詩 「忘れじの彩葉語り 」
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琵琶湖畔 伊崎不動 棹飛堂にて
詩 三部作
たれも居ない参道を歩く
その道程に
粛として人知れず咲く
露草を見た
名前を知らないその花は
蒼く美しく繊細で
まるで泣いているように思えた
いつかの日かの 君が泣いた顔
遠い想い出が 蒼く染まる
忘れじの彩葉語り__
傷つけ合った日々は
もう戻ることはなくても
今もなお
あなたの愛は
変わることはないのだろう
釣鐘水仙の微睡みが語りかける
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天高く青い若竹が伸びてゆく
笹の鳴る音は更紗と
木漏れ日の陰が揺れ動く
地上より
まっすぐに天を目指す姿を
眺めていると
「節目節目を乗り越えてきた
勁さがあるのだ__ 」
頭上から
たれかの声が聴こえる
木漏れ日の陰に
天狗が嗤う幻を見た
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断崖絶壁に
ひどく孤独に迫り出した
一本の棹がある
空と淡海の碧に
ただ白さだけが際立って
夢の彼方へ向かっている
古の里には
水信仰が伝わる
自らを捨身し湖水に投じ
恵みの水へと帰依すると云ふ
それは
生きることへの感謝に
ほかならない
風に吹かれても
雨に濡れても
動じることなく
その屹立した佇まいを
夢の彼方に差し伸べていた
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photograph by Seiji Lakefield
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