昨年の火災状況から冬の火災対策を考える…
火災件数は増加傾向に
総務省消防庁から昨年(2022年)の火災状況の確定値が公表されました。
国内の総出火件数は 36,314 件で、一昨年と比べ1,092件増加しています。
2020年までは減少傾向にあったのですが、一昨年から増加傾向に転じているのが気になります。
出火原因別に分類してみると
たばこが第1位。2016年までは長期にわたって放火がトップだったのですが、ここ数年は、たばこ、たき火、こんろが上位を占めるようになりました。
住宅火災の傾向は
上のグラフは、全種類の火災を集計したものなので、身近で発生する住宅火災(11,411 件)に絞って分類してみましょう。
たき火の順位が下がり、こんろ、たばこ、ストーブなど身近にあるものが上位を占めるようになります。
住宅火災では972人の死者(放火自殺者を除く)が発生していますが、これを原因別に分類してみましょう。
たばことストーブが1、2位になっています。
なぜなのか考えてみましょう。
たばこの注意点
たばこは火力が弱く、すぐに火災になるとは思えない……。そこが油断につながっているのでしょう。
吸い殻を消したつもりでも長時間くすぶり続けることがあります。
次の写真は、たばこの出火実験を行ったときの様子です。
この実験では1時間16分で出火していますが、半日間くすぶり続けた後に出火することもあります。
このように吸い殻が布団に落ちたとしても気づかずに寝入ってしまう可能性があります。
熟睡後に出火して逃げ遅れてしまう――そうしたことが焼死につながっているのではないでしょうか。
ストーブの注意点
たばことは対照的に、ストーブは一度着火すると、熱量が大きいので一気に燃え広がってしまう危険があります。
ストーブ火災で多いのは、洗濯物が落下する事例でしょう。
ストーブの上にハンガーなどで吊るしておくと、ちょっとした拍子に落下してしまいます。今まで大丈夫だったからと油断は禁物です。
ストーブの中でも特に注意していただきたいのが電気ストーブです。
意外に思われるかもしれませんが、実は石油ストーブより出火件数が多いんです。
炎が見えないので大丈夫だと思い込んでしまうからでしょう。
危険なのは、布団の近くで電気ストーブをつけたまま寝てしまうケースです。
たばこと同様、熟睡後に出火して逃げ遅れてしまうかもしれません。
冬は火災が多い?
月別の出火件数をグラフにしてみました。
12月から3月にかけて件数が伸びています。冬に火災が多いのは一目瞭然です。
ではどうして多くなるのでしょうか。
第1の要因は気象条件。乾燥することで物が燃えやすくなるからです。
林野火災(山火事)に関する研究によれば、湿度が25%を下回ると出火率が飛躍的に高くなるようです。
物が燃えやすいということは、容易に着火するだけでなく、燃え広がるのも速くなるので、大きな火災になってしまうことも珍しくありません。
第2の要因は暖房器具の使用。
前述のとおりストーブなどによる火災が増えるからですが、これらは直接の出火原因となるだけでなく、間接的な原因になることもあります。
暖房用の家電は、総じて電気消費量が多い傾向にあります。これらを同時に使用した場合、どうしても電気配線への負担が大きくなります。
もし、コードが傷んでいたり、容量を超えるようなタコ足配線をしたりすると、耐え切れずに出火してしまうこともあります。
冒頭のグラフを思い出してください。住宅火災の出火原因第5位は、「配線器具」でしたね。
特殊な出火事例
冬に注意していただきたい出火原因として「収れん火災」というものがあります。
これはレンズのようなものにより太陽光線が集まる(収れん)ことで、出火につながってしまう特殊な事例です。
レンズの役割をするものは、私たちの身の回りにもたくさんあります。水の入ったペットボトルや瓶、金魚鉢など。
光を通すものばかりでなく、反射させるものも可能性があります。例えば凹面鏡を使った拡大鏡やステンレスボウルなどです。
収れん火災は、冬にだけ発生するものではありません。夏でも条件次第で発生していますが、冬になると太陽高度が低くなり、部屋の奥まで光が差し込むようになります。思わぬところにも光が当たり、出火につながってしまうのではないでしょうか。
今回ご紹介したのは、代表的な出火原因にすぎません。
私たちの周囲には、出火につながるものが数多くあります。
年末の大掃除などの機会をとらえ、身の回りの安全点検をしてみてはいかがでしょうか。
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