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帰ってきた、美味しすぎない「ホルモン定食」

「その麻婆豆腐、ご飯にかけないんですか?」

友人にふと問われ、暫く会っていない母の顔を思い出した。食事中、厳しく躾けられた幼少期。お陰で茶椀の米はひと粒残さず食べるし、食事中のテレビはやはり悪なのだろう。両手は常に食卓の上にあるべきで、焼き魚は可能な限り骨だけを残す。納豆ご飯は茶椀を汚さずに食べ終えると褒められた。

そんな育てられ方をされたからか、どうにも白米を汚すのが苦手なのだ。

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今日は仕事が立て込んでいたのでランチが遅れた。古い住宅街。鄙びた定食屋の前で何やら視線を感じる。石化を疑うほどに精巧な犬の像が「やってるよ」と入店を促している。

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遅めのランチだからなのか、店内には初老の男性客がひとり。麺を啜るたびに咽せている。静寂の中ラジオの音が天井を這うように響く。

特に食べたいものがない昼は、メニューを見る目も気怠い。左上から右下に目を滑らせて、目に留まった「ホルモン定食」をオーダーする。そしてそそくさと席を立ち、雑多に並べられた漫画棚に向かう。

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当然、並んだ漫画が一巻から揃っているはずがない。今度は本棚の対角線に目を滑らせ、途中のドカベンを手にとり席に戻る。里中がスカイフォークで岩鬼を打ち取ったあたりでホルモン定食が運ばれてきた。

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強めに味付けされたホルモンはご飯が進む。少し甘いので卓上の唐辛子を振りかける。ますますご飯が進む。さらに唐辛子を振りかける。母の顔が一瞬浮かんだが、躊躇することなくホルモンを茶椀に乗せて食べる。ついには、ええいママよと残った汁を掛けてしまった。

あれは躾だったのだろうか。それとも食器を洗う手間を減らす策だったのだろうか。とにかく母よ、今日は久々の反抗期だ。


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lada
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