8月納涼歌舞伎3部・狐花
第三部
狐花 葉不見冥府路行
巷で話題の京極夏彦先生の新作小説を先生自ら戯曲にして発売の翌月に上演しちゃうという試み
個人的な感想としては
これを歌舞伎座で歌舞伎としてやる意味は??
と思ってしまいました。
いや意義としては
1.京極夏彦先生の世界観のキャラクター像と歌舞伎役者の演じる世界観の親和性
特にあの耽美で幻想的な世界観のキャラクターとして七之助くんはこれ以上ないくらい相性がいいとは思ったし、他の俳優陣も含めて素晴らしい
2.歌舞伎座という空間と京極ワールドの親和性
3.松竹が本気出した舞台美術
圧倒的な話題性と、大入りの観客がある程度予想できる
からこそ潤沢予算が取れたんだなぁとおもってしまう美しい舞台美術 連日大入りで松竹としても万々歳!
という点でほんとうにぴったりだと思った
俳優はもれなくほんとうに素敵だし萩之介をこんなに説得力をもったビジュアルで演じられるのは七之助くん以上にはない気がするし、米吉くん・新悟くん・虎之介くんの女子トリオはサイコーだし
染五郎くんはどのシーンも完璧に美しかった!かっこいい←贔屓w
ただしこれが初京極夏彦ワールドなイチ歌舞伎ファンとしてはちょっと馴染めなかったかな
■苦手と感じた要因
1.歌舞伎と銘打って歌舞伎座でやっているものの、会話劇でしかなく単なるストレートプレイだった
歌舞伎らしい見得や外連味がほぼ皆無
殺陣もツケも少なくて見栄もなく名題下さんのトンボもなくまっくらな舞台で俳優が3時間15分ひたすら会話しているだけ
2.説明ゼリフが多くて都合よく進んでいくので入り込めない
これについては完全に受け手のこちらが悪くて、説明調のセリフは京極夏彦先生の持ち味なんだなというのがいろいろ検索しているうちにわかってきたのですが
ぶっちゃけ苦手でした…キャラが出てきて真相をどんどん独白していくのが苦手
というところ
これが発表されたときに僕てっきりFF歌舞伎やナウシカ歌舞伎や刀剣歌舞伎やルパン歌舞伎みたいな
異種世界のものを歌舞伎に落とし込んで結果めちゃくちゃ面白くなる
っていうのが見られると思ったんですよね
もちろんこれ 京極先生自身が脚本を書いたからこそここまで話題になっているんだと思うんだけど
僕はこれ歌舞伎である意味がうすいかなとおもったしましてや歌舞伎座である必要もないなとおもいました
これは勝手な妄想でしかないし、京極先生の脚本をdisるつもりはイチミリもないのだけれど
原作を京極先生が書くだけにとどめて
新作歌舞伎を書き慣れている脚本家の方が脚本にしたら
あるいは説明ゼリフは役者がとうとうと語るのではなく浄瑠璃にしたら
あるいはセリフで表現するところをもっと見得や舞踊にしたら
あるいは歌舞伎ならではの舞台機構や演出を入れたら
劇伴も長唄やだしたりしても良かったんじゃないかなぁ
だって歌舞伎ってなんでもありだと思うもの
そしたらあるいはもっと京極夏彦・狐花×歌舞伎っていう世界は広がったと思うんだよね
刀剣歌舞伎(に限らず上であげたような作品はだけど)はもとがゲームだけど舞踊も殺陣も浄瑠璃も入ってて
それを初めて歌舞伎にふれる原作ファンも楽しんでたと思うんだよね
狐花ももっともっと歌舞伎とコラボレートしてもよかったんじゃないかなと思う
もちろん京極夏彦ファンのみなさんはきっと
あの世界を素晴らしい衣装セットと役者で再現してくれてサイコー
って感じだと思うので、決してこれがだめということはないんだけど
でもせっかく歌舞伎俳優が歌舞伎座でやってるのに
単なる京極夏彦版2.5次元舞台
になってしまったのはイチ歌舞伎ファンとしてちょっと寂しく思うのでした・・・