#56 「エピソード記憶」を活用しよう
あなたは、見覚えのある景色などを見るなど、何かの拍子に昔の記憶がよみがえってくることはありませんか。
私は、マラソン大会中に、突然、合唱部で外周走ってた頃の感覚や清々しい気持ちを思いだしたことがあります。
これを「エピソード記憶」と言います。
このエピソード記憶、実は大人になってから活用すると効率よく色んなことを学べるんです。
今回は、「記憶」に関する話をします。
「最近、物忘れがひどくなったな…」と思う人は是非読んでみてください。
1.2種類の記憶
記憶には2種類あります。
✓ エピソード記憶
✓ 意味記憶
(1) エピソード記憶
体験を通して何かを覚えることです。
例えば、海外旅行に行った時のことや、ライブに行った時の記憶はエピソード記憶です。
特徴は「頑張って覚えよう」としなくても、自然に覚えられることです。
例えば大好きなアーティストのライブは、何年も前の話でも、その時の思い出が鮮明に頭の中に浮かんできたりします。
エピソード記憶は覚えやすいだけでなく忘れにくいのも特徴です。
(2) 意味記憶
意味記憶は、いわゆる暗記です。
テスト前に歴史の年号を覚えたり、漢字を覚えるのは意味記憶です。
意味記憶は覚えようと頑張らないと覚えられないのが特徴です。
1867年に大政奉還があったという事を覚えようとしないと覚えられません。
また、思い出したくても思い出せないことがあるのも特徴です。
テスト前にあんなに勉強したのにテストの時はなぜか思い出せず、悔しい思いをした方も多いのではないでしょうか。
これは意味記憶として覚えていたからなのです。
2.意味記憶は年齢とともに弱まる
意味記憶は10歳を過ぎると段々と弱くなります。
逆に、それ以降はエピソード記憶が段々と優勢になるんです。
例えば子供は百人一首を全部覚えてしまったり、マンガは何巻のどこに何が書いてあるか全部覚えていたりもします。
でも、それを大人がやろうとしても難しいです。
大人が百人一首を一から全部暗記するのは、なかなか骨が折れますよね。
中学校くらいまでは、歴史でも英語でも教科書を丸暗記してしまうというような勉強法もできますが、それを大人になってからやろうとしても難しくなってしまうのです。
ですので、子供の頃と同じ方法で覚えようとすると、覚えるのに時間がかかったり、覚えられなかったりするわけです。
「私も記憶力が落ちたな…」とショックを受ける必要はありません。
誰しもが同じ状況になっていくんです。
このような理由から、大人はエピソード記憶を活用する必要があります。
3.エピソード記憶の特徴は
自分自身を形作る、その人にとって特に重要な意味がある記憶のことです。
エピソード記憶には2つの特徴があります。
✓ 意味づけでイメージが変化する
✓ 記憶力アップに役立つ
(1) 意味づけでイメージが変化する
過去の出来事は、記憶を思い起こす状況やタイミングによって、思い出す内容や記憶に付随するイメージが変化します。
例えば、部活の特訓で、倒れるまでランニングを命じられるなど、毎日練習に行くのが嫌で仕方が無かったという記憶。
しかし大人になってから、同僚と語りながら思い出すと、「根性や忍耐力が養われ、乗り越えられないものはないという感覚が培われたのは、あの練習のおかげ」というように、肯定的な出来事として思い出すように変化することがあります。
これは記憶をその時々に応じて「意味づけし直しているため」です。
「いつ」思い出し、「誰と」「何のために」話すかで、意味づけが変わるので、エピソードはプラスにもマイナスにも変わります。
他にも、話し始めは否定的にしか捉えられなかった体験でも、心の中を整理することで、肯定的な捉え方ができるようになることがあります。
(2) 記憶力アップに役立つ
勉強などで一生懸命覚えようとして得た記憶(=「意味記憶」)より、体験によって得た記憶(=「エピソード記憶」)の方が、脳の中により長く残りやすいという特徴があります。
いわゆる「丸暗記」より、体系化して事例と結び付けた学習や、視覚イメージや、体を動かすなどの学習方法が、記憶力アップにつながります。
4.エピソード記憶の活用法
具体的な、エピソード記憶の活用法は以下の3点です。
✓ 体験を通して学ぶ
✓ 学んだことを使う
✓ 学んだことを人に話す
(1) 体験を通して学ぶ
これは色々な場面がありますが、例えばバスケットボールのルールを学ぶ場合に、教本を読み込んで覚えるのは意味記憶、実際にバスケットをしながら「これはファウル」と覚えていくのはエピソード記憶です。
体験を通して学ぶと楽しく記憶に残りやすいのがいいですね。
(2) 学んだことを使う
例えば、英単語帳を暗記しようとするだけでは意味記憶になるので、なかなか簡単ではありません。
しかし、習った単語をすぐに友人との会話で使ってみます。
すると、「こうやって使うんだな」というのが分かりますし、思い出す時も「そういえばあの時3人で話した時に使った単語だな」と思い出せます。
テスト前であれば友人とクイズを出し合うのも良いかも知れません。
そうすれば、頭に入れた情報を使うことになりますからね。
このように、意味記憶として覚えたことも、実際に使うことでエピソード記憶として覚えることができます。
(3) 学んだことを人に話す
例えばあなたがテレビをぼーっと見て内容を分かったつもりになったとしても、実は後から自由に使える記憶にはなっていません。
テレビで何をやっていたのかもうっすらとしか覚えていなかったりします。
しかし、誰かに番組の内容を話そうと思ってテレビを観ると話は別です。
次の日職場で話そうと思えば、かなりの精度で内容を伝えられます。
人に話すことを前提として見ているので、脳が「これは重要な情報」として捉えてくれます。
5.まとめ
いかがですか?
年を重ねると「物忘れが激しくなっていく・・・」と思いがちですが、それは昔とは得意な記憶方法が変わっているからです。
10歳を過ぎてからは単純な暗記の意味記憶ではなく、体験を通したエピソード記憶に切り替える必要があるのです。
アウトプットが大事、とよく言われますが、記憶を定着させるためには必要不可欠なことです。
是非、やれることからやってみてくださいね。
今回はこれで終わりにします。
ではまた。