縁起のいいダジャレはミツバチが運ぶ
リベルテの3つあるアトリエのひとつは柳町通りにあります。
最近は 上田映劇 などに置かせてもらっているクッキーはこのアトリエでつくられています。
ぼくは普段、路地というアトリエで仕事していることが多いけど、このアトリエに来るごとにメンバーが絶妙な掛け合い(雑談)しながら自分の仕事に取り組んで充実していく様子を感じています。
障害者施設や、リベルテのような共同作業所的な施設の工賃を指し利用するメンバーの時給の低さを報道やメディアでは指摘されることがあります。
その結果、福祉施設が担ってきた障害のある人の、それこそ一人ひとり違う障害やその多様さ、そして社会構造の問題を、賃金から施設の現場を測ることで逆に「障害者」像を狭めてしまっている気がします。
同時に福祉施設が「居場所である」で収まらない地域から切り離されていた障害のある人の関わり合いの場になっていることも、見えなくなってしまうと感じます。
なぜ施設にしか居場所がなく、そこで収入を得ることが難しく、その背景にある社会構造となった蓄積された問題は何なのか、むしろ今メディアで取り上げて欲しいことはそっちだったりします。
たぶん、というか現場としてメンバーと知り合い関係が深まれば深まるほど直面している問題は、福祉の現場のそれぞれ向き合っているものとも共通した問題へ繋がっていくような直感があります。
もちろん自分が代表をしているリベルテも含め課題がこれまでの福祉施設にない訳ではないし、例えば施設内の関わり合いがスタッフも含め内向的なネガティブな空気として澱むことがあれば、それは決して良くないとも思います。
社内チャットの社内の人が見れる場所で「おそい」とスタッフに言われ、ぼく自身傷ついたこともありました。
数量的な評価やマジョリティが納得する方法でしか、社会福祉の質や評価を言い表せないのだとしたら、その「おそい」に象徴されるように「できない人」があぶり出されてしまうようなことをしてしまう結果になります。
そういう評価主義を福祉サイドから「福祉的な支援の結果です!」と肯定してしまうことでできてしまった社会は、果たして誰にとって生きやすいのか、民間事業者が多く参入していている「福祉業界」の中でNPOを運営している自分としてはとても危ぶんでいるところです。
それってディストピアじゃね?
そういう視点で仕事を考えたとき、この柳町のアトリエのメンバーの仕事や場の雰囲気はとてもユルくて穏やかな時間の流れが葛藤を抱えた人も自然とその緩さに包んでくれるような空気感があり、絶妙な居心地の良さがある。わかりやすい仕事観からは遠く外れているけど、週5日、月に20日もこんな場が開けているのだと思うんです。
ただ何の変哲もない古民家の中を工夫して仕切ったり机をレイアウトしたりしているだけ、あとは人がいて、ちょっと向き合う表現やつくることがあり、雑談や一休みがあり。
メンバーが張り出し誰でも書き込んで良い「縁起のいいダジャレ大募集しています!!」というシートとか、そういうことが人を満たしている何かってあると思うんだよなー。
ということを(この記事を書いてたところで追記もしたけど)SNSでつぶやいたら、横浜は光が丘の団地内にある喫茶カプカプ店長である鈴木励滋さんからコメントとnoteの記事を紹介してもらった。
この記事のトップ画像にあるギャグを書くシートは、あるメンバーがアトリエに自身で張り出しているものです。
彼は多動?で自分の作業スペースから離れ人に話しかけまくる。
しかしその彼のミツバチのように花から花へ、蜜を集め受粉していくようなコミュニケーションがアトリエの雰囲気に風通しを生み出してることも多く、最近それは彼にとって仕事、働いているんだと思うことがありました。
同じように次から次に人に話しかけるコミュニケーションをする人でも(気付いているのか気付いていないのか)注目を浴び自身の緊張感を高めるたり苦しんだりする人もいる。
以前、鈴木励滋さんに話を聴く機会に「“働く”は、“傍にいる人を楽”にする」という話をおっしゃっていた。
ずっとわかったようなつもりだったのだけど、ダジャレを思いついたら書き、人に話しかけて興味なければさっさと自分の作業場に戻り、自分も他の人にも負担感を残さない。
そんな彼の生き方や障害がアトリエでの「働き」という意味で、みんなを楽にそしてなんだかわからないけれど、居心地の良い場所にしてくれている。
なるほどなーと。
彼にしかできない、けど、その彼自身もそれが無理や苦しいのでもなく、拒絶ではない離脱が可能で、そしてそこに働くスタッフが作り出す空気感も、その環境づくりを助けている。
ケアって自然のように深く、理論や体系に位置づけられ難く、しかし、ミツバチのような緻密な無意識が作用し合うような関係のバランスで成り立っているのかも。
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