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ホタカアリアケ、ハッチョモサ

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山の思い出を、とどめたい。
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記事一覧

さむい。

母から折り返しがあったのは30分ほど後だっただろうか。 我々は窓を開け放して、 一生懸命和室…

ぴぽ子
5年前
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そぼふるあめにぬれている

「あ、これ虫の報せっぽい」とか、 「なんだか胸がざわつく」とか、 こう、事前にそういうのが…

ぴぽ子
5年前
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画像は当日のものです。

運転がすごく得意なわけではないけれど、 ドライブは好きだ。 ドリンクバーとポテトだけで フ…

ぴぽ子
6年前
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分岐の晩餐

なんであんなこと言いだしたんだろうなぁ。 と、思う。 母の誕生日祝いで、中華を食べにいった…

ぴぽ子
6年前
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真夜中のスリッパ

数年前の夏のはじめの頃、 私はひどくおなかをこわしていた。 しかも、暑いさなかだというのに…

ぴぽ子
6年前
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土にかえり森になる

コンクリとプラッチックの中に住んでいると、 人は、畳が落ち着くやら、 木目が目に優しいやら…

ぴぽ子
6年前
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あふれるように

なずむ という古い言葉が、 ここで過ごす時間に一番ぴったりくるように感じている。 プラスの意味のある言葉ではないけれど、 生産性のあることはなぁんにもしていないのだから、 良い言葉で表現できないのはしかたない。 本ぐらいは読むけれど、 まぁだいたいは寝ていて、 気が向いたら温泉にどぼんと浸かり、 ごはんも、もーどん兵衛とかでいんじゃない?っつって、 ストーブに誰が油を足すかで無言の喧嘩をし、 冷えてきたら温泉に入り、 廊下が寒いって言って布団にもぐり… ただ泥のように停滞し

しあわせなピース

たったひとつのピースがはまったことで、 パズルがタンタンタンッと完成に近づくことがある。 …

ぴぽ子
6年前
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雪の夜のように静かに

やがて 院に進んだ父は信州を離れ、 「女の園」を訪れる人もゆるやかに、穏やかに、 少なくな…

ぴぽ子
6年前
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思い出のなかに

一旦登ってしまうと下りるのはなかなか大変な「女の園」。 時間がたっぷりあったからか、 備え…

ぴぽ子
6年前
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見晴らしの良い瀟洒な別荘(温泉つき)

父が松本に来る少し前、 穂高の町に北アルプス標高1400メートルの山の上から 温泉を引いてくる…

ぴぽ子
6年前
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つぁらとぅすとら

知り合いの中で、 一番、不器用で無口な人を思い浮かべてみてほしい。 思い浮かべるだけでちょ…

ぴぽ子
6年前
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必ず行くように。

先輩から後輩へ ひそやかに受け継がれていく類のバイトがある。 まかないがついていて、シフト…

ぴぽ子
6年前
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昔話のはじまりは

信州は松本に、 かつて松本高等学校という旧制高校があった。 当時の校風は、斉藤クンという 優秀な卒業生が書き残してくれた手記に詳しいのだけれど、 ちょうどマンボウ氏がこの本の執筆にとりかかっている頃、 失意の大学生が元・松本高校の校舎にいた。 父である。 模試の判定に気を良くして 予備校を半年で辞めた浪人生は、 志望校をスルリとすり抜けて、 入学式はとっくに終わり、すでに授業すら始まっている春の日に 補欠合格の通知を受けて松本にやってきた。 生来無口な人の無口に拍車がかか