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異人館の神さま

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「手にすると全てが手に入る」そんなものになってしまった少女細子と運命に翻弄されてきた司の成長ストーリー
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2024年8月の記事一覧

異人館の神さま(1) 小説

異人館の神さま(1) 小説

1 それは小さい頃のお話

付喪神 《九十九神》
長く生きた依り代に神や霊魂などが宿ったもの
荒ぶれば禍をもたらし、和なぎれば幸をもたらすとされる

かつてはたくさんの付喪神がそこかしこにいて人をたぶらかしたものである。

新月の事だった

月はその存在を隠し 暗く闇に沈む部屋

誰も居ないその部屋にひどくかすかに聞こえる笑い声

クスクス…クスクス…

クスクス……

…フフフ

2 名前を呼ん

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異人館の神さま(2) 小説

異人館の神さま(2) 小説

道路に面した入口から歩くこと5分 ヘロヘロになりながら歩き続け
ようやく木立に紛れて建物の二階らしきものが見えてきた

「なんじゃこりゃあ!!!!」

うちも結構な洋館だったけど こいつはもっとすげえ
あれはもしかしてステンドグラス?
重いトランクを放り出し 走る

「なんじゃこりゃあ!(二回目)お城かよっ!」

目の前にそびえ立つ建物に唖然
石造りと思われる壁を手でピタピタと叩き
そのまま二階に

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異人館の神さま(3) 小説

異人館の神さま(3) 小説

細子さんが来るのが遅かったので少し心配していたのですよ」

外から家族が使っている居間に移動して冷蔵庫から出した麦茶をコップに注ぎながら彼は言う

「駅から10分って聞いてたんですけど たっぷり30分はかかりました」

「ああ、それは入るところを間違えたんですね 確かに門とは反対の方に細子さん居ましたね」

ええええええええっ

「本当ですか?」

「どうぞ。今日は暑いし重い荷物を持って大変でした

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