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パロアルトネットワークス:2024年度Q2決算直前 - 只今高値圏。押し目があったら系銘柄
この記事投稿から約1週間後となる現地 2024年2月20日(火)、米国株式市場のクローズ後に、パロアルトネットワークス(Palo Alto Networks, Inc.)の2024年Q2(2023年11月~2024年01月)の決算発表が予定されています。 最近では、Cloudflare(NET)やFortinet(FTNT)の直近の決算が市場に好感されましたが、パロアルトネットワークスの決算の後も引き続き、Zscaler(ZS)、SentinelOne(S)、Akamai(AKAM)などのサイバーセキュリティ銘柄が立て続けに決算を迎えます。 昨年、米国証券取引委員会が制定したサイバーセキュリティ開示規則が2023年12月18日より施行され、セキュリティインシデントの開示義務および監督責任が全ての米国上場企業に課せられることになり、この様な追い風を受けているサイバーセキュリティ銘柄ですが、パロアルトネットワークスの株価も、前回決算(2024年度Q1)以来、最高値を更新しながら、堅調に推移し続けています。 少々、マーケットで買われ過ぎの懸念もある中ですが、今回の決算も多くの方々が大変注目されているのではないかと思います。
1. パロアルトネットワークスについて
パロアルトネットワークスは、サイバーセキュリティ業界をリードする主要な企業の1社です。同社の打ち出した次世代型ファイアウォールの他、クラウドセキュリティやエンドポイントセキュリティ、AIによる脅威検知やセキュリティオーケストレーション等、幅広い機能とプロダクトによる統合セキュリティプラットフォームを全世界で展開しています。
次世代ファイアウォールやネットワークセキュリティを対象とするSTRATA、クラウドセキュリティの新たな形を提案するPRISMA、そして、AIや高度なデータ分析やセキュリティオペレーションを包括的に支援するCORTEXといったソリューションブランドを打ち出して、企業の直面するサイバー攻撃の脅威に対抗する革新的な技術とサービスを提供しています。
蛇足ですが、現在のCEO Nikesh Arora氏は、SBグループの元副社長として、殆どの方が名前を耳にしたことがある人物です。
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2. 2024年度 Q1決算の振り返り
2023年11月15日に発表された2024年度Q1決算(2023年8月~10月期)を振り返ってみます。
(1)2024年度 Q1決算の主要指標
売上高は18.8億ドルで、前年同期比20%の増加
製品売上は、3%増加
サブスクリプション収入は、9.88億ドルで29%の増加
サポート収入は、5.49億ドルで17%の増加
サービス収入合計は、25%の増加
ビリング総額(期間請求総額)は、20.2億ドルで16%増加
繰延収益合計は94億ドルで、32%の増加
残存履行義務(RPO)は104億ドルで、26%の増加
次世代セキュリティ分野のARR(年間経常収益)が初めて30億ドルを超え、53%の増加
売上総利益率は、78%で、前年同期比で370bp上昇
サプライチェーン環境の正常化に伴い、プロダクトマージンが前年同期比で改善
営業利益率は、売上総利益率の向上と営業ラインの効率化により、760bp拡大。中期目標となる営業効率の進捗に満足。
サービスの利益率は、新サービスの規模拡大により、78%に改善
非GAAPベースの1株当たり利益は、ガイダンスを大幅に上回る66%の伸長。これは、主に非GAAPベースの営業利益率が大幅に改善したことによるもの。
(2)財務とキャッシュフロー
現金同等物および投資は69億ドル
営業キャッシュ・フローは、15.26億ドル、調整後フリー・キャッシュ・フローは14.89億ドル
調整後フリー・キャッシュ・フローは、30億ドルでフリー・キャッシュ・フロー・マージンは41%
これらキャッシュフローは、Q1の好調な現金回収が主因となる
(3)自社株買いについて
自社株買いを約30万株、総額6,700万ドルでQ1に実施。
3. Q1決算:主要指標
Q1決算の実績とアナリスト予測の星取表です。
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(1)Q1決算ヘッドライン
2024年度Q1は、8月に発表された3カ年計画の最初の四半期であり、以下のような進展があった。
当社の幅広いポートフォリオは、顧客企業の複数の戦略要件に対応ができ、また、次世代セキュリティ・ポートフォリオへの関心は引き続き高く、機会の多様性が拡がっている。収益向上や堅調なフリー・キャッシュ・フローを踏まえ、成長見通しに対して総じて強気であるとの見解を示した。
① 市場環境
イスラエルとウクライナでの地政学的な不安定な環境の中で力強い業績を達成
サプライチェーンの課題は正常化が進み、受注残が出荷され、製品の成長も正常化して強さが続いている
マクロ経済面では、高金利の長期化の中で、ビジネス慣行は適応と調整を続けている
高い金利が長期化しており、顧客のコスト意識が高くなっている。PANWは年間課金プランやPANFS(Palo Alto Networks Financial Service)によるファイナンスやパートナー経由のファイナンスなどのオプション提供を通じて、顧客のコスト懸念に対して応えている
② サイバーセキュリティのリスク状況について
大規模な敵対的なサイバーセキュリティ攻撃が多く顕在化しており、この状況がすぐに収まるとは考えていない。ランサムウェア攻撃は、その頻度と深刻さを増している
セキュリティリスクの脅威が激化する中、全ての戦略的顧客への更なるサポートを目的として、迅速なUnit 42のインシデントレスポンスサービスを無償で提供することを発表した
③ 規制環境の変化
米国の上場企業は、米国証券取引委員会(SEC)のサイバーセキュリティ開示規則への遵法とそれに伴う監督責任の強化に直面している。(2023年12月18日より順次義務化)[参考:PwCウェブサイトへ]
④ 戦略的投資
10月31日にDig Security社を約2.3億ドルの現金で買収することを発表。また、11月6日には、Talon Cyber Security社を4.3億ドルで買収することを発表。両件共に2024年度Q2の買収完了の見込み
Dig Security社の買収は、Generative AIとPrisma Cloudのデータ・セキュリティーの強化のため、また、Talon Cyber Security社の買収は、エンタープライズブラウザテクノロジーをSASEに統合しセキュリティとデータ保護強化を図るため
引き続き、プロダクトおよびエンジニアリングへの投資、販売力強化、エコシステムおよび市場開拓組織の支援など、トップラインの成長期待を支えるための大規模な投資を継続している
⑤ プロダクト
ネットワーク・セキュリティ、SASE、Cortexの3つのプラットフォームすべてで、強力にイノベーションを推進した。ネットワーク・セキュリティでは、AIを活用したクラウドマネージャーを発表し、ゼロ・トラストへの統合とプラットフォーム化を継続。SASEでは、買収したTalon Cyber Security社のエンタープライズブラウザテクノロジーを統合し、他のSASEベンダーの対応できていない、デバイスや場所を問わない全てのユーザーに対する強固なセキュリティとデータ保護機能を提供。また、Cortex XSIAM 2.0を発表し、顧客独自のAI・機械学習モデルの統合が可能となり、独自ユースケースによる不正検知、脅威ハンティング、調査、インシデント管理、データの可視化などが実現可能となった
⑥ 大型案件の事例
某連邦政府機関:2,500万ドルの追加契約。ネットワーク・セキュリティの強化、Cortex XDRとPrisma Accessを追加
大手グローバルSaaSプロバイダー:1,800万ドルのPrisma Cloudの契約を締結
大規模な某教育機関:1,500万ドルの契約を締結し、XSIAM、Prisma Cloud、ネットワーク・セキュリティを強化
某国政府機関:長いセールスサイクルを経て、2,800万ドルのSASEとXSIAMの契約を締結
(参考)現在の株価チャート:現在のパロアルトネットワークスの株価チャートはこちら(↓)をクリック。(Powered by TradingView)
(2)業績概観
次に、Q1で発表された売上・利益とEPS・PBR、そして、地域別・セグメント別の売上推移について見て行きます。
(a)売上と利益の推移
過去27ヶ月に渡っての売上と利益に関する主要指標の推移です。特徴的なトレンドを紹介します。総じて、売上高、営業利益、EBITDA、純利益は増加傾向にあり、会社の業績は良好に推移していると言えます。利益率には季節性やその他の要因による変動が見られますが、全体の収益性は向上している模様です。ただし、四半期ごとに利益率の上下が伺えます。
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2022年度Q4に黒字転換して以来、四半期ごとに上下の変化が認められるも、総じて、売上、利益ともに成長しており、収益性の指標も改善傾向にあります。ファイアウォール・アプライアンスの市場成長率は、0%~5%に留まり需要減速気味との見方があり、売上成長率もここに来て前年同期比で20%を少し超える程度に押さえられている状況が伺えます。一方で、ビジネスモデルは、クラウドサービスのサブスクリプションモデルへの転換が進んでおり、著しく収益性が改善傾向にあります。
(b)EPSとPER
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(c)セグメント別 売上・売上総利益
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売上構成比については、プロダクトが減少している一方で、サブスクリプションとサポートが増加している。売上原価については、プロダクトが減少し、サブスクリプションとサポートが増加しています。サブスクリプションの売上は、大幅増加となっており、収益においてサブスクリプションが果たす役割が大きくなっており、全体での収益性が向上しています。
(d)地域別 売上・売上総利益
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各リージョン共に成長していますが、米国市場に大きく依存していることが分かります。
(3)2024年度 Q2および通期のガイダンス
パロアルトネットワークスは、2024年Q2決算および通期に向けてのガイダンスを発表しています。
① 2024年度Q2のガイダンス
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ビリング(顧客に請求した請求額の総和)は、23.5億ドルから23.85億ドルの範囲で、15%から18%の増加を見込む
売上高は19.55億ドルから19.85億ドルの範囲で、18%から20%の増加を見込む
非GAAPベースのEPSは1株当たり1.29ドルから1.31ドルの範囲で、23%から25%の増加を見込む
非GAAPベースの税率は、将来の税法改正の結果次第だが、22%にとどまると予想
純利息およびその他の利益は5,500万ドルから6,000万ドルを見込む
希薄化後発行済み株式数は3億3,900万株から3億4,200万株を予想
資本支出は4,000万ドルから4,500万ドルを見込む
② 2024年度通期のガイダンス
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ビリングは107億ドルから108億ドルの範囲で、16%から17%の増加を見込む
NGS ARR(Next-Generation Security Annualized Recurring Revenue)は39.5億ドルから40億ドルの範囲で、34%から35%の増加を見込む
売上高は81.5億ドルから82億ドルの範囲で、18%から19%の増加を見込む
EPSは1株当たり5.40ドルから5.53 ドルの範囲
営業利益率は26%から26.5%の範囲となり、2023年度比で190bpから240bp増加すると予想
非GAAPベースのEPSは5.40ドルから5.53ドルの範囲で、22%から25%の増加を見込む
調整後フリー・キャッシュ・フロー・マージンは37%から38%になると予想
非GAAPベースの税率は、将来の税法改正の結果次第ではあるが、通期でも22%にとどまると予想
現金税金は2.3億ドルから2.8億ドルの範囲になると予想
2024年度の希薄化後発行済み株式数は3億3,800万株から3億4,300万株を見込む
2024年度の資本支出は1.75億ドルから1.85億ドル
4. パロアルトネットワークスのソリューションについて
パロアルトネットワークスは、多岐にわたるソリューションを提供しています。サイバーセキュリティ関連プロダクトは、非常に多岐に渡る他、概念的かつシンプルに説明するのは困難な部類のソリューションです。 この場では、簡単なコメントをつけて、パロアルトネットワークスが提供するソリューションを紹介します。同社を理解する上で役に立てばと思います。
(1)プロダクトおよびクラウドサービス
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(2)プロフェッショナルサービス及びサポートサービス
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(3)競合他社について
幅広いプロダクトとサービスを展開するパロアルトネットワークスですが、パロアルトネットワークスは、競合他社について以下の4つに区分しています。これら4つの各カテゴリ別に競合企業名をピックアップして紹介します。(非上場企業も含みます)
① 自社プロダクトにセキュリティ機能を組み込む大企業、またはセキュリティベンダーを買収した、あるいは買収する可能性のある、競争力のあるソリューションを市場に投入するための技術的・資金的リソースを有する企業
>>> Cisco Systems、Microsoft、他
② 様々なセキュリティプロダクトを展開する独立系セキュリティベンダー
>>> Check Point Software Technologies、Fortinet、CrowdStrike、Juniper、Zscaler、FireEye、Symantec(Broadcom)、他
③ プライベートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドのクラウドセキュリティソリューションを提供するパブリッククラウドベンダーや新興企業
>>> AWS、Google Cloud、Cloudflare、Sumo Logic、他
④ セキュリティの幅広い裾野の幾つかの分野で新興ソリューションを提供する新興企業やポイントプロダクトベンダー
>>> Orca Security、Wiz、その他、有象無象存在しています。
5. パロアルトネットワークスを構成銘柄とする米国ETF
最後に、パロアルトネットワークスを個別株として購入するのはちょっと、という方には、ETFという選択肢があります。パロアルトネットワークスを構成銘柄とする米国ETFの数は、260以上ありますが下表には、国内主要な証券会社で購入できる時価総額の大きなETFをピックアップしています。
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これらの他、組入比率の高いETFとしては、組入れ比率6.28%で時価総額0.47億ドルのBUG(Global X Cybersecurity ETF)が国内の証券会社で購入が可能な良く知られた存在です。
御礼
最後までお読み頂きまして誠に有難うございます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
だうじょん
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