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負うて抱えて、生きていく
モノに執着しない、そんな人もきっといると思う。
でも、わたしたちは、欲望には勝てない。誰かの持っているものは欲しくなるし、良いなと思うものをつい買ってしまう。なかなかモノが捨てられなくて、家の中がいつのまにかモノにあふれている。
わたしたちは、負うて抱えて生きていく。
二階堂和美さんは、僧侶でもあり、音楽家でもある。ジブリの『かぐや姫の物語』の主題歌が有名だろう。とても素敵な歌をうたう。面白い話をする。新聞のコラムをまとめたこの著書では、いろんなものを抱えた彼女の素直な姿が、そのままにじみ出ている。
毎日、毎週きまって書く、というのは素直に内面をさらけ出すことでもあるから。
仏法にめざめる姿というのは、断捨離とは違う。愚かな自分から抜け出せないことを認めて、全部抱えて生きていく。それをそのまま救ってくださることを有り難く味わわせていただく生き方である。などと、片付かない自分の生活を言い訳にしてこじつけているだけである。なんまんだぶ。p.13
よかった、ニカさん(彼女の愛称)も片付いてない。そして、捨てる、選ぶ、という行為の中にもきっとモノへの執着はある。より少ないものだけで生きる、というのは、その「少ないもの」にこだわって自分にとって本当にいいものだけを探して選びとることだから。少ないぶん、たくさんモノを持つよりも、一つ一つのモノへの執着が強い。
やりたいこと、頼まれたこと、情愛、欲望、そして生老病死という苦の種。前に後ろにずっしりとのしかかる荷物を、負うて抱えて、結局は負うて抱えたつもりになっているだけで、私たちは何も抱えることなどできやしない。阿弥陀さまにお任せするしかないこのいのちを、生かさせていただいている。p.193
ニカさんの音楽には何度も救われている。のびやかに歌う声、きれいで、ときどき可笑しなメロディ。ストレートな思いを歌う、彼女の歌が好きだ。宗教も音楽もどこかその役割は似ている、と彼女は言う。いろんなモノを抱えたわたしたちを許してくれて、こころを解きほぐしてくれる。
いろんなモノに執着する。わたしは信仰のことには詳しくないけれど、あれもこれもと煩悩ばかりのいつもの毎日も、それでもまあいいか、と優しく背中を撫でてくれるような、そんな救われた思いがした。
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