(7)

東京は10月とは思えない暑さだというが、僕の住む町はすでに寒い。 先日、除雪車についてのローカルニュースが放送されていた。いよいよ冬が来る。一応、僕の誕生日も来る。 窓を開ける。ひんやりとした空気が頬を刺す。 「うー…寒っ」 ひゅっと音がした。頬を何かが掠めていく。どすっという音。後ろを見ると、壁に矢が刺さっていた。 「……これは」 「酒呑くんだね!」 一つ目小僧が僕の隣に立っている。彼がいつ来たかは、この際どうでもいい。 「…彼は、僕を殺すつもりかな?」 矢には、手紙が括