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音楽のプリミティブな衝動が描かれるサイコーな漫画!『音楽 完全版』(大橋裕之)

渋谷直角のようなサブカルを題材に心の内面に肉薄していくエゲつなさは無く、藤岡拓太郎のようなナンセンスを武器として「ギャグ」に振り切った漫画でもない。

でもユーモアとセンスに溢れているのはまちがいない。登場人物の振る舞いも、ご都合主義な筋書きも、考える間もなく身体が反応して感覚的に笑ってしまう。

いや、コマとコマの「間」はある。セリフのない冒頭十数ページなんかは、そのシンプルで大胆な割りと構図に息を呑みました。

文章における行間ならぬ「コマ間」を想像しながら味わえる漫画ならではの体験。いやあ、とてつもない作品に出会ってしまいました。

「間」を支えるデフォルメと王道

一見、手書きのゆるさに油断するけれど、計算されたキャラクター造形や動きには命が宿っていて「アイツら」と呼びたくなるような、たしかな実在感と手触り感。

それは『桐島、部活やめるってよ』的なデフォルメされた地方感であり、ぼやかされた時代背景。携帯は登場しないし、髪型もノスタルジックを感じさせる。当たり前のようにフォークソング部が存在する。

「いま」っぽくはないのだけど、いつなのかはわからない。逆説的にいえば学ラン、高校、部活、バンド、青春といった記号は、いまでも共通言語ってことだ。

筋書きはシンプルで「不良三人組がバンドに目覚め、町のフェスに出演する」までのお話。そこには仲間も、華のある女性も、立ちはだかる相手の不良も登場する。まさによくある青春ストーリーのエッセンスが散りばめられている。

主人公・研二はあまりに典型的な「不良だけどピュアな心の持ち主」的な性格。そして圧倒的な楽観性。

先入観や思い上がりがないからこそ、三人が無知ながらもまっすぐ楽器を奏でるシーンには、音楽のプリミティブな感動が浮かび上がります。

「ボボボボボボボボボ」こういった擬音的な表現もいちいち光る。

どうやら相当の歳月をかけ、すべて手書きのアニメーションが完成してた。あの音をスクリーンでどうのように表現するのか?

予告をみると絵のタッチはちょっと変わっていて、ワンパンマンに似てる。

って、なんとギリギリまだ上映しているではありませんか!新宿武蔵野館、11月上旬まで予定のようです。ご参考までに!

というわけで以上です!


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