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今年の課題図書(小学校)全部読む

初めてnoteを書きます!九重と申します。
本に関わる仕事について四年目です。
よろしくお願いします。

みなさん、読書感想文をご存知ですか?
学校の授業や宿題で書いたことがあるんじゃないでしょうか。
なんとなくですが、「自由読書」の部門で書いている人が多いイメージです。
でも、学校によっては、課題図書で書くように指定されたり、注文票が配られて、そこから選んで買って書くというところもあったかもしれませんね。

と、ここまで書きながら、「そもそも『自由読書』とか『課題図書』って何?」とか、「読書感想文を一度も書いたことがない」という方もいるかしらと思い至りました。(夏休みの宿題は、作文系から1つ、ポスター系から1つ、という選択式のところもあったんじゃないかなと…)

ですので、まずは、読書感想文について少し紹介をして、それから、表題のとおり、今年の課題図書についての感想を書いていきたいと思います。
ご存じの方は、感想まで飛ばしてくださって結構です。

読書感想文について

この記事においては、「『青少年読書感想文全国コンクール』に応募する、本を読んだ感想を文章で表現した作文作品(または、その宿題)」のことを「読書感想文」と呼ぶことにします。
別の読書感想文や読書感想画のコンクールもありますが、夏休みに出される宿題の読書感想文は、この『青少年読書感想文コンクール』に応募することが多いからです。
(ちなみに、直接全国ではなく、市区町村コンクール→県大会→全国で、部活の大会と似ています。)

読書感想文を書く目的については、公式HPをご覧になると良いかと思います。
読書感想文全国コンクール公式サイト

課題読書・自由読書、課題図書について

公式サイトの「感想文Q&A」によると、『課題読書』は、主催者が指定した本を読んで書くとのことです。
課題読書のために選ばれた本のことを『課題図書』と呼びます。
さっくりまとめると、課題図書は
 ・本の専門家が選んだ
 ・新しく出版された本から選んだ(たいてい、昨年度出版された本です)
 ・年齢に合わせ、低・中・高学年、中学、高校で各3~4冊ずつ
 ・多くの感動や新たな知識を得られる
 ・フィクションもノンフィクションも海外作品も絵本も含まれる
という感じですね!

対して『自由読書』は、自分で読みたい本を自由に選んで感想文を書く、というものです。
選ぶ本については、
 ・フィクションでもノンフィクションでも絵本でも可
 ・教科書や雑誌など、一部の本は不可(詳しくは応募要項の「対象図書」をご確認ください)
という感じです。
私自身も、小学生の時は自由読書で書いていました。

課題図書の感想について…

ざっとですが読書感想文と課題読書・自由読書について書きました。
ここからは、今年度(2022年)第68回の課題図書、小学校の各部、計12冊を読んでの感想になります。
(中高はすみません、仕事で担当じゃなかったので読めていないのです…)

仕事で書いている記事とかではないので、完全に個人の感想(+少しのあらすじ)です。
でも、大人の方にも読んでみてほしいな!と思った作品がたくさんあったので、気になったものがあればぜひ。

小学校低学年の部

『つくしちゃんとおねえちゃん』
いとうみく 作 丹地陽子 絵 福音館書店

絵本ではなく児童書ですね。小4のおねえちゃんと、小2の妹つくしちゃんの日常が短編で5つ入っています。ほっこりする感じで、私の好きなタイプでした。
お姉ちゃんは、頭もよくて結構強気でなんでもできる。
妹つくしちゃんは、マイペースでちょっと不器用(2年生だから言うほどでもないような、と思うけれど)。
つくしちゃんは「おねえちゃんはかっこよくて大好き!」な気持ちも、「ときどき意地悪なことをいうからヤダ…」な気持ちも両方持っていて、実際そうよね、と思いながら読み進めました。
とはいえ、おねえちゃんも完全無欠ではなくて、少し足が悪くて右足を引きずり、あまり走れない。裁縫など細かいことも少し苦手。
それでも妹が困っていたら助けるような子で、つくしちゃんに励まされている面もあって…。
とにかくあたたかくて、ちょっとじんわりくる本でした。

『ばあばにえがおをとどけてあげる』
コーリン・アーヴェリス ぶん イザベル・フォラス え まつかわまゆみ やく 評論社
主人公の女の子・ファーンには、大好きなおばあちゃんがいますが、最近、おばあちゃんが全然笑わなくなってしまった…。また笑顔になってほしい!と、「よろこび」を探しに公園におでかけしますが…という内容です。
なんとなく、おばあちゃんは認知症や心の病気なのかな…と思いつつ読み進めました(作中で言及はされていませんが)。
とにかく絵がきれいです!特に冒頭の、元気なおばあちゃんと笑わなくなった後のおばあちゃんの対比がすごいです。
ファーンが見つける「よろこび」もなんだかほっとする素敵なものなんですよ…。この絵本も好きです。

『すうがくでせかいをみるの』
ミゲル・タンコ 作 福本友美子 訳 ほるぷ出版
家族みんな、好きなことがある。
お父さんは絵を描くこと、お母さんは虫、お兄ちゃんは楽器。
そして主人公は「すうがく」が大好き!
好きなことがあるっていいな…という本。
そして、好きなことがあると世界の見え方が変わるよねというのをわかりやすく表現してくれています。
でも、小学生は「さんすう」だから、「すうがく」を説明するの難しそうだなあ。

『おすしやさんにいらっしゃい!生きものが食べものになるまで』
おかだだいすけ 文 遠藤宏 写真 岩崎書店
魚を釣り上げてから、さばいてお寿司にするまでを見せる写真絵本です。
これはすごいです。面白い。
文を書いたのが、写真にいる寿司職人のおかださん。
キンメダイは角度を変えたら目が光るのが由来だよとか、三枚おろしとか、
アナゴは目打ちで固定してからさばくよとか、
イカは体と頭の位置が面白いとか、墨でお絵描きしたりとか。
部位の説明からさばく手順から結構詳しく書いてあって…。
普通に読むだけで面白い。
あと、カバー下の奥付のとこの写真、多分、絵本の中で使わなかった部位を料理にした写真で、無駄にしてないぞというのをサラッとこっそり載せてるの好きですね。

小学校中学年の部

『みんなのためいき図鑑』
村上しいこ 作 中田いくみ 絵 童心社
授業のグループ活動で、各班オリジナル図鑑を作ることになり、主人公のたのちんの班は「ためいき図鑑」を作ることに。
同じ班には保健室登校の女子・加世堂さんがいて、たのちんはその子も活動に関われるようにって声をかけてあげてていいな。まあそのせいでもめごとも起こるんですが…。
ため息は悪いことばかりとは限らないねと思いました。
巻末にはたのちんの班が作ったためいき図鑑の一部が載っていて、作りこみがすごいです。面白かった。

『チョコレートタッチ』
パトリック・スキーン・キャトリング 作 佐藤淑子 訳 伊津野果地 絵 文研出版

子どもの反応が一番いい気がする本。
お菓子やチョコが大好きで、食事もそこそこにおやつ食べちゃう少年・ジョン。
ある日、拾ったコインでチョコを買って食べたら、口に入れたものがチョコになる病気?になってしまい…。
ジョンの名前は「ジョン・ミダス」。まあ、ミダスタッチがモチーフですよね。
口に入れるものっていうのが、ニンジンとかの食べ物だけじゃなくて、水とかジュースもだめで水分補給できず、コップとか鉛筆とか手袋もチョコになっちゃって、もう大事です。
最初はうれしかったジョンも、じわじわ怖い、心配…になっていくのが伝わってくる本でした。
最後はハッピーエンドです。一応。

『111本の木』
リナ・シン 文 マリアンヌ・フェラー 絵 こだまともこ 訳 光村教育図書
ノンフィクションの絵本。
女の子が生まれたら、111本の木を植えてお祝いする村の話。というか、その村の村長になった男性・スンダルさんのお話。
大理石工場のせいで荒れ果てていく自然。
女というだけで、学ぶ機会もなく早く結婚させられる。
それを変えたい!と立ち上がるスンダルさん、村長にまでなってすごすぎる。
巻末には実際の村の写真や説明が載っています。
絵もきれいでいいんだよな…。

『この世界からサイがいなくなってしまう アフリカでサイを守る人たち』
味田村太郎 文 学研プラス
サイ、絶滅の危機だったんですね……。
ツノを狙ってやってくるハンターと戦う人々に取材をした本です。
直接ハンターと対峙するレンジャー、傷ついたサイを治療する獣医、親を亡くした子どものサイを保護する施設、種として絶滅しないよう遺伝子や人工出産を模索する研究者など。
たくさんの人が守ろうと奮闘していてすごいですね。
サイの種類や生態も少し載ってて、知識になりました。

小学校高学年の部

『りんごの木を植えて』
大谷美和子 作 白石ゆか 絵 ポプラ社
小5のみずほは二世帯住宅に住んでいて、おじいちゃんが大好き。
ある日、おじいちゃんの病気がわかったが、おじいちゃんは、「積極的な治療」をしないと言う。
この内容、小学生いけるか?と思ったんですが、高学年ならわりと…?
病院でたくさんチューブに繋がれて死にたくないっていうのはわかる気がする。
副反応とかもあるもんな。仲のいい家族がいるなら家族と過ごしたいよな~…。
ちなみにモノとしてのりんごは出て来なくて、ルターの「たとえあした、世界が滅びようとも、わたしは今日、りんごの木を植える」という言葉から。
これが話に深みを持たせてくれている…気がする。

『風の神送れよ』
熊谷千世子 作 くまおり純 絵 小峰書店
地域の年中行事・コロナ・青春、って感じの本でした。
実際に長野県の南の方で行われている「コト八日(ようか)行事」がモデルのフィクション。
疫病神(コトの神・風の神と呼ばれる)を祓い、地区境まで送る。主人公の地区では、それを小3~中1までの子どもだけでやらないといけない。
主人公は6年生で、コトの神はあまり信じていないし、めんどくさがりな性格。
地区の人や仲間と触れ合うことで、責任感が生まれて、行事に向き合うようになる、成長物語かな。
地域の行事がモデルだとやっぱり面白いですね。
作中もコロナ禍なので、コロナで店を閉じて引っ越してきた家族がいたりとか。
見守る大人たちも悪い人はいないし、後半はもう純粋に「がんばれ!」って思いながら読みました。一番好きかも。

『ぼくの弱虫をなおすには』
K・L・ゴーイング 作 久保陽子 訳 早川世詩男 絵 徳間書店
こっちの大人は、一部がマジでひどい。
1976年のアメリカ・ジョージア州が舞台。
ちょっと政治家の名前や学校のシステムの違いなど出てきますが、すぐ横に脚注がついているので、わりと気にせず読めます。
5年生になるといじめっ子と同じ校舎になるから怖いという主人公のゲイブリエル。
親友の黒人の少女フリータは、強くなって一緒に5年生になるために、怖いものリストを作って克服していこう!という夏休み青春ものです。
いわゆる人種差別や、白人至上主義の団体の名前も出てきたりして、心苦しくなる場面もあります…大人がそんなことフリータに言うんだもの…。
しかし、読後は二人とも前向きなおわりで、よかったです。

『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』
井出留美 著 あかね書房
食品ロス問題に悩むパン職人の田村さん。
フランスなどの国々を旅して、廃棄ゼロの方法を見つける…!というノンフィクションです。
減らそう、捨てるものは有効活用しよう、だけじゃなくて、「そもそも必要なものを必要なだけつくろう」という視点がいいですね。
今も予約や通販中心みたいです。
田村さんは食品ロスの他、「働き方」にも注目していて面白かったですね。
心に余裕をもって働きたいよな…。

まとめ

ということで、長々と12冊分の感想でした。
結構テーマがバラバラですが、どれも面白かったです。
一番は『風の神送れよ』かな。

夏休み期間は図書館で借りるのは難しいかもしれません。
本屋さんは特設コーナーや平置きしてるところもあります。
kindleで読めるものもあるようなのでぜひ!
何か一つでも面白そうかな?と思ってもらえたら嬉しいです。


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