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#17 親心、子心。

目の当たりにはしてないが、ここ数ヶ月父が床に臥している。ろくにごはんも食べないし誰とも口を聞こうとしない、と。他の家族から連絡を受けた。
『ケータイを持たすから連絡して欲しい』
あの年代はケータイなんて見ない。もちろんリアクションもしない。
そんなことを思いながらも連絡をした。

電源が入ってない。

まぁいいや、と。そのあとはメールをポチポチ送ることにした。
共通の話題がスポーツの父にプロ野球の順位やストーブリーグの話。オリンピックやW杯もニワカ親子なのでサッカーの話もたくさん送った。毎日noteならぬ毎日Twitterならぬ毎日メール。
合間合間に体調はどうか?病院嫌いでもたまには病院行くべきだ、そんなメールを送る毎日だが毎日空振り。どうせ電源が入ってないんだ。

12月にばあちゃんの一周忌で帰省する。そこでまた話そう。そんな風に考えていたある日、特にネタもないなと送ったひとこと〝腰が痛い〟。1分待たずにケータイが震えた。

『病院行きなさい』

読んでたんかいっ

ちょうど病院にいるときだったのでレントゲン撮ってるだとかMRI待ちとか。Twitterのごとく送ると全部にリアクションが返ってきた。
『湿布もらって帰って寝ろ』と言い放たれる場面もあり院内で少し笑った。年金暮らしじゃないんでね、まだ腰が痛いぐらいじゃ帰って寝られないのよ。

父は口数が少ないひとだ。昔から考えが見えにくいひとではある。
飯食え、病院行け、ちょっとは外出ろ。全部を無視して、たったひとこと〝腰が痛い〟には返信する。もしかして父にも親心が…あったんだろうか?

好きな酒もタバコも絶たれた父に、何を土産に帰ろうか。

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