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思い出のナッツクッキー

ピーナッツバタークッキー
アイスボックスクッキー
スノーボール。

手軽にできることもあってか、
母はよくクッキーを焼いてくれました。

そして、手軽にできるんだからと思って
初めて最初から最後までひとりで作ったお菓子も、クッキーでした。

・・・

「今日は全部やってみる!」と言ったら、

「作ってくれるの?わー嬉しいー!」

と喜んだ母。

私、9歳。

レシピ本を片手に、
ナッツクッキーを作り始めました。
当時家族みんなに大人気だったクッキーです。

まずは材料を量って。
ミックスナッツを刻んで、炒って、冷ます。
柔らかくしたバターを練って、
グラニュー糖と卵黄をすり混ぜて、
薄力粉をふるって。
ナッツを加えて、さっくり混ぜる。

この「さっくり混ぜる」という行程は、
当時の私にとって神の領域でした。

「混ぜる」と言えば「ぐるぐる」だと思っていたのに、「さっくり」ってどういうことなのかいまいちわからず、いつも母にバトンタッチしていた箇所。

母の手つきを思い出しながら、おそるおそる。

…さっくりさっくり

なかなかいい感じ。

「さっくり混ぜている自分」に感動しつつ、

さっくりさっくり


さっくり


さっくり


べたべた



べたべた。


あれ?

なんか変?


と思いつつ、出来上がった生地。
いつもは簡単に手で丸められるんです。
でも、見るからに丸められないべたべた具合。


変なの…


と思いながら、
急遽ドロップクッキーにすることにしました。
意外と臨機応変。

スプーンで天板に落として、
なんとかオーブンに入れました。

10分後。

「焼けてきたかな…」

と覗いたオーブンの中。


ぐつぐつ
ぐつぐつ


ぼこぼこ
ぼこぼこ


なんと天板いっぱいに広がって、
大きな泡がぼこぼこしては弾けてる、

マグマのような、何か。


キッチンが静まりかえっているので、
様子を見に来た母。

「あっ…」

バターと薄力粉の量を逆にしちゃったんです。
バター180g、薄力粉250gのところを、
バター250g、薄力粉180g。
(みんな好きだから2倍量)

それはいくらさっくり混ぜてもべたべたになりますね。

天板いっぱいに焼き上がった何かをちぎって食べてみたけど、
バターがじゅわっと出てきておぇっとなりました。

たくさんの材料を無駄にしてしまったけど、
母は「勉強になったね」と笑っていました。
事実それ以来、材料を量り間違えることはなくなりました。
苦い思い出だけど、ちゃんと役に立っています。

そして今、下の子が9歳。
私に似て、お菓子づくりが大好きな女の子です。
卵を割るのも粉をふるうのも泡立てるのも絞り出すのも、自分でやってみたくてたまらないお年頃。

繊細な作業や火を使う作業はつい手が出てしまうけれど、母のようにどんと構えて「やってごらん」と見守れる母でありたいなと、お菓子作りに夢中な可愛い横顔を見ながら思っています。

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