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5分で学ぶ、カール・アンドレの生涯と彫刻作品を解説(妻と詩とそれから作品)

均質に並べられた木のブロック。
これはアートでしょうか? それとも建材などの置き場でしょうか?

この作品の作者であるカール・アンドレは、このような素材をあえて加工せずにそのままの姿で床に幾何学的に配置する作品を多く制作しています。

木材や石、金属板などを並べ、素材の物質性そのものを作品化したのです。


また、アンドレの作品は空間と光に配慮したインスタレーション作品である点も特徴。代表作である《等価物VIII》は、ロンドンのテート・ギャラリーの床にレンガを整然と並べただけのもので、当時は大論争を巻き起こしました。

この記事では、そんなカール・アンドレの生涯について、人間関係、作品の特徴などを解説します!


1. カール・アンドレの生い立ちとミニマリズム


カール・アンドレは、アメリカのマサチューセッツ州・クインシーに生まれ。

フィリップス・アカデミーで学んだ後、兵役を経て1957年にニューヨークへと移住しました。そこから本格的に木を組み合わせた立体作品の制作を始めています。

制作の傍ら、1960年から1964年までの4年間は、ペンシルヴェニア鉄道に勤務。肉体労働と列車の秩序立った運行管理の経験は、彼の思考やアートへのアプローチに大きな影響を与えたと言われています。


1965年に初個展を開催したアンドレは、翌年の「プライマリー・ストラクチャーズ」展への出品以降、ミニマリズム運動を代表する作家の一人として活躍しました。

そんなアンドレは、機会があればデニムのオーバーオールとワークシャツ姿で、公の場に現れる無骨な人物でした。

このような気質は、無機質でありながらも人間味を感じる彼の作品とリンクして、作品への親近感を与えてくれます。


彼の作品への理念は、

「木は木として、鉄は鉄として、アルミはアルミとして、そして一梱の干草は一梱の干草として提示したい」

という言葉に集約されます。

これは、物事をありのままに受け入れ、それ自体の存在価値を尊重することを意味し、素材の物質性の提示という点において、ミニマリズムの定義を最も厳格に推し進めた作家として評価されています。

それにしても、ここまでシンプルで厳格かつ潔い作品を作れるのは、本当にすごいですよね。

そんなカール・アンドレは、2024年1月に88歳でこの世を去っています。


2. カール・アンドレの作品の特徴

カール・アンドレの作品は、木材や鉄、アルミニウムなどの素材をグリッド状に切断し、床に並べたものが多く特徴と言えます。

この制作手法は、「切る」「置く」「積む」「並べる」「ばら撒く」などの限定的な行為を顕在化させ、床面と密着する水平的な設置形態をとっており、従来の彫刻のボリュームや直立性に対するアンチテーゼです。

また、鑑賞者と向かい合うことで、形象性を示唆してしまう従来の彫刻のイリュージョニズム(幻想・錯覚)を解体する試みでもあります。


「同じであること」の反復

アンドレの方法は、「同じであること」という、“反復”を素材と形式の双方において実践するものでした。

この反復性は、ミニマリズム芸術の核心的な特徴の一つです。

アンドレは、素材への介入を最小限に留め、色彩を施すことも極端に嫌っていました。

特に、素材をそのまま加工せずに床に広げる手法は、同時代のミニマリズム作家であるドナルド・ジャッドやロバート・モリスとは一線を画します。


また、アンドレは作品制作だけでなく、詩の発表や執筆活動にも積極的に取り組みました。

彼は「ミニマル・アート」を含む現代美術に関する自身の考えを表しています。


影響を受けたアーティスト

アンドレのこうした手法は、全体と部分の階層差を排除し、統一的形態や同一ユニットの並列、中心性を持った構造に依らない彫刻の新たな方法論として、従来の彫刻観を覆すものでした。

そんなアンドレの作風は、多くのアーティストから大きな影響を受けています。


まず、20世紀を代表する彫刻家である、コンスタンティン・ブランクーシ。

アンドレは、1950年代にブランクーシの作品に触れ、特に《無限柱》からインスピレーションを受けたとされています。これがきっかけとなり、彼は鑿で木に切れ込みを入れた《ピラミッド》を制作しました。

次に、アーティスト兼哲学者のジョージ・セルデンとの出会いがあります。

セルデンの唱える「事物はあるがままに」という思想から、アンドレは素材そのものの本質を尊重する姿勢を学びました。

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