【音楽教育#1】日本の音楽教育再考
こんにちは、すけろくです。
今日から、何回かに分けて「音楽教育」について語るシリーズを始めたいと思います。具体的には、日本における音楽教育についての課題と、豊かな音楽文化の形成のためにどのような仕組みが必要かを考察していく、という内容で書いていく予定です。
これまで専門的な音楽教育を受けてこなかった(幼少期にピアノを習い、大学で音楽系のサークルに入っていたくらい)私がなぜこのようなテーマで記事を書くかというと、このシリーズで私が提案する考え方にどれほど賛同する方がいらっしゃるかを知りたいから、というのが大きいです。めちゃくちゃなことを言っているかもしれないし、はたまた案外共感者が多いかもしれない。それをはっきりさせたいのです。
それでは、音楽教育の現状から見ていきましょう。
日本の音楽教育の実際
日本の学校における音楽教育文化について
日本の学校における音楽教育文化について考える際、まず注目すべきは、学校の音楽活動が非常に盛んであることです。特に吹奏楽部は、多くの学校で主要な部活動として存在しており、生徒たちの間で高い人気を誇っています。その背後には、日本の教育文化や吹奏楽を中心とした音楽教育の歴史が深く影響していると考えられます。
しかしながら、こうした文化の中で、一つのジャンルである吹奏楽に重点が置かれることで、音楽の多様性や他のジャンルへの理解が疎かにされている側面も無視できません。確かに、吹奏楽ではクラシックからポップス、ジャズまで、様々なジャンルの曲を取り上げることがあります。しかし、それは表層的な接触にとどまり、各ジャンル特有の奏法やその背景にある歴史、文化に深く触れる機会は少ないのが現状です。
実際、日本のように学校での音楽教育が特定の演奏スタイルに偏重するのは異質と言えます。例えば、アメリカでは9割以上の公立小中学校で多数のミュージシャンが所属するNPO団体によって様々な音楽教育が行われています(参考:アメリカでは、なぜ音楽に民間支援がつくのか?)。フランスでは日本の部活動形式の活動形態とは異なり、多くの専門の音楽院が各地に存在し、様々な音楽体系を学ぶ体制があります(参考:フランスの音楽専門教育)。
また、日本国内には多数のプロミュージシャンが存在しており、彼らが持つ専門的な知識や技術を生徒たちに伝えることは、音楽教育の質をさらに向上させる可能性があると思います。しかし、現在の学校の音楽教育のシステムの中で、プロミュージシャンが教育の場で活躍する機会は限られています。
音楽は、人々の感性や表現力を育む重要な教育の一環です。吹奏楽だけでなく、クラシック、ジャズ、ポップス、伝統音楽など、多岐にわたる音楽ジャンルに触れ、理解し、実践することで、より幅広い音楽の楽しみや、その背後にある歴史や文化の理解が深まることでしょう。
教員の労働環境について
教員の労働環境に目を向けると、彼らが持つ責任や役割は授業だけにとどまりません。特に日本の学校文化の中で、部活動の存在は非常に大きな位置を占めており、多くの教員が顧問としてその運営や生徒の指導に携わっています。そのため、教員の日常業務は授業の準備や実施だけでなく、部活動の指導といった付加的な役割を担うことになります。
実際、部活動は放課後や休日に行われるため、多くの時間と労力を要求されることが一般的です。特に大会前や合宿などでは、教員の負担はさらに増加します。これにより、教員の労働時間の増加やストレスの蓄積、プライベートの時間が削られるといった問題が近年メディアで取り上げられることも多いです。
さらに、指名された部活動が教員の専門分野と異なる場合、そのジャンルや技術に関する知識を習得するための時間や労力も求められます。例えば、音楽教員であっても、吹奏楽部や合唱部の顧問として指名された場合、専門的な指導技術や知識が求められることもあるでしょう。このような背景から、顧問の指導には、専門家によるものと比べて一定の制約が生じる場面も少なくありません。
教育の現場での生徒の成長とともに、教員の労働環境やワークライフバランスの向上も重要な課題となっています。
学校卒業後の音楽経験について
学校卒業後の音楽経験は、日本においては特有の問題を持っています。特に吹奏楽に関して言えば、多くの人が学生時代に部活動として熱心に取り組んでいたものの、成人後の継続的な活動や楽しむ機会が著しく少なくなるケースが多いです。
吹奏楽は日本の学校教育の一部として位置づけられており、多くの中学校や高校では部活動として存在しています。学生たちはコンクールを目指し、一生懸命練習に励む日々を過ごすことが一般的です。しかし、卒業とともにその環境から離れると、同じような集団での音楽活動に参加する場は限られてきます。成人向けの吹奏楽団体やサークルは存在しますが、学校時代と同じ環境での参加は難しくなるのが現状です。
さらに、多くの人々は学校を卒業すると、仕事や家庭、その他のライフイベントが中心となり、音楽活動への参加が難しくなることも影響しています。その結果、学生時代に音楽を熱心に楽しんでいた人々であっても、成人後は音楽から離れてしまうケースが多いのです。
しかし、音楽の本質は音楽体験を通じて人生を豊かにすることであり、生涯を通じて楽しむことができる素晴らしい文化です。それを老若男女問わず多くの人々と共有するための取り組みが必要なのではないでしょうか。
終わりに
「音楽教育シリーズ」第一回目は日本の一般的な学校における音楽教育の実情と課題を考察してきました。日本の音楽教育には課題がありますが、同時に吹奏楽という非常に大きな音楽的土台があるのも確かです。
次回はこのような課題を克服し、より多くの人がより良い音楽経験を得るために必要な施策と仕組みづくりについて考察していきます。
今回の記事に共感いただけた方はスキをいただけると幸いです。また、今回は課題として挙げた吹奏楽も、実際には多くの素晴らしい教育的価値や人生経験を与えてくれるものだと思いますので、「こういうところが素晴らしい!」といったご意見も書いていって頂けると嬉しいです。
ではまた。