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今日の読書『にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史』



私の実家は(私を除いて)とにもかくにもガチガチの音楽一家、というのは何度かnoteに書いたとおりです。

とくに母はたいへんなビートルズのファンで、今もポール・マッカートニーが来日するとなれば空港で出待ちするという(ガチ恋…)オタク精神を発揮しているのですが、そんな母が「若手の音楽批評で唯一信頼できる」と数年前から太鼓判を押していたのが「みのミュージック」でした。
そんなみのさんが出した「通史」がこの本です。



私は音楽専門ではないにせよ史学科の人間でしたので、「通史」にカテゴライズされる本に求められる水準がいかに高く、そして本・著者双方に向けられる評価の目がいかに厳しいかは理解しているつもりです。
刊行と同時に読みまして、非常に面白かったのでプロアマ問わず音楽をやっている友人などに薦めましたが、「30代前半でこれだけ音楽を聴きつぶしているのは凄まじい」と高い評価を得ていた本です。

この本の前半の肝になっているのは日本国における明治初期の西洋音楽の流入とその受容に関する項です。西洋音楽を歌ったり、奏でたりするためには少なくとも音階(スケール)とリズムの感覚が必要不可欠な訳ですが、西洋とは全く違う音楽のあり方が発達していた日本では、プロの音楽家であってもそれらの受容は一筋縄ではいかなかった苦労が見て取れます。

そのような苦労もありつつ、日本の国民に幅広く西洋音楽を根付かせることを可能にしたのは、学校制度の開始にともない始まった唱歌教育でした。
ただ、レコードも存在しない状況で西洋音楽を「ゼロ」から学ぶためには学校のオルガンと教師の歌声しか方法がない時代です。
私たちが伝統的な日本の音楽になじみがないのと同様に、やはり西洋の音階やリズム、歌詞への抵抗は大きかったようで、唱歌教育の普及には時間がかかっています。



本の後半、我々の耳によくなじむポピュラー音楽のパートにおいて、読者各人が取り上げたいと思う「歴史的名盤」に違いはあるでしょうが、個人的にはよく整理され、網羅されていると感じました。ゲーム音楽やボーカロイドが取り上げられているところにも好感が持てます。



しかしこの上半期はいろいろな人に音楽の世界を教えてもらい、音楽を通じて自分の世界を広げることができたなと思います。人生ではじめてライブハウスに運んだりしたのも良い思い出です。出会いに感謝ですね。




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