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仕事も家事も育児も完璧にこなす イクメン銀行マーケッターの挑戦

2018年のローソン銀行開業とともに、ATMの販促施策やマーケティング分析に取り組んできた東川さん。スタートから大きなチャレンジの連続でしたが、現在もどの銀行もやったことのない、困難なプロジェクトに挑戦中です。東川さんは何のために、何を目指してチャレンジを続けているのでしょうか。その思いやモチベーションについて聞きました。

ローソン銀行/東川ひがしかわ 友紀とものり
1976年、石川県生まれ。大学卒業後、マーケティング職としてシンクタンク、生命保険会社、不動産会社を経て、2018年にローソン銀行入社。ATMに関する消費者向けマーケティング全般と金融機関向けサービス企画を担当している。


ATMをマーケティングツールに

  東川さんは現在、何を目標として、どんなチャレンジをしているのですか?

金融サービスの提供に関して、ローソン銀行は他のコンビニの銀行より後発なので、入社以来、ローソンの特長を活かしながら利用者を増やすための施策をいろいろと考え、実施してきましたし、今もまさに取り組んでいるところです。

その施策の一貫として、ATMというツールに目をつけました。これまでATMはどの銀行でも現金を入出金したり振り込みをする機能がメインだったのですが、見方を変えるとすごく魅力的なマーケティングツールになるんですよ。

どういうことですか?

  すべてのローソン銀行のATMの年間取引件数はのべ2億件を超えています。ということはのべ2億人が使うツールなんですね。これは見方を変えれば膨大な顧客接点なので、マーケティングツールとして活用しようと戦略を企画して実行してきました。

  コンビニ銀行として、利用者を増やすため、今まで誰もやらなかったATMをマーケティングツールとして活用するというのが東川さんのチャレンジというわけですね。具体的な施策は?

2021年9月からスマホで使えるスタンプカードを作って、お客様にお金の入出金などのATMの利用でPontaポイントを付与するサービスを開始しました。

1年間で40万人が登録

  その結果は?

このようなお得なサービスはローソン銀行だけしか提供していなかったので、お客様にとても好評で、1年間で40万人もの人にスタンプカードを登録していただけました。また、スタンプカードをきっかけに初めてローソン銀行のATMを利用した約1000人のお客様を対象に調査を行ったところ、「これまで他の銀行のATMを使っていたが、ポイントがつくのでローソンにあるATMを利用してみようと思い、実際に使ってみた」という行動変容が見られました。初めて利用した理由としては、回答者の93%が「ポイントがもらえること」を挙げました。また、スタンプカードをきっかけに初めてローソン銀行のATMを利用した新規利用者の1年間の平均利用回数は1人当たり5.6回で、登録したお客様は継続的に利用しているということがわかりました。

  すごいですね。効果抜群じゃないですか?

そうですね。より多くの人にローソン銀行のほかの便利な機能やサービスを知ってもらうきっかけとなったり、ローソンのATMは便利でお得というイメージ向上と継続的な利用者増が期待できると手応えを感じました。

最大のチャレンジ

ただ、課題もあります。現状のATMではPontaカードを読み込めないので、ATMの利用でPontaポイントを貯めるためには、かなり煩雑な手続きを踏まねばなりません。このままではお客様に余計な手間をかけさせてしまい、利用者も伸び悩んでしまいます。

  その解決策は?

ローソン銀行ATMでのPonta会員IDの連携です。つまり、ATM利用の都度、PontaカードをATMに差し込んで読み取ることで、その場でポイント登録が完了し、ローソンで使用できるという仕組みです。これにより、お客様が行うプロセスは、登録では従来の4割程度、ポイントの獲得では半分程度に短縮できます。これが実現できれば、これまで他のコンビニの中にあるATMで入出金していたけれど、簡単にPontaポイントがもらえるならローソンに行ってATMを使おうというお客様がより増えます。当然そのついでに買う物も増えれば、全国のローソンの売り上げ増も期待できます。この、ATMでPontaカードを読み込むためのATMのシステム改修は来年の夏に向けて準備中で、今私が取り組んでいる最大のチャレンジです。

  ATMをマーケティングツールとして利用するというチャレンジの困難な点は?

いろいろあるのですが、まず、スタンプカードサービスによる固定客化では、2020年2月に社内で議論して、効果ありという確証が出たのですが、それなりに開発コストがかかるので、開始までなかなかすぐには調整しきれませんでした。

  今回、それはなぜできたのですか?

実はローソンのデジタルマーケティング部の社員の方に、既存のサービスをベースに、早く安くシステム開発ができる事業者を紹介いただいたおかげで、現在のスタンプカードサービスを開始することができたんです。

もう一つ、このようなATMによる販促関係のプロジェクトは、提携している数多くの金融機関にこの企画に賛同して参加いただくのが重要です。この点でも、ローソン銀行の法人営業のメンバーにかなり助けられました。多くの提携銀行に丁寧に説明し、ご理解をいただけたおかげで、360を超える提携銀行に参加いただけたのです。二つともかなり高いハードルでしたが、皆さんの協力のおかげでクリアできたわけです。

これまで誰もやらなかったことに挑戦したい

  この連載でお話をうかがう人は異口同音に証言していますが、ローソングループは協力的でいいですね。先ほど話していた全国のローソンのATMの改修もかなりハードルが高いと思いますがいかがですか。

おっしゃる通り、全国のローソンの1万3000台を超えるATMを改修しなければならないので、莫大なコストと手間がかかるこのプロジェクトは最大のチャレンジ。だからこそ一番難しいですね。かなりの規模の改修になるので、確かに社内でこの企画を通すのは骨が折れました。

  どうやって通したのですか?

今回実施したATMのスタンプカード施策によって、お客様の反応や効果が精緻なデータで出せたこと。これが上層部を説得する力をもったので、通ったわけです。

  これまでの実績の積み重ねがあったから通せたということですね。そのチャレンジのやりがいや手応えを感じるのはどのような時ですか?

自分自身で仮説を立て、実際にやってみて、期待通りの成果が出た時ですね。これがまた次にやりたいことに繋がりますから。

  チャレンジのモチベーションは?

一番のモチベーションは、これまで誰もやらなかったことをやってみたいという思いですね。ゼロから生み出すことだけでなく、今回のように、すでにある物(ATM)を見方を変えればこんな有効な使い方もできるというのを発見、実験してみたいという思いも大きな原動力になっています。

自由な働き方ができる

  ローソン銀行で働いてみての印象をうかがいたいのですが、東川さんはローソン銀行に入る前は不動産会社で働いていたそうですね。全く違う業界・業種のローソン銀行に入ってどんな印象をもちましたか?

ローソン銀行が開業するに当たって人材募集したタイミングで入社したので、ローソン出身の方や銀行出身の方など、いろいろ業界・業種から多彩な人材が集まっていました。それだけにそれぞれの人が自分の意見を主張するので、印象としてはグツグツ煮えるごった煮の鍋の中のような熱い雰囲気がおもしろく、楽しかったのを覚えています。

  ローソン銀行の好きなところは?

自分がやりたいことを検討するのを誰も止めないし、会社がやろうと判断したことであれば、前例がないチャレンンジングなプロジェクトでもやらせてくれるところですね。

あとは在宅勤務やフレックスなど、自由な働き方ができる点も気に入っています。私は3人の息子の育児もしているので、出社もリモートも、自分のペースで合わせてできるのが一番助かっている点です。

家事と育児が大好きでたまらない

  いわゆるイクメンなんですね。

はい。仕事以外の時間は子育てにほとんど費やしています。上から10歳、9歳、1歳と3人の息子がいるんですが、2019年の12月から1月にかけて育休も取って、子育ては手を抜かずにやっています(笑。

  では休日も子育てですか?

はい。それと掃除、片付け、洗濯、布団干し、食器洗い、ゴミ捨て、息子の保育園の送り、朝食作り、弁当作り、休日の夕食など家事の大半を担当しているので、休日と仕事後は家事と育児で終わりますね。妻の担当は平日の夕食と保育園の迎えと宿題だけという(笑)。

──なぜそうなったのですか?

やらされているわけじゃなくて、家事・育児が好きなんですよ。全然苦じゃないんです。家の中がきれいだと気持ちいいし、洗濯も柔軟剤や干し方にもこだわっています。家事全般は結婚当初からやってます。

──では趣味は家事・育児なんですね。仕事も忙しいと思うのですが、よく両立できますね。

趣味だからとしか言いようがないですね(笑)。

──とはいえ、仕事が忙しくて帰宅時間が遅くなった時は疲れたから嫌だとは思わないんですか?

それが全然思わないんですよ。0時くらいに帰ったとしても家事はできますね。やってから寝ます。

「トイレって汚れないもんだね」

──家事か育児関連でおもしろエピソードがあれば教えてください。

れを言ったら妻に怒られるかもしれませんが、結婚して3、4年くらい経った頃、妻がふと「トイレって汚れないもんだね」とつぶやいたんです。いやいやいや、汚れないんじゃなくて俺が掃除してるんだよと(笑)。結婚して3、4年も気付かなかったという(笑)。

──奥様、天然なのでしょうか(笑)。子育ての楽しいところは?

子どもがかわいいことに尽きますね。こちらがいろいろやるとその都度反応が返ってきますし、何より成長の瞬間を自分の目で見られるのが醍醐味ですよね。

──では生きていて一番幸せを感じる時も……

子育てをしてる時ですね。

ドMなのかも

──プライベートで自分のためにやっていることは?

最近ハマっているのは、筋トレですね。ストレス解消になります。子育てがあるのでジムには行けないんですが、帰宅後、週に3、4回、家事が終わった後、筋トレをしています。

──仕事や家事・子育てで大変なはずなのにストイックですね。

自分からつらいことに突っ込んでいく傾向にあります。ドMなのかもしれないですね(笑)。

──今後やりたいことや夢は?

ローソン銀行は副業OKなので、今暮らしている地域でボランティアをやりたいですね。でもあと20年は子育てをしなきゃいけないので、やれるとしてもその後になるでしょうね。

でもあと20年、子育てを楽しめると思うとうれしくて思わず顔がニヤけてしまいます(笑)。


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