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備忘録・1年間のMain Questionを書き留める✍

こんにちは!久々の更新です。
今回は備忘録として、私がアルバイト先の塾で小学6年生対象の社会の授業で探究してきたMain Quesitonを書き出してみました。

1年間の振り返り、今後の授業開発のストックとして、あえてnoteに書き出しています。
問いのレベルは(自分でいうのも憚られますが…)一般的な小学6年生の授業より高いものになっているかと思います。
これは中学受験向けの授業であるから、レベルが高くても足場かけ次第で小学生にも探究できると判断しているからです。

どうぞご笑覧くださいませ☺

1年間で問いかけてきたMain Question

○政治分野

「日本国憲法は○○が××に守らせるルールである!」○○と××に入る言葉は?

・(塾がある)A市に新しくつくるとしたら…理由と共に考えよう!

・国政と地方自治はどこが違う?それはなぜ?

 ○歴史分野

【原始・古代】
・なぜ1万年も昔のことがわかるのか?

・なぜ弥生時代になると、お墓の様子が変わったのか?

・ワカタケル大王の時代の日本はどんな様子だったと予想できるか?

・なぜ7世紀の日本は「天皇中心の国」をめざす必要があったのか?

・なぜ奈良時代の仏像は高級な漆をたくさん使うことができたのか?

・『源氏物語』は紫式部だから書けたのか?紫式部以外でも書けたのか?

【中世】
・「侍」=「○○に××する人」、○○と××に入る言葉は?

・700年続いた武士の時代を支えた仕組みとは?

 →鎌倉幕府は「ご恩と奉公」のせいで滅亡したのか?

・なぜ室町時代は「いまにも伝わっている」のか?

【近世】
・なぜ毛利輝元は吉田郡山城から広島城に引っ越したのか?

・城下町福山はどのような工夫をして町を作ったか?それはなぜか?

・なぜ昆布のとれない富山や沖縄で昆布の消費量が多いのか?

【近代】
・三大中華街はいつ、なぜできた?

・フランス人画家ビゴーは明治時代の日本をどのように見たのか?

・大正デモクラシーは本当に「デモクラシー」だったのか?

・なぜアメリカと中国は原爆ドームが世界遺産になるのに反対したのか?

【現代】
・「男は仕事、女は家事」という考え方が50年ほど前に根付いたのはなぜか?

実用主義的な問い

こうしてみると私の歴史(社会科)授業は実用主義の立場にあるといえます。実用主義とは歴史(社会科の学習内容)を現代社会を読み解くために活用する考え方のことです(渡部,2019)。私のMQの特徴は次の4つにまとめられるでしょう。

①全体的に「なぜ」発問が多い

敢えて「なぜ」に答えさせるようにしています。
社会科教育学者・森分孝治は「なぜ」発問が他の「何」「どのように」発問よりも答えるのが難しいことを指摘しています(森分,1978)。
そして森分(1978)やその批判的継承を試みた渡部(2021)は社会の「なぜ」に答えられることが、主権者育成には必要だと説いています。
私もこの考え方に共感し、小学校で問われることの少ない(と言われている)「なぜ」発問を多く仕掛けてきました。
また、「なぜ」発問が近年の中学受験の考え方にも近いと判断したという理由もあります。

②歴史の授業ながら現代的な問いも問うてきた

歴史を過去の遠い話とするのではなく、現代社会を読み解くためのツールとして歴史を活用するという考えの下で立てた問いです。
昆布の消費量、中華街、原爆ドームへの反対票、性別役割分業論、このあたりが例えば該当するでしょう。

③歴史叙述(教科書記述)を批判的に検討させてきた

歴史叙述(教科書記述)は構築されたものだという考えの下で立てた問いです。
「天皇中心の国づくり」「鎌倉幕府滅亡=元寇がきっかけ説」「今に伝わる室町文化」「大正デモクラシー」という歴史教科書で当たり前に出てくる概念の問い直しを試みました。

④地元・広島県と日本の歴史を接続する問いを立てた

地域の歴史を日本全体の歴史の文脈に位置付けることで、地域史を考える機会を設けることを目指しました。
毛利氏・福山城・原爆ドーム、このあたりがそれに該当するでしょう。

まとめ

中学受験のため、これからを生きる市民を育てるため、この2つを繋ぎ合わせるために私がとった戦略が「なぜ」発問による現代社会理解に向けた社会科授業をすることでした。
「受験対策と市民育成は相反するのではないか」とよく言われますが、実用主義的な問いによる探究をすることで両立ができるのではないでしょうか。
(あくまで私の仮説ではありますが…)

もちろん、これらの問いは粗削りなので完ぺきではありません。
今後の実践のたたき台として、ご意見・ご感想・ご批判をいただきたいと思っています。

【参考文献】
森分孝治(1978)『社会科授業構成の理論と方法』明治図書.
渡部竜也(2019)『Doing History:私たちは歴史で何ができるか』清水書院.
渡部竜也・井手口泰典(2021)『社会科授業づくりの理論と方法―本質的な問いを生かした科学的探求学習』明治図書.


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