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ソフトバンクのAI投資:米国一般の注目度と評価


 ソフトバンク・グループ・インターナショナルの元社長兼CFOのアロック・サマ氏を迎えてのBloomberg Technologyのコンテンツです。ソフトバンクのOpenAIへの500億ドルの出資話やソフトバンクのVision Fund、そして、孫正義氏の辿った道程や将来のビジョンなどを交えながらディスカッションが行われています。アロック・サマ氏は、この夏、ソフトバンク・グループに在籍していた期間に経験した数々の投資案件を題材として、その舞台裏を紹介する書籍を執筆し出版しています。アメリカの一般の人が見聞きして知っているソフトバンクと日本人のそれとは、やはり捉え方が違うことが改めて伺うことのできるインタビューでした。
 尚、インタビューの中で言及されていますが、以下が同氏執筆の書籍です。孫正義氏とソフトバンク・グループでの体験を題材とした物語とのことです。

(※ アフェリエイトではありません)




(1)インタビュー


[エド・ラドロー](Bloomberg)
 
本を書き終えて出版されたところで、改めて「ソフトバンクとは何か?」という質問から始めたいと思います。

[アロク・サマ](ウォーバーグ・ピンカス)
 お招きいただき、ありがとうございます。ここに来られて嬉しいです。ソフトバンクとは何か、ですよね。

[エド・ラドロー](Bloomberg)
 本を書かれたのでよくご存じかと思います。

[アロク・サマ](ウォーバーグ・ピンカス)
 ソフトバンクという名前自体は、ソフトウェアの銀行のような意味合いで、もともとはマイクロソフトのソフトウェアを扱うソフトウェア・ディストリビューターとして、孫正義さんの原点となるビジネスから来ています。しかし、ソフトバンクは本質的に孫正義さんそのものであり、彼と一緒に仕事をする機会があったことは、私の人生において素晴らしい特権だったと感じています。肩書きはさておき、私の役割は一言で言えば「ディールメーカー」といったところです。彼について特に強調したいのは、真の意味で未来を見据えた人物だということです。「ビジョナリーな天才」という言葉はよく使われますが、彼はそれを何度も証明してきました。

[エド・ラドロー](Bloomberg)
 ソフトバンクの仕組みは興味深いものですよね。ソフトバンクはコングロマリットであり、その中に「Vision Fund」があります。「Vision Fund 1」と「Vision Fund 2」には、それぞれ投資委員会があって、そこで意思決定が行われます。ただ、最終的には多くの場合、孫正義氏が直感的な判断で投資を決めることが多い、というのが現実だと思います。このことは、あなたが辿り着いた結論と同じですか?

[アロク・サマ](ウォーバーグ・ピンカス)
 答えはイエスですが、本能的というだけではありませんね。そして、少なくとも私にとって、ソフトバンクは孫正義さんそのものです。ソフトバンクの際立った特徴は、大きな賭けを見事に的中させることにあります。たとえば、WeWorkのような話は面白く語られることが多いですが、ARMのような成功例には映画化されるほどの注目は集まりませんが、それも素晴らしい成功物語なんです。

 ソフトバンクの日本事業は、アメリカではあまり知られていないし、アメリカの投資家やオーディエンスに馴染みがないのも無理はありませんが、これもまた注目すべき成功例なのです。
 多くの人は、孫さんが2006年から2007年にかけて復活したのはアリババのおかげだと思っています。確かにアリババは素晴らしい投資でしたが、ソフトバンクの日本事業、つまり携帯電話事業も重要な成功でした。当時、Vodafoneはその事業を手放したがっていて、孫さんに事業を引き渡すために資金を貸し付けたほどです。そして、彼はスティーブ・ジョブズと握手一つでスマートフォンの独占販売契約を結び、その未来を予見していました。孫さんはこうした大きな賭けを繰り返してきました。
 ちなみに、Vodafone日本事業のソフトバンク買収によって孫さんが得た利益は、時価ベースで400億ドル規模と言われています。そしてARMに関しては、1000億ドル規模の利益が生まれています。彼がこうした大きな賭けにおいて、驚くほどの成功を収めていることに間違いありません。

[キャロライン・ハイド](Bloomberg)
 ソフトバンクには、これまで大成功もあれば、大きな失敗もありました。それがベンチャーキャピタルのやり方だと思います。大きく賭けて、うまくいくものもあれば、失敗するものもある。WeWorkやイギリスのImprobable、そしてひどい結果となったWag!という犬の散歩サービスなど、いくつかの案件に大量の資金投入が行われました。それらの失敗を踏まえ、今、ソフトバンクがOpenAIに5億ドルを投入するかもしれないという話が出ていますが、なぜ今このタイミングでお金をばらまいている(throwing money)ことが正しい選択と言えるのでしょうか?

[アロク・サマ](ウォーバーグ・ピンカス)
 「お金をばらまいている」という表現は、違うように思います。孫さんがAIに夢中になっていることを忘れてはいけません。私が彼と初めて知り合った2014年の頃から、彼はこのテーマに強い関心を抱いていました。このことは私の本でも書いていますが、東京の自宅のベランダで、彼がAIやシンギュラリティについて執拗に話していました。そして、それが技術的な観点でどういった意味を持つのかについても語っていました。正直、その時私はあまり真剣に受け止めていませんでした。
 しかし、今では彼の考えはとてもクリアになっています。今年の6月の株主総会でも、これまでのことはすべて「準備段階」に過ぎないと言い切りました。彼は大きな動きを起こす準備が整っているのです。これは少し長い答え方かもしれませんが、ソフトバンクのスケールを見ればわかるように、確実に今の状態で300億ドル以上、おそらく400億ドル近くの現金を持っているので、OpenAIに500億円を投資することは、ソフトバンクの基準ではそれほど大きな賭けではないと思います。むしろ、ゲームに参加していることが重要なんです。
 私は、孫さんが次にどんな大きなアクションをするか、待っているのですが、彼のスタイルから考えると、間違いなく大きなものになると思います。それが彼のやり方ですから。

[キャロライン・ハイド](Bloomberg)
 このことについて、どんなビジョンがあるのかを教えていただけますか?私たちもAIの可能性については聞いていますし、それがこの取引の大きな目標だと考えています。でも、最終的にはどうなるのでしょうか?彼がソフトバンクとして購入することもあれば、VC部門として購入することもありますが、その違いがどう影響するのかも気になります。

[アロク・サマ](ウォーバーグ・ピンカス)
 最初のビジョン・ファンドは、第三者の資金、特に中東からの資金による投資が大部分を占めていたという点で真のファンドでした。しかし、それ以降のビジョン・ファンドはソフトバンクのバランスシート上にあります。だから、ソフトバンクとベンチャーキャピタルマネジメントの微妙な違いについて話すのは、この文脈ではそれほど意味がないと思います。たとえば、ソフトバンクがGraphcoreを買収したとき、それは戦略的な取引だと理解しています。但し、孫さんがそれをARMとの連携でどう活用するのかは、まだ明らかになっていません。
 ソフトバンクから離れてもう5年経っているので、内部事情はわかりませんが、私が見ている限り、まず注目すべきはARMです。私は株式分析の専門家ではないので評価についてはコメントできませんが、AIがネットワークのエッジに移行していく中で、ARMは非常に良いポジションにいると感じています。ARMはチップ設計のブループリントを提供し、その省エネ効率の高い設計が強みです。そして、エッジコンピューティングの領域、つまりスマートフォンや自動運転車などにおけるAIの応用が進むと、この省エネ性が非常に重要になります。
 Graphcoreの買収も、ARMがNVIDIAに対抗する意図を示していると思います。特にNVIDIAがデータセンターでの優位性を持っている分野において、ARMもそこに挑戦しようとしており、この分野でたくさんのことが進んでいます。
 AIに関する私の見解ですが、現在、Warburg Pincus(※ 米国のプライベートエクイティ投資会社)でシニアアドバイザーとして活動している中で感じるのは、彼らの目に映っているのはポートフォリオに影響を与えるAIです。AI導入の影響、たとえば利益率の向上などは非常に現実的なものです。NVIDIAのジェンスン・フアンも、最近の決算発表でこの点に言及しており、AMDがAIエージェントを導入して顧客サービスコストを30%削減した例を挙げていました。このような具体的な効果が、AIの現実性を物語っています。

[エド・ラドロー](Bloomberg)
 最後に一つお聞きしたいのですが、ソフトバンクは早くからNVIDIAに投資していましたが、早い段階で撤退しました。今度のOpenAIに対する5億ドルの投資は、それほど大きくは見えないかもしれませんが、あなたが「次の大きな賭けになる」と言った理由を教えてください。AIがどのように進化していくにせよ、最終的にソフトバンクが、ここで話したAIシナリオの一部として残ると、どうして確信しているのでしょうか?

[アロク・サマ](ウォーバーグ・ピンカス)
 彼の実績が物語っているように、孫さんは何度も大きな成功を収めてきました。たとえば、スマートフォンに関しても、少なくとも2〜3年先を見据えていました。次にどんな大きな動きを見せるのかはわかりませんが、それが大きなものであることは確かです。そして、彼自身も次のステップがAIに関わるものであると明言しています。
 エネルギー分野も可能性があると考えています。ソフトバンクはエネルギー分野にも注力していて、特にソーラーパワーでは業界をリードする存在です。ご存知のように、データセンターの建設には膨大なエネルギーが必要で、エネルギーは大きなボトルネックになっています。ですから、次の大きな一手がこの分野に関係する可能性も十分にあると思います。
 



(2)オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご視聴になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

Bloomberg Technologyより
(Original Published date : 2024/10/02 EST)

[出演]
 ウォーバーグ・ピンカス
  アロク・サマ(Alok Sama)
  シニアアドバイザー
  元ソフトバンク・グループ・インターナショナルのプレジデント&CFO

 Bloomberg
  キャロライン・ハイド(Caroline Hyde)
  エド・ラドロー(Ed Ludlow)



以上です。


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だうじょん


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