【マンション防災】世界がもし100人の村だったら
『世界がもし100人の村だったら』
これは、20年以上前にベストセラーとなった本のタイトルです。
世界中にいる63億人の人を、100人の村に縮めて考えると、今まで見えていなかった様々なものが見えてくるという内容です。
52人が女性で、48人が男性で――ということから始まり、
75人は食べ物の蓄えがあり雨露をしのぐことができるが、25人はそうではない――と、次第に深く掘り下げていくのです。
私は、この本を読んだとき、今まで他人事だった社会問題が、ぐっと身近になったような気がしました。
そこで、マンションにおける防災というものを、(マンションに限らず、地域の防災と捉えても構わないでしょう)100人の村で考えてみたいと思います。
日本がもし100人の村だったら――
0.2人が警察官で
0.13人が消防士で
0.18人が自衛官です。
これは何を意味するのでしょうか。
もし、マンションの居住者が100人だったとしたら、
有事に駆け付けてくれるはずの警察・消防・自衛隊は1人にも満たないという計算結果なのです。
平時はそんなことはないでしょう。
110番すればパトカーが来ますし、
119番すれば消防車や救急車が来てくれるでしょう。
しかし、地域全体が被災するような大きな災害ともなれば、
110番しても、119番しても、誰一人来てくれないかもしれないのです。
災害に強いと言われるマンションですが、
絶対に被災しないという保証はありませんし、
何かの事件が起きたり、ケガ人が発生したり、火事になるかもしれないのです。
そうなったら、どうしますか?
63億を100人の村に見立てると、互いの距離が縮まることを実感できるように、100人のマンションも一つの運命共同体であることが理解できるのではないでしょうか。
0.2人の警察官や
0.13人の消防士、そして
0.18人が自衛官に頼るのではなく、そこにいる100人で道を開くことを考えた方が現実的だと思います。
自分だけ助かればよいということではなく、
100人で取り組む防災対策を考えるべきではないでしょうか。
例えば、トイレの対策は万全ですか。
過去の地震災害で幾度となく指摘されてきましたが、能登半島地震では、さらにクローズアップされています。
断水により水洗機能は失われますし、揺れにより建物内の排水系統が損傷すると、水が使えても流すわけにはいかなくなります。
そうしたことを踏まえ、近年はマンホールトイレを備えているマンションも多くなりました。
しかし、それが実際にどれほど役に立つのか想像したことがありますか。
内閣府で策定した「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」では、トイレの必要数について次のように基準を示しています。
災害発生当初は、避難者約 50 人当たり 1 基
その後、避難が長期化する場合には、約 20 人当たり 1 基
20 人当たり 1 基とは、難民キャンプなどにおける国際的基準である「スフィア基準」に基づいていますから、決して快適な数値とは言えないでしょう。
もし100人のマンションだったら、5基以上の非常用トイレが必要という計算になります。果たしてマンホールトイレで足りるでしょうか?
さらに、マンホールトイレは下水道に接続されています。液状化などにより下水施設が被害を受ければ、使えなくなりますし、能登半島地震で明らかになったように冬季は、寒くて使用をためらう人が続出します。清掃をどうするかなどの課題もあります。
こうしたことから、個々の住戸で携帯用トイレなどを活用する方が好ましいと思います。
一方、被害がそれほどではない場合、各住戸のトイレを使うか否かの判断を、しなければならない場面もあるでしょう。排水管の状況を確認できればよいのでしょうが、有事の際は点検業者もすぐには来てくれないでしょう。
「試しに水でも流してみようか」といった最終手段に追い込まれるかもしれません。
100人が直面する課題は、やはり、100人で考えるべきだと思います。
今回はトイレ問題を例に挙げましたが、停電、飲料水、要救護者、ゴミ、防犯、火災など課題は多岐にわたります。
皆さんで腹を割って、課題に取り組んだらいかがでしょうか。
簡単に答えは出ないでしょう。一歩ずつ進めていくしかないと思います。
なお、火災対策は、下記の記事で紹介していますので、よろしかったらどうぞ。
また、上記4つの記事をまとめたマガジンもあります。