【空想エッセイ】昨夜の話(7)
東京は10月とは思えない暑さだというが、僕の住む町はすでに寒い。
先日、除雪車についてのローカルニュースが放送されていた。いよいよ冬が来る。一応、僕の誕生日も来る。
窓を開ける。ひんやりとした空気が頬を刺す。
「うー…寒っ」
ひゅっと音がした。頬を何かが掠めていく。どすっという音。後ろを見ると、壁に矢が刺さっていた。
「……これは」
「酒呑くんだね!」
一つ目小僧が僕の隣に立っている。彼がいつ来たかは、この際どうでもいい。
「…彼は、僕を殺すつもりかな?」
矢には、手紙が括りつけられている。開いて、内容を見る。
「お前が完璧な小説を書けるまで、毎日撃ちこむ。酒呑童子」
「…殺す気だね」
「間違いないね」
顔を見合わせる。どうしようか…。
「ナルや、安心せい」
その声は…。振り返ったそこには、ぬらりひょんがいた。
「ぬらりひょん!腰はもういいの?」
「大丈夫じゃ。寝込んでいたら、おすしちゃんが夢に出てきた。そうしたら、ほれ。この通り元気じゃ!」
そう言って『ってか』を踊りだした。なかなかのキレ。
ぬらりひょんは一通り踊ると、部屋に誰かを招いた。
「…温羅くん!」
温羅くんは『桃太郎伝説』のモチーフになった鬼である。最近はとても温厚で、ファッションとスイーツをこよなく愛している優しい鬼だ。
「お久しぶりです、ナルさん」
「珍しいね、君が来るなんて」
せっかくなので、買い置きのおやつをいくつかあげることにした。岩手県二戸市の栄宝堂のお菓子を数点。僕はここのケーキの大ファンだ。
「ごめんよ、温羅くん。来るとわかっていたら、ケーキを買っておいたんだけど…」
「いいんです、ここのお菓子はどれもおいしいですから。とっても嬉しいですよ」
彼はニコニコ顔でお菓子を食べ始めた。
「ナル。温羅に説得してもらおうと思うんじゃ」
ぬらりひょんもお菓子を頬張りながら、僕に切り出す。
「説得って…酒呑くんの?」
「そう。温羅は、あいつと仲が良いからの。それに、酒呑童子は小説に厳しいだけで、元々はいい奴じゃ」
「それはわかってるよ。でも…」
「でも?」
「なんで酒呑くんは、僕に厳しいんだろう?」
ぬらりひょんと温羅は顔を見合わせた。一つ目小僧はすでに転寝をしている。
「…思い当たること、ないんですか?」
温羅くんに訊かれ考えてみるが、何も思い浮かばない。
「…そこから、みたいじゃのう…」
悩んでも仕方ないので、今日はこのまま楽しむことにした。
ぬらりひょんのダンスをみんなで見た。『ってか』だけでなく、『夕陽Dance』までマスターしていた。
「…短期間で、よくここまでできるようになったね」
そう言われたぬらりひょんの顔は、輝いていた。
了
あとがき
新キャラ・温羅が出ました。
酒呑童子も引き続きうっすら出てきております。
どうぞよろしくお願いします。
ぬらりひょんのダンスは意外とレベルが高い。彼はそのうち全曲マスターするつもりでいる。勿論、各曲全ポジションをマスターするつもりでいる。妖怪界は平和なのだ。ダンスを練習する時間は無限にある。
次に披露しようと『どうする?どうする?どうする?』を練習中…らしい。
栄宝堂は二戸市に実際にあり、堀野支店にてお菓子を販売している。
僕はよくケーキを買いに行く。大事な友達に差し入れしたこともある。美味しいのでお近くに来られた際は是非。日曜定休のはずでございます。どれも美味しいが、おすすめはたぬきケーキとシュークリーム。
ちなみにお知らせとして、その二戸市では26日(明日)、市出身の4兄弟バンドSaToMansion主催イベント「南部事変2024」が開催される。
場所は二戸市カシオペアメッセホールなにゃーと。入場料無料。
詳しくは、以下のSaToMansion公式サイトよりご確認を~。
それでは皆さん、いい週末を。
僕は気圧と寒暖差で倒れそうです…。
たすけて~。
いただいたサポートは、通院費と岩手紹介記事のための費用に使わせていただきます。すごく、すごーくありがたいです。よろしくお願いします。