見出し画像

11月9日は「119番の日」

昭和62年より、11月9日を「119番の日」とするようになりました。
現在では「火事と救急車は119番」と誰もが思い浮かぶように、社会常識の一つになっているとも言えるでしょう。
しかし、普段使わないことから、いざというときに適切な通報ができなかったり、それとは逆に緊急性のない要件に使われたりするなど、様々な課題があることも事実です。
そこで、本記事では「適切な119番の使い方」というものを考えていきたいと思います。


1.火災のときの119番通報

まずは、基本となる火災時における119番通報を考えてみましょう。
固定電話でも携帯電話でも、局番なしで1・1・9とタッチすれば、最寄りの消防指令センターにつながるので、「消防活動に必要な情報」を伝えればよいのです。
簡単そうに思えますが、この「消防活動に必要な情報」が適切に伝えられるか否かで、その後の状況に大きな影響を与えてしまします。
何をどのように伝えればよいのでしょうか。

■伝えるべき情報は

最低限伝えるべきものは2つ。火災が発生したこと、そして発生した場所です。
ただし、消防隊の迅速な活動につなげるためには、これだけでは不十分。負傷者・逃げ遅れの有無など、火災の状況を伝えることが重要になってきます。
伝えるべき情報を整理すると次のようになります。

  1. 火災(火事)であることを伝える

  2. 出火場所を正確に伝える→住所、建物名称(事業所名、マンション名、住宅名など)、目標物、大規模建物の場合は階数・住戸番号など

  3. 現場の状況を詳しく伝える→燃えているもの、負傷者・逃げ遅れの有無、延焼拡大しているのかなど

とにかく冷静になることが第一です。慌てると次のような失敗につながるからです。(嘘のようですが、本当の話です)

  • 住所と電話番号を間違える

  • 自宅ではなく勤務先の住所を言ってしまう(その逆もあり)

  • 早口で言うので、指令員が聴き取れない

  • 「早く、早く」としか言えなくなる

  • 「来れば分かるから」と、必要な情報を伝えない

119と押す前に深呼吸してみましょう。それでも十分間に合います。

■通報の手順

伝えることをあらかじめ整理できれば効率的ですが、応対する指令員が適宜問い掛けてきますので、それに答えるようにすればスムーズに進みます。
次の図はマンションにおける通報の流れです。

マンションにおける通報の流れ

■通報は何度でも

通報する時点で、上記の情報がすべてそろっているとは限りませんから、まずは分かっている範囲内で伝えましょう。
そして、新しい情報を入手したら再び通報してください。
通報は1回だけという固定観念を捨てましょう。
通報された情報は、無線を通じて走行中の消防隊に伝えられます。すると現場に向かいながら活動手順を組み立てられるので、到着以降の活動が格段と速くなるのです。

効果的な通報の例

なお、119番回線は特殊な回線です。通報者側で終話操作をしても、指令センター側で終話しない限り、繋がったままの状態が保持されます。通報者が慌てて終話してしまうことを防ぐためのものです。
回線が保持されている間に、呼び返し(コールバック)があるかもしれません。これは、指令員の操作で、通報者側の電話を鳴らすことができる機能です。状況をさらに確かめたいときなどに使用されますので、ためらわずに応答してください。

2.通報をサポートする様々なシステム

119番通報は、音声による通報が基本となります。
しかし、それだけでは十分な情報を伝達できないこともあります。
そこで、様々なサポートシステムが開発されています。
その代表例をご紹介します。(すべての自治体で導入されているわけではないので、詳しくは各消防機関に確認してください)

■119番映像通報システム

慣れない人が、言葉で状況を伝えるのは限界があります。
そこで、スマートフォンの映像送信機能を活用した「119番映像通報システム」を運用している消防機関があります。(試験運用の場合もあり)
次のような流れで災害現場の映像を送ることができるシステムです。
基本的には、消防指令センター側の判断と要請に基づく運用になりますが、通報者側で必要性を伝え、対応してもらうこともできます。

119番映像通報システムのしくみ

ただし、SMSの送受信や撮影開始までに若干時間を要することや、電波状況によっては映像が送信できないこともありますので、最初からこのシステムに依存するのではなく、必要な場面で適切に使うように心がけたほうがよいでしょう。

■NET119緊急通報システム

携帯電話やスマートフォンによるインターネット接続機能を利用して、肉声によらない119番通報システムを運用している消防機関があります。
聴覚または言語・音声などに機能障害がある方を対象にしており、事前登録制を基本にしていますから、平時のうちに居住地の消防機関に確認しておく必要があります。
通報操作は次の図のように、画面をタップするだけでも必要な情報が送れるようになっています。

NET119緊急通報システムの操作画面(概要)

なお、これと類似したものに、Eメールによる通報システムを運用しているところもありますが、順次、NET119緊急通報システムに切り替えつつあるようです。

3.停電時の注意事項

出火に伴い停電が発生することがあります。
次のような固定電話は、使用ができなくなってしまいます。

  • 光回線を使用している場合…終端装置やルーターが交流電源を使用しているため

  • 電源コードがある電話機(コードレスの場合は親機を見る)…停電用バッテリーを内蔵しているものは使用可

停電対応か否か事前に確認しておくとよいでしょう。使えない場合は携帯電話に切り替えます。

停電時の通報

4.救急車を要請するときの119番通報

■伝えるべき情報は

基本的には火災時と同じですが、傷病者の情報を正確に伝えることが重要になってきます。伝えるべき情報を整理すると次のようになります。

  1. 救急要請であることを伝える

  2. 場所を正確に伝える→住所、建物名称(事業所名、マンション名、住宅名など)、目標物、大規模建物の場合は階数・住戸番号など

  3. 傷病者の状況を詳しく伝える→おおよその年齢、容体(特に意識の有無や呼吸・心拍の状態)、その事態に至った理由(○○で負傷したなど)、持病など

■その場にいる人の行動が重要

119番通報と同時に救急隊は出動準備に移り、緊急走行で現場に向かいますが、早くても数分は要してしまいます。その間、容体が急速に悪化してしまうことも珍しくはありません。
したがって、その場にいる人がどのような措置を講じられるかで、傷病者の生死を決定してしまうこともあるのです。

そこで、119番通報を行った場合、応答した指令員が通報を受けるだけではなく、必要な応急措置をアドバイスすることがあります。
特に心肺停止しているときは、急を要するため、心肺蘇生法の実施を要請されることが多いはずです。
どのようにするかは、指令員が指導するので、それに従えばよいのですが、心肺蘇生法の基礎知識がないとうまくできないかもしれません。

そこで、各地の消防機関が開催している救命講習の受講をお勧めします。
これは心肺蘇生法、AED(自動体外式除細動器)の使い方のほか、容体の観察方法も学べますので、適切な119番通報ができるようになるなど、いざというときに必ず役に立つはずです。家族や仲間と誘い合って受講してみてはいかがでしょうか。

■交通事故の場合の注意点

交通事故の場合は、一般の救急時に加えて次の点に注意してください。

  1. 負傷者が車内に閉じ込められているか否かを伝える→閉じ込められている場合は、救助隊の出動が必要となる。

  2. 燃料漏れや火災が発生している場合はその旨を伝える→消防隊の出動が必要となる。

  3. 周囲の交通状況に注意する→不用意に事故車両に近づいて他の車に轢かれてしまうことがある。

  4. 当事者は気が動転しているので、負傷していることに気付かないこともある。→周囲の冷静な観察が必要

■迷ったときは#7119

火災時よりも多く通報されているのが救急車の要請です。
しかし、手軽に要請出来ることから、緊急性のない場合でも利用されてしまい、本当に緊急性を要するケースになって救急隊がすべて出払っているということも珍しくはありません。
通報前に冷静になり、救急車が必要なのかどうかを考えるのも重要です。だからと言って、ためらったばかりに手遅れになってはいけませんので、もし迷ったら、「#7119」に電話することをお勧めします。

これは、専門家が常駐する電話相談窓口につながり、医師、看護師等からアドバイスを受けられる制度です。
次の図のような地域で実施されていますが、これに代わる自治体独自の相談サービスもありますので、詳しくは各消防機関に確認してください。

#7119を実施している地域(令和6年11月現在 総務省消防庁ホームページより)

参考図書

『マンション火災‼ 命を守る4つのAction』
119番通報も含めた火災対策を詳しく解説しています。主にマンションを対象としていますが、事業所や戸建て住宅でも参考になるでしょう。
電子書籍版は以下のリンクから

ペーパーバック版は以下のリンクから

『一一九の向こうがわ』
消防指令室を舞台としたミステリー小説です。
電子書籍版は以下のリンクから

ペーパーバック版は以下のリンクから


いいなと思ったら応援しよう!

減災研究室LaboFB・永山政広
よろしければサポートお願いいたします!いただいたサポートは災害研究の活動費として使わせていただきます。