たんぱく?タンパク質?蛋白? とにかくややこしい表記の話
農芸化学会誌の2021年No.1の「巻頭言」にて、農研機構の山本和貴先生が『「蛋白質の蛋白との違い」を間違っていた』と書かれています。
山本先生といえば、学会で何度もお見かけしていました。学術発表などで鋭い質問をされる先生、という印象がありました。その先生が間違って理解されていたこともあるのか、ということで個人的に衝撃を受けています。
全文はオンライン公開されていますので、ぜひご覧ください。
https://katosei.jsbba.or.jp/download_pdf.php?aid=1383
この中で山本先生は
蛋白は,卵白のことである
と述べられています。「植物性たん白」は「植物性蛋白質」じゃないんですか、というご指摘ですね。
ところが、臨床の分野では「タンパク尿」という言葉が登場します。先のご指摘の通りならば、尿にタンパク(=卵白)が出ることはありませんから、「蛋白質尿」じゃないの、ということになりますね。
そうすると、日本臨床内科医会の表記は間違っているのか、というとそうではないと私は思います。「タンパク尿」という言葉で、ひとつの共通した症状をみんなが認識できるのであれば、それは言葉としての意味を成しているのではないでしょうか。
一方で、「タンパク」や「タンパク質」の表記が乱立していいのか、というと、それもやはり違うと思っています。農芸化学ではこう、医学ではこう、といった業界別のルールになってしまっていては、分野を跨いだ研究などがやりにくくなるためです。新しい発見というのは、学問領域を跨いだところにあったりすることもあるので、その芽を積んでしまうのも良くないと。
それこそ、こういった問題こそ「日本学術会議」などが積極的に関わってくれればなあ、と思うんですが、私のような泡沫技術者はnoteで問題提起させていただくので精一杯です、というところで今日のお話でした。