【Chapter3】もしJリーグ参入を目指すサッカークラブの新人マネージャーが「リピート通販ビジネス」を学んだら
割引あり
~初期衝動~
11月17日金曜日
腕時計の針はもう少しで18時を指そうとしていた。
剣持紗希が指定されたグラウンドに到着したのは、先週、父・大輔から受け取ったメモに書かれていた時間の少し前だ。
この少し離れた場所に女子大学があり、彼女たちが引き上げると、ナイターの照明は灯されたままだったが、完全に人影がなくなった。
一瞬、乗ってきた車に引き返そうと思ったが、遠くでこちらに会釈するシルエットが見えて、立ち止まった。
近付くにつれて、輪郭や表情がはっきりしてくる。
想像よりも若く、紗希には自分の父親と同じくらいの年齢に見えた。上下紺色のウインドブレーカーだったが、年齢の割に筋肉質なのは分かった。
「大下……さん?」
「はい、そうです。ということは、大輔さんのお嬢さんですね。そんな風にいうと怒られるかな?」
そういうと、大下は屈託なく笑った。
「いえ、本当のことなので」紗希は返した。
こんな何気ないやり取りが、紗希と大下の最初の会話だった。
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