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「プロやから謝る」

 保護者とのトラブルはほとんどなく現役時代を過ごしました。
 それは、この言葉のおかげです。

 私が20代の頃、同学年のベテランの先生が保護者からの苦情で校長室に呼ばれました。
 その子どもはいつも暴れていましたが、その先生は誠心誠意その子に寄り添っていらっしゃいました。

 ところが校長室から戻って来た先生は「謝ってきた」と言われたのです。
 経験のない私は納得できずに、「こんなにその子に寄り添っている先生がどうして謝るのか」と聞いたのです。
 すると、「自分のしていることが間違っているから謝ったのではない。保護者に心配をかけ信頼してもらえていないことを謝った。私はプロやから」と言われたのです。
 そのときの衝撃は現場を離れた今もくっきりと自分のなかに残っています。この先生の行動が「プロの覚悟」なんだと教えられたのです。

 今から思うと大昔のことなのに、昨日のことのように自分のなかで生きているのです。
 校長時代もさまざまな保護者とつながれたのは、この言葉のおかげです。

「お母ちゃん、ごめんな。心配かけたね」が口癖でした。
 自分が納得して出す言葉は、相手も納得して受け止めてくれます。
 今思うと、この言葉が対話のゼロスタートなのですね。

次回は10月1日(火)更新予定です。

初出:『教職研修』2020年11月号、10頁。一部文面を変更のうえ掲載しています。

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